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アングル:日本企業に冷や水、USスチール買収反対 トランプ氏も

発行済 2024-02-05 11:47
更新済 2024-02-05 11:54
© Reuters.  2月5日、米国の民主・共和両党、全米鉄鋼労組(USW)から反発の声が上がる日本製鉄のUSスチール買収は、11月の大統領選に出馬するトランプ前大統領が「阻止」すると明言し

Anton Bridge John Geddie Daniel Leussink

[東京 5日 ロイター] - 米国の民主・共和両党、全米鉄鋼労組(USW)から反発の声が上がる日本製鉄のUSスチール買収は、11月の大統領選に出馬するトランプ前大統領が「阻止」すると明言したことで政治的な壁が一段と高まった。

頓挫すれば米国への投資を強化しつつあった日本企業の動きに水を差す可能性があると、専門家らは指摘する。「中国リスク」を避けて同盟国・友好国の間で経済関係を強めようとする「フレンドショアリング」の限界を露呈したとの見方も出ている。

「米国に投資する日本企業の一部は警告と受け止めるかもしれない」とトランプ政権時代に駐米日本大使だった佐々江賢一郎氏は言う。影響は機微な産業に限られるかもしれないが、同盟国間で経済協力を深化させようとする中でも核心的利益に関わるものは各国が独自に決めるという現実を如実に表わしていると、日本国際問題研究所の理事長を現在務める佐々江氏は指摘する。

米国が自国に投資を呼び込む姿勢を強める中、日本企業による対米直接投資はこのところ増加傾向にあった。財務省の統計によると、日本の対米直接投資は2022年に27兆円(実行ベース)まで増加した。一方、中国向けは1兆4000億円に減少した。直近では1月に積水ハウスが米国の住宅メーカーを約7000億円で買収することを発表した。

少子高齢化で国内では成長が望めず、中国市場の低迷にも直面する日本企業にとっては自然な流れと言える。しかし、USスチールを巡って起きている事象は、三菱地所がマンハッタンのロックフェラーセンターを買収して批判を浴びた1980年代の記憶を日本企業に蘇らせる。

「合意に至らなかった場合は投資関係が損なわれ、フレンドショアリング構想が後退する可能性がある」とムーディーズ・アナリティックス(東京)のシニアエコノミスト、ステファン・アングリック氏は言う。「長期的には企業や消費者にとってコスト増となる」。

<成立は政治的に困難か>

USスチールという米国の歴史ある企業の買収は昨年末、大統領選に向けて米国が政治的に敏感になる中で合意が発表された。エンパイアステートビルのような米国を象徴するランドマークに鋼材を供給し、第2次世界大戦で連合軍の勝利に貢献した同社が外国企業に買収されることに、ワシントンでは懸念が広がった。

民主・共和問わず議員からは日本企業による買収に反発する声が上がり、大事な票田であるUSWは反対を表明、バイデン政権は安全保障への影響などを調査する政府の外国投資委員会が慎重に審査する方針を示した。米国第一主義を掲げ、共和党候補の指名を獲得する勢いのトランプ氏は1月31日、自身が大統領になれば「即座に阻止する」と述べた。

民主党のストラテジストで、USWの元政治部長チャック・ロシャ氏は、バイデン政権が今回の買収を成立させるのは政治的に難しいだろうと話す。「外国に依存してはいけない基幹産業がある。USスチールの社名は『ABCスチール』でもなければ『ユア・ママズ・スチール』でもない。USスチールだ」とロシャ氏は言う。

岸田文雄首相は4月に訪米し、トランプ氏と戦うことが濃厚なバイデン大統領と会談する。「経産、官邸とも高い関心を持ち日鉄によるUSスチール買収の動向を注視している」と、鉄鋼業界を含め日本の産業政策を所管する経産省の幹部は言う。「(岸田首相が)大統領から何か言われる可能性はある」と同幹部は話す。

日本製鉄はトランプ氏の発言が飛び出した翌2月1日、ロイターの取材に「米国の鉄鋼業界とその顧客、従業員、地域社会、そして米国にとって大きな利益をもたらすと考えている」と回答。「引き続き、政府当局を含む関係するステークホルダーと対話を進め、理解を求めていく」とした。

同日決算を発表したUSスチールは「株主だけでなく従業員や顧客にとっても正しい取引であり、革新的な鉄鋼2社の合併により、業界の競争環境が強化される」とした上で、24年第2・四半期か第3・四半期に取引が完了するとの見通しを示した。

<警鐘>

アレン・アンド・オーヴェリー外国法共同事業法律事務所(東京)のパートナーで、企業の買収・合併のアドバイザーを務めるニック・ウォール氏は今回の動きについて、特に労働組合が力を持つ業界に投資する場合はより綿密に準備する必要があることを示していると指摘する。

「伝えるメッセージをPRの専門家に洗練してもらうなど、買収に関係してくるステークホルダーへの対応により多くの時間を割く必要性が出てくる」と同氏は話す。

日本の大手企業に勤務する元政府高官は、米国で行う商取引が政治的にどのような意味合いがあるのか、より注意深く精査しなくてはならないことが明らかになったとみる。

「グローバル化を進める日本企業、とりわけ米企業への投資を今後考える日本企業は関心を払うべきだろう」と同氏は語る。「われわれは完全に同盟国だと考えていた」。

(取材協力:David Dolan、竹本能文、小宮貫太郎、久保信博 編集:William Mallard、橋本浩)

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