[東京 31日 ロイター] - 指数と連動しない上場投資信託(ETF)の「アクティブETF」が9月7日に東京市場に上場する。運用会社がテーマなどに応じて選定した個別株を組み合わせて運用し、投資リターンの拡大を目指す。海外ではすでに定着しているが、日本で普及するには魅力的な商品の開発やコストの削減努力などが欠かせない。足元では、PBR(株価純資産倍率)1倍割れに着目した商品の上場も予定されている。
ETFは投資信託に比べ、流動性の高さや投資家の負担するコストが低いなどのメリットがある。これまで東証では指標に連動するインデックス型のETFしか認めていなかったが、品ぞろえを拡充することで、市場活性化につなげたい考えだ。 第1弾として上場するのは、シンプレクス・アセット・マネジメント、野村アセットマネジメント、三菱UFJ国際投信の3社による計6本。
このうち、シンプレクスAMは「PBR1倍割れ解消推進ETF」など3本を扱う。同ETFは東証による企業改革の流れを取り込もうと、平均してPBR(株価純資産倍率)0.7倍の株を約500銘柄組み入れている。 東証は今年に入って、PBR1倍割れの企業に株価や資本効率を意識した経営を要請。こうした企業改革を期待した海外勢による買いが、春先からの日本株上昇を主導した側面がある。4月第1週から外国人投資家は約7.5兆円を買い越している。世界の株式市場全体の上昇率が年初から13%なのに対し、日経平均株価は24%上昇している。 PBRの1倍割れは、株価が解散価値に満たないことを意味する。シンプレクスAMによると、帳簿価額を下回って取引されている銘柄数は、米S&P500では17社なのに対し、TOPIX500採用銘柄では189社が該当する。同社の水嶋浩雅社長は「企業が大きく変わる可能性がある」と話している。
このほか、野村AMは、NF・日本成長株アクティブETFと、NF・日本高配当株アクティブETFの2本を立ち上げる。「グロースとバリューという相反する2戦略を投入することで、市場環境に応じた使い分けも想定」(同社)しているという。
三菱UFJ国際投信は、予想配当利回りの上位銘柄を選定するMAXIS高配当日本株アクティブ上場投信を上場する。
ニッセイ基礎研究所の井出真吾チーフ株式ストラテジストは「アクティブETFは、通常のアクティブ投資信託より信託報酬が一般的に安く、アクティブ投信を手掛けてきた投資家を中心に一定のニーズはありそうだ」と話す。
本来、アクティブファンドは短期で売買するものではないが、相場急変時などは取引時間中に売買できるメリットもあるとみている。
<手数料やファンドの特色が焦点に>
世界のETFの総資産額に占めるアクティブETFの比率は5.4%で2010年の0.4%から高まっている。アクティブETFの総資産額は2022年に約60兆円超、銘柄数は1877銘柄だった。 主要ETF市場では東証のみがアクティブETFの上場を認めていなかった。東証に上場するETFの残高は約60兆円で、うち50兆円を日銀が保有している。アクティブETFの導入を通じて、日銀以外の投資家の持ち分の拡大を促したい考えだ。
ニッセイ基礎研の井出氏は、普及に向けては、ファンドのパフォーマンスが指数を上回ることや、信託報酬の引き下げがポイントになるといい、「手数料の引き下げ競争や特色のあるファンドの開発競争が加速しそうだ」と話している。
(平田紀之、藤田淳子 編集:橋本浩)