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アングル:「テスラ生産方式」は革命的か、専門家の間で議論

発行済 2023-05-19 16:51
更新済 2023-05-19 16:54
© Reuters.  テスラが3月に公開した新しい生産方式「アンボックストプロセス」を巡り、自動車業界の専門家の間で議論が起きている。写真は同社のロゴ。ニューヨークで2016年4月撮影(20

[15日 ロイター] - 米電気自動車(EV)大手テスラが3月に公開した新しい生産方式「アンボックストプロセス」を巡り、自動車業界の専門家の間で議論が起きている。意見が分かれるのは、果たして既存のシステムをひっくり返すほど急進的なものなのか、あるいは従来方式の修正・派生型なのか、それとも、その両方なのか。

「革命的」と称賛する専門家もいれば、「モジュラー組み立て」など既存の技術に依拠していて生産コストを大幅に引き下げられるかどうかは分からないと指摘する。

テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)の考えでは、より価格が手ごろで会社にとっても利益が見込めるEVを量産化するためには、これまでの生産方式を劇的に見直す必要がある。

投資家が首を長くして待っているのも、テスラが「究極の目標」とみなしてきた3万ドルを切るEVを発表する日だ。現時点では同社の最安モデルでも4万ドルを超える。

車両を前部と後部など複数の大きなブロックに分割して組み立て、内装や塗装も行った後で接合するというアンボックストプロセスは、テスラがそうした野心的目標を達成する目的で開発された。

テスラ幹部は3月1日の投資家向け説明会でアンボックストプロセスを披露した際に、これで同社の次世代EVは「著しく(構造が)単純化され、購入しやすい価格になる」と説明。生産コストは半減され、工場の床面積も4割減らすことが可能との見方を示した。

アンボックストプロセスは、テスラが50億ドルを投じてメキシコに建設する新工場で2024年終盤に稼働する予定となっており、その際に全面的に真価が問われる。同工場は3万ドルを切るEVを生産する計画だ。

幾つかの疑問も浮上してくる。アンボックストプロセスが自動車業界全体にどのような影響を及ぼすのか、またこれによってトヨタ自動車が長年培ってきた「リーン生産方式」が無用になってしまうのか、そしてこれまで新技術の導入や特定の商品の生産で何度も目標が未達だったテスラとマスク氏が、本当に予定通りアンボックストプロセスを導入できるのか。

コンサルティング会社ベリリスのマネジングディレクター、マーチン・フレンチ氏は、アンボックストプロセスは数十年間業界の主流となってきたリーン生産方式に取って代わるかもしれないとみている。「テスラ(の説明)でトヨタの生産システムが空中に放り投げられ、マシンガンを浴びせられたように感じた」と話す。

ドイツのドルトムントにある大学で研究するヤン・フィリップ・ブッヒュラー氏は、アンボックストプロセスを「革命的」と高く評価。「モジュラー生産という枠よりもずっと幅が広く、これまで標準化されていた数々の工程を省略し、新しい働き方を創出する上に、(作業の)スピードを上げて複雑さを減らす」と語る。

<硬直性>

一部専門家の見立てでは、アンボックストプロセスを導入することにより、自動車工場でおなじみだった、プレス加工や溶接、塗装を施した未完成の車体をシートやエンジンなどの部品取り付け用の長い組み立てラインに送り込むという作業が縮小されたり、なくなってしまったりする可能性がある。

アンボックストプロセスが全て予定通り稼働すれば、自動車生産の教科書や慣行が書き換えられてもおかしくない。

ただしテスラにはこれまで、野心的な目標の実現という面で疑問符が付く事例が見られる。サイバートラックは納車開始が延び延びになってきたし、ソフトウエア「フルセルフドライビング(FSD)」も依然として完全な自動運転機能には到達していない。

ジェームズ・ウォーマック氏や大庭英嗣氏などのリーン生産方式の専門家の視点では、この方式とアンボックストプロセスの間には重大な違いがある。

マサチューセッツ工科大(MIT)教授で、トヨタのリーン生産方式の哲学や手法をまとめた著作の共同執筆者であるウォーマック氏は、根幹部分としてテスラの方式は「組み立てプロセスの1つ」だが、トヨタはもっと広範かつ包括的な「生産管理システム」を開発し、それはメーカーが組み立てプロセスや関連する作業をより効率的に行うのを後押ししてくれると説明した。

かつてトヨタの生産システム支援センターで勤務した経験を持つ大庭氏は、アンボックストプロセスに備わる「硬直性」を大きなリスクに挙げる。

大庭氏によると、この大きく、さまざまな部品を組み合わせたブロック生産が完全に同期化され、最終的に「ジャストインタイム」で接合されないと、アンボックストプロセスはうまく機能しない。

さらにテスラは、大きさや形が異なるさまざまなEVを、このアンボックストプロセスを通じて同じラインで「混流生産」できるのかという問題も出てくる。

大庭氏は「私の推測ではほぼ不可能だ」と指摘。車体を大きなブロックに切り分けるやり方は非常に急進的で、ブロックの寸法が違う車両を同じラインで作れるのかどうか、生産上の柔軟性が乏しいとの見方を示した。テスラの車種が今後多様化・複雑化するのが確実である以上、同社の全体にとっての効率性が足を引っ張られる恐れがあると警告した。

(白水徳彦記者、Paul Lienert記者、Victoria Waldersee記者)

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