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西武HD、「赤プリ」跡の旗艦ビル売却を検討 3000億円超=関係者

発行済 2024-03-22 15:13
更新済 2024-03-22 16:00
© Reuters.

Makiko Yamazaki Miho Uranaka

[東京 22日 ロイター] - 西武ホールディングスが、赤坂プリンスホテル跡地に建設した旗艦ビル「東京ガーデンテラス紀尾井町」(東京・千代田)の売却を検討していることが分かった。事情を知る関係者4人が明らかにした。売却額は3000億円を超えるとみられ、品川などで進める再開発に資金を充てる。実現すれば国内の不動産取引で過去最大級となる可能性がある。

西武HDは10社程度に売却を打診した。シンガポール政府系ファンドのGICや米投資会社ブラックストーンなどのファンド、大手不動産が含まれる。2人の関係者は、少なくとも3000億円の取引になりそうだと語った。交渉はまだ初期段階で、売却時期は分かっていない。売却しない可能性もある。

西武HDはロイターの取材に対し、昨年5月に公表した中期経営計画の進ちょく状況の中で、保有不動産を売却して得た資金を新規開発などに再投資する「不動産回転型ビジネス」への参画を表明していると説明。「現時点で何も決まっていないが、(対象資産の)検討を進めている」とした。同社は5月に次期中計を発表する予定。GICとブラックストーンはコメントを控えた。

東京ガーデンテラス紀尾井町は、1980年代のバブル景気時代に「赤プリ」と呼ばれた赤坂プリンスホテルを、総事業費1040億円を投じて建て替え、2016年に完成した大型複合商業施設。地上36階建ての高層ビルにはオフィスのほか、最上部に傘下のプリンスホテルの最高級ブランド「ザ・プリンスギャラリー東京紀尾井町」が入居している。

実現すれば22年の大型複合ビル「大手町プレイス」(東京・千代田)の政府保有分売却額4364億円に並び、国内不動産取引で最大級となる可能性がある。日銀がマイナス金利政策を解除し、17年ぶりに利上げをしたことで、活況だった日本の不動産市場に下押し圧力がかかることも予想されるが、米不動産サービス大手CBREの羽仁千夏シニアディレクターは、「地合いが大きく変化することは想定していない」と話す。

関係者の1人によると、西武HDは売却で調達した資金を品川・高輪エリアなどで進める再開発事業に投じる。同社は「アセットライト」(資産圧縮)戦略を掲げており、東京証券取引所や株主が資本を有効活用するよう企業に要請を強める中、資産の保有を抑えて資本効率を向上し、企業価値を高めたい考え。

西武HDは昨年5月に「不動産回転型ビジネス」への参入を発表し、再開発が本格化する前に今後の不動産売却計画を開示して譲渡を進める方針を示した。23年度までの現中計では、自己資本利益率(ROE)を21年度の3.5%から中長期に10%以上へ引き上げることを目指している。

新型コロナウイルス渦で鉄道やホテル事業が打撃を受けた西武HDは22年、GICにホテルなど31施設を約1500億円で売却することを決めた。23年に26施設の売却を完了し、売却益約540億円を計上した。

CBREの羽仁シニアディレクターは、金利が緩やかに上昇しても市場規模や流動性の高さ、金融機関の融資姿勢といった観点から「日本が投資先として魅力的であるという事実は変わらない」と語る。特に日本では、事業会社が保有する不動産を活用して効率化し、企業価値を向上させる動きが活発化する兆しがみられると指摘する。

最近では2月に三菱重工業が横浜市の工場用地を売却し、経営資源を有効活用するなどと発表。昨年11月にはレゾナック・ホールディングスが資産スリム化の一環として、旧昭和電工本社(東京・港)の土地や建物などを売却すると発表した。

(山崎牧子、浦中美穂、取材協力:藤田淳子 編集:久保信博)

*写真を追加しました。

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