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SI Research Memo(2):「時間を与えるソフトウェアを創り続ける」独立系ソフトウェア開発会社

発行済 2024-11-15 11:02
更新済 2024-11-15 11:15
© Reuters.
ORCL
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*11:02JST SI Research Memo(2):「時間を与えるソフトウェアを創り続ける」独立系ソフトウェア開発会社 ■システムインテグレータ (TYO:3826)の事業概要

同社は1995年設立の独立系ソフトウェア開発会社で、自社開発したソフトウェアのパッケージ販売及び保守サービスのほか、クラウドサービス(SaaS)を提供している。
新製品に関しては基本的にSaaSモデルでの事業展開を志向している。
現在の主力製品には、データベース開発支援ツール「SI Object Browser」や統合型プロジェクト管理ツール「OBPM Neo」のほかWeb-ERPパッケージ「GRANDIT」などがある。
なお、ECサイト構築パッケージ「SI Web Shopping」を主力とするE-Commerce事業については、事業分割によって新設した(株)DGコマースに承継させたうえで、同子会社株式の60.0%を2024年1月に(株)DGフィナンシャルテクノロジー※に譲渡した。
これにより、DGコマースは同社の持分法適用関連会社となっている。
また、2022年にベトナムにオフショア開発子会社として設立したKEYSTONE SOLUTIONS COMPANY LIMITED(出資比率83%)を連結対象子会社とし、2025年2月期より連結決算を開始した。


※ DGフィナンシャルテクノロジーはデジタルガレージ (TYO:4819)の子会社で、決済情報処理サービスや収納代行サービス、送金サービス事業などを展開している。


事業セグメントはObject Browser事業、ERP事業、AI事業の3つの事業と、新規事業が含まれるその他として区分開示している。
2025年2月期第2四半期累計の構成比を見ると、ERP事業が売上高の80.0%、セグメント利益の69.9%を占める主力事業となっており、次いで、Object Browser事業が売上高で17.7%、セグメント利益で35.6%を占める。
AI事業についてはまだ先行投資段階であり、売上規模も小さく収益化前の段階にある。


1. Object Browser事業
Object Browser事業では、エンジニアの生産性向上に寄与するデータベース開発支援ツール「SI Object Browser」やデータベース設計支援ツール「SI Object Browser ER」(以下、「Object Browser」シリーズ)のほか、統合型プロジェクト管理ツール「OBPM Neo」を開発、ライセンス販売またはSaaSとして提供している。


売上構成比は「Object Browser」シリーズが約3割、「OBPM Neo」が約7割である。
「Object Browser」シリーズは1997年の発売以来、約2万社、50万ライセンスの導入実績があり、Oracle製品を筆頭に主要データベースのほぼすべてに対応していることからデファクトスタンダードとなっている。
高いブランド力を持つため販売費用もほとんどかからず、売上総利益率は80%超と高収益製品となっている。
競合製品として無料ソフトが出ているが、機能面での差があるため直接的な影響は受けていない。
従来はパッケージ販売(ライセンス販売+保守サービス)のみとなったが、2021年2月よりSaaS型での販売※も開始している。
売上高の30%超は保守サポートなどのストック収入で占められており、売上高も比較的安定して推移している。


※ 契約期間は1年、2年、3年の年間契約(保守料含む)。
バージョンアップは無償。
for Oracleのみ。


一方、「OBPM Neo」※1は開発プロジェクトの進捗状況を統合管理(スケジュール、コスト、要員、品質、採算などの管理)することで不採算プロジェクトの発生を未然に抑止するなど、開発部門の生産性向上を支援するツールである。
2008年にオンプレミス版「OBPM」の開発・販売を開始し、2021年3月にSaaS版の「OBPM Neo」にリニューアルした。
国内で唯一、PMBOK※2に準拠していたことから中堅規模のIT企業を中心に導入が進み、2024年2月末時点の累計導入実績は約270社となっている。
大手IT企業はプロジェクト管理ツールを内製化しているが、最近では「OBPM Neo」の認知度向上や品質の高さが評価され、部門内で導入を検討する企業も増えている。
一方、中小企業はExcelなどの市販ソフトや無料ソフトを使用しているケースが多い。
既存顧客のうち30%超がオンプレミス版を継続しているが、SaaS版の機能を拡充しながら移行を進めていく。
売上総利益率は50%程度の水準と見られる。


※1 月額利用料(税抜)は10ライセンスで10.5万円、20ライセンスで15.75万円、30ライセンスで18.9万円、40ライセンスで23.1万円、50ライセンスで26.25万円。
50ライセンス超は別途相談。
契約期間は1年。
各種システムと連携するためのオプションサービス有り。

※2 PMBOK(Project Management Body of Knowledge)とは、プロジェクトマネジメントに関するノウハウや手法を体系立ててまとめたもの。
1987年にアメリカの非営利団体PMIが「A Guide to the Project Management Body of Knowledge」というガイドブックで発表してから徐々に知られるようになり、現在はプロジェクトマネジメントの世界標準として世界各国に浸透している。


2. ERP事業
ERP事業では、Web-ERPパッケージ「GRANDIT」の開発、導入販売を行っている。
「GRANDIT」は11社のIT企業が参画したコンソーシアム方式で運営されているERPパッケージのことで、同社は2004年のコンソーシアム結成時より「GRANDIT」の企画・開発に携わり、普及拡大に貢献してきた。
「GRANDIT」の顧客ターゲットは年商数百億円規模の中堅企業だが、最近は大企業向けの実績も増えはじめ、導入社数はコンソーシアム全体で1,400社超まで拡大している。
「GRANDIT」の特徴は、完全Webベースでバージョンアップ時にクライアント側でのメンテナンス作業が不要なこと、またハードウェアに依存しないためWebが動作する環境であればどこでも利用できる点が挙げられる。
さらに、「GRANDIT」は11社それぞれの技術ノウハウが製品開発に生かされているため幅広い業種に対応可能で、機能面での競争力も高く、生産管理まで含む数少ない国産ERPとなっている。
2022年11月には、中小企業向けを対象としたクラウドERPサービス「GRANDIT miraimil(ミライミル)」をリリースするなど、日々進化を続けている。


同社の導入実績は製造業向けを中心に200社超となっており、年間販売実績が最も高かった企業に与えられる「GRANDIT AWARD Prime Partner of the Year」を2011年に初受賞して以降、通算8回受賞(2022年以降2年連続受賞中)するなど、コンソーシアムのなかでトップの実績を有する。
同社の強みは、「GRANDIT」の基本機能を補完するアドオンモジュールとして製造業向けの「生産管理アドオンモジュール」や「工事管理アドオンモジュール」のほか、ソフトウェア業界向けに「OBPM Neo」と連携させた「プロジェクト管理テンプレート(ITテンプレート)」などを自社開発するなど、幅広いソリューションに対応できる開発力である。
さらに、RPAやAIと組み合わせた業務自動化提案やAWS、Microsoft Azureなどのパブリッククラウドベースでのインテグレーションサービスにも対応可能である。


ERPの国内市場規模は、新型コロナウイルス感染症拡大を契機に経営のデジタルトランスフォーメーション(DX)が活発化するなかで着実に拡大を続けている。
ERP最大手のSAPが既存システムの保守サポートを2027年度で終了することを発表しており、大企業を中心に既存システムから「SAP S/4HANA」への移行、またはほかのERPに切り替える動きが活発化するなかで、エンジニアが慢性的に不足する状況が続いていることから、同社も「SAP S/4HANA」の導入支援サービスを2024年4月より開始した。


ERPベンダーは顧客規模別に棲み分けが進んでおり、大企業向けではSAPやOracle (NYSE:ORCL)など外資系が強く、中堅企業向けでは「GRANDIT」のほか富士通 (TYO:6702)の「GLOVIA」、オービック (TYO:4684)の「OBIC7」などが競合製品となる。
ここ最近は多機能化や外部連携機能など複雑化していることもあり、1件当たりの受注単価も3~5億円と大型化する傾向にある。
売上総利益率は製品構成や仕様によって変わるため一概には言えないが、平均すると20%台後半の水準となる。
一方、プロジェクトの延伸や改修作業が生じた場合は、利益率が低下したり不採算プロジェクトとなるリスクもある。


(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

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