[日本インタビュ新聞社] - クレスコ<4674>(東証プライム)は独立系システムインテグレータで、ビジネス系ソフトウェア開発や組込型ソフトウェア開発のITサービスを主力に、顧客のDXを実現するデジタルソリューションも強化している。25年3月期は受注が堅調に推移し、生産性向上効果なども寄与して増収増益予想、そして連続増配予想としている。受注環境は良好であり、積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は上値を切り下げる形となってやや軟調だが、調整一巡感を強めている。出直りを期待したい。
■ITサービスを主力としてデジタルソリューションも強化
独立系のシステムインテグレータで、ビジネス系ソフトウェア開発や組込型ソフトウェア開発のITサービスを主力としている。さらに成長戦略として顧客のDXを実現するデジタルソリューションも強化している。
セグメント区分は、ITサービス(エンタープライズ、金融、製造の各分野のコンサルティング・開発・保守の総合サービス)と、デジタルソリューション(自社製品Creage、インテリジェントフォルダなど、顧客のDXを実現する製品・サービスからなるソリューション群)としている。
24年3月期のセグメント別業績はITサービス事業の売上高が489億08百万円で営業利益(全社費用等調整前)が66億01百万円(内訳はエンタープライズの売上高が203億11百万円で営業利益が20億73百万円、金融の売上高が147億40百万円で営業利益が20億73百万円、製造の売上高が138億55百万円で営業利益が24億54百万円)、デジタルソリューション事業の売上高が38億47百万円で営業利益が2億25百万円、営業利益の調整額が▲17億05百万円だった。収益面では案件別の採算性が影響し、企業のIT投資関連のため年度末にあたる第4四半期の構成比が高くなる特性がある。
■M&A・子会社再編
M&A・アライアンスおよびグループ子会社再編では、23年2月に日本ソフトウェアデザイン(JSD)の全株式を取得して子会社化、23年3月にフォーラムエンジニアリング<7088>およびインドのSRM Globalとの3社共同で、フォーラムエンジニアリングのインド現地法人コフナビインディア社(22年10月設立)に出資した。23年9月には飲食業界のDX推進支援の拡大に向けて、ベトナムのレストラン&リテールテックスタートアップ企業CAPICHI社と資本業務提携した。23年12月には、セキュリティ脆弱性診断サービスやSOC(セキュリティオペレーションセンター)構築・運用など情報セキュリティサービスを展開するセキュアイノベーションと資本業務提携した。
24年4月にはシステムコンサルティングやインフラ設計構築・運用などを展開するジェット・テクノロジーズを子会社化した。24年6月には連結子会社クレスコ ワイヤレスの全株式を譲渡した。24年7月には同社、連結子会社のJSDおよびメクゼスの3社の組織再編を実施した。メクゼスがJSDを吸収合併(合併後の商号はメクゼス)するとともに、同社がJSDの一部事業(JSDが名古屋営業所において営む事業の全て)を譲り受けた。3社のノウハウやリソースを地域別に整理・統合して人財・経営資源を有効活用する。24年9月には子会社のクレスコ・ジェイキューブが電気・電子部品業界に向けに特化した基幹システム開発の高木システムを子会社化した。
■働き方改革や健康経営を推進
24年4月に発表した新中期経営計画2026(24年度~26年度)では、成長に向けた方向性として「IT・技術を通じて顧客の競争優位性を創出し、ともに社会を前進させるデジタル価値創造企業を目指す」を掲げた。目標値としては30年までに売上高1000億円企業を目指し、27年3月期売上高700億円、営業利益80億円、営業利益率11.5%、ROE15%を掲げた。配当性向は25年3月期より40%に引き上げる。またサステナビリティ経営関連の目標としては女性管理職比率13%、エンゲージメントスコア70などを掲げた。
重点戦略としては、共創型モデル確立、品質リーダーシップ発揮、人的資本経営推進、技術・デジタルソリューション拡張、事業連携促進、デジタル変革実現、グループ一体経営を掲げた。
事業別戦略としては、ITサービス事業のエンタープライズ分野ではワンストップサービスの提供拡大・効率化、主力業界の深耕、エンタープライズ領域のさらなる拡大、新しい価値のサービスの顧客との共創、金融分野ではバックエンド領域の拡大、データ連携・処理技術(ミドルウェア)の強化、共創をテーマとした業務推進、さらなるデータ利活用、業務知識の強化・法規制対応、製造分野ではインフォテインメント系の統合・充実、サイバーセキュリティ対応・セーフティな製品設計、モビリティ領域への集中、モビリティサービスの実装、顧客企業のITケイパビリティ強化、デジタルソリューション事業ではクラウド・オートメーション領域の継続的なアップデートへの取り組み、プリセールス・カスタマーサクセスの強化、経営課題の解決に寄与するソリューションの拡充、クレスコブランドのデジタルソリューション開発・実装、ブランド力向上による業界内の地位確立を推進する。24年7月にはグループ内AI技術活用等に取り組む仮想組織「生成AIビジネス変革研究室」を設立した。
なお健康経営・社会貢献関連では、23年3月にスポーツ庁が認定する「スポーツエールカンパニー2023」に認定された。24年2月には2年連続でスポーツ庁「スポーツエールカンパニー」に認定された。24年3月には経済産業省と日本健康会議が選定する健康経営優良法人認定制度に基づく健康経営優良法人2024(ホワイト500)に認定された。
24年6月には、同社からの寄付を契機に設立された「名古屋大学大学院情報学研究科 附属組込みシステム研究センター クレスコSDV研究室」とともに、経済産業省と国土交通省が公表している「モビリティDX戦略」の実現に貢献するため、自動車の未来を支えるAPI策定プロジェクト「Open SDV Initiative」を設立し、SDVに重要となるビークルAPIの策定活動を開始した。また全国新聞社事業協議会が主催する「2024年度全国選抜小学生プログラミング大会」に協賛(3回目)している。
■デジタルソリューションや自社オリジナル製品を拡大
オリジナル製品・サービスではIoTのKEYAKI、AIのMinervae、クラウドのCreageを3大ブランドと定義し、ソフトウェア開発・システム開発の需要喚起を推進している。
23年10月には。新たに開発したホテルの部屋割り業務最適化ツール「RooMagic」をリリースした。九州・東京・京都に展開するJR九州ホテルズでの導入が決定している。23年11月には歯のパノラマレントゲン画像から個々の歯を識別する情報処理装置、情報処理方法および情報処理プログラムの特許を取得した。24年2月には情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の国際標準規格ISO/IEC27001:2022の認証を全社で取得した。24年3月には子会社のエニシアスが、Google Cloud Partner Advantageプログラムでデータ分析スペシャライゼーションを取得、Google CloudのAIパートナーエコシステムのパートナー企業の1社に登録された。
24年8月にはホテルの部屋割り業務最適化ツール「RooMagic」の新バージョンをリリースした。横浜ベイシェラトンホテル&タワーズでの導入が決定している。24年8月には新サービス「業務整理ワークショップ」をリリースした。24年11月には自動車産業サイバーセキュリティガイドライン対応サービスの提供を開始した。
■25年3月期増収増益予想
25年3月期の連結業績予想は、売上高が24年3月期比10.9%増の585億円、営業利益が15.2%増の59億円、経常利益が6.0%増の60億円、親会社株主帰属当期純利益が7.3%増の40億円としている。配当予想は38円(第2四半期末19円、期末19円)としている。24年7月1日付株式2分割を考慮して遡及修正すると24年3月期(年間26円)比12円増配の形となる。連続増配で予想配当性向は39.1%となる。
第2四半期累計(中間期)は売上高が前年同期比11.2%増の285億06百万円、営業利益が31.9%増の26億08百万円、経常利益が13.3%増の27億63百万円、親会社株主帰属四半期(中間期)純利益が12.8%増の18億79百万円だった。
全体として受注が好調に推移し、前年の不採算プロジェクトの影響が一巡して大幅増収増益だった。営業外収益ではデリバティブ評価益が2億36百万円減少、特別利益では投資有価証券償還益が71百万円減少した。
ITサービス事業は売上高が12.2%増の264億94百万円、営業利益(全社費用等調整前)が28.3%増の35億25百万円だった。
このうちエンタープライズは売上高が8.5%増の106億26百万円、営業利益が18.0%増の10億93百万円だった。増収増益だった。建設・不動産分野や人材紹介・人材派遣分野の受注が落ち込んだものの、情報・通信・広告分野や運輸分野の受注が伸長したことに加え、前年の不採算プロジェクトの影響が一巡した。
金融は売上高が20.0%増の84億36百万円、営業利益が59.9%増の11億52百万円だった。大幅増収増益だった。銀行分野の受注が好調に推移し、ジェット・テクノロジーズの新規連結も寄与した。利益面は前期の不採算プロジェクトの影響が一巡したことも寄与した。
製造は売上高が9.5%増の74億31百万円、営業利益が16.3%増の12億79百万円だった。増収増益だった。機械・エレクトロニクス分野の受注が伸び悩んだものの、自動車・輸送機器分野やその他分野の受注が増加し、ジェット・テクノロジーズの新規連結も寄与した。
デジタルソリューション事業は売上高が0.7%減の20億12百万円、営業利益が9.2%減の82百万円だった。減収減益だった。前年の大型ライセンス販売の反動に加え、組織体制見直しに伴う売上原価の増加も影響した。
全社ベースの業績を四半期別に見ると、第1四半期は売上高が137億58百万円で営業利益が8億70百万円、第2四半期は売上高が147億48百万円で営業利益が17億38百万円だった。
通期の連結業績予想は据え置いている。受注が堅調に推移し、前期の不採算案件発生の影響一巡、生産性向上効果なども寄与して増収増益予想、そして連続増配予想としている。第2四半期累計の進捗率は売上高が49%、営業利益が44%、経常利益が46%、当期純利益が47%と順調である。受注環境は良好であり、積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。
■株価は調整一巡
株価(24年7月1日付で株式2分割)は上値を切り下げる形となってやや軟調だが、調整一巡感を強めている。出直りを期待したい。12月23日の終値は1213円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS97円05銭で算出)は約12倍、今期予想配当利回り(会社予想の38円で算出)は約3.1%、前期実績連結PBR(前期実績連結BPS1343円78銭を株式2分割後に換算した671円89銭で算出)は約1.8倍、そして時価総額は約534億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)