[ニューヨーク 15日 ロイター] - 18日からの週の米株式市場は、決算発表シーズンが本格化するなか、ディフェンシブ銘柄の行方が注目されている。地政学的な不透明さや米連邦準備理事会(FRB)のインフレ対策が経済成長を阻害するとの懸念が出ている中で、激動期を乗り切るのにより適しており、配当が高い傾向にあると見なしているためだ。
決算発表を予定しているのはジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)やプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)など。ネットフリックスやテスラも注目されている。
ヘルスケア、公益事業、生活必需品、不動産 といったディフェンシブセクターは、株式市場全般が下落しても4月に入ってから上昇しており、今年に入ってS&P500種指数 を上回る傾向が続いている。
FRBが消費者物価の大幅上昇を抑えるために積極的な金融引き締めを実施し、米経済を失速させることを投資家は懸念しており、ここ数カ月間はディフェンシブ株の魅力が特に高まっている。現在の経済成長は力強いが、米大手銀行の一部はFRBの積極的な金融引き締めが経済全般に行き渡るにつれて景気後退をもたらす可能性を懸念している。
米国債市場は先月、一時逆イールドとなったが、過去には景気後退に先駆けて発生していた。ロシアのウクライナ侵攻も懸念材料となっている。
グリーンウッド・キャピタルのウォルター・トッド最高投資責任者(CIO)は「(ディフェンシブ銘柄の株価が)アウトパフォームしている理由は、経済成長への逆風がみられるため」と指摘した。
S&P500種指数年初来8%近く下落しているが、公益事業は6%超、生活必需品は2.5%それぞれ上昇。ヘルスケアは1.7%下落し、不動産も6%下落した。
米企業の22年の業績が予想より好調となる兆しがみられ、銀行や旅行会社、経済成長の恩恵を受ける企業や、過去10年間の大半で株高を主導した高成長企業やテクノロジー企業などの株価も上昇する可能性がある。
エドワード・ジョーンズのシニア投資ストラテジストは、物価が急騰するなか、ディフェンシブ銘柄が一定のインフレヘッジになる可能性を指摘。価格決定力を考慮すると、物価の上昇に関係なく消費者は生活必需品、医療、公共料金には支出を続けるとの見方を示した。
経済の先行きが全面的に悲観されているわけではなく、経済が好調を維持すれば、市場の勢いはすぐに他の分野に移る可能性があるとみられている。
ナショナル・セキュリティーズの市場担当チーフストラテジストは、今年の景気後退の可能性を35%としているが「基本シナリオではない」と指摘。「差し迫った景気後退への懸念が和らげば、ディフェンシブ株への資金注入も後退する」との見方を示した。
ディフェンシブ銘柄の急騰でバリュエーションも押し上げられている。リフィニティブのデータストリームによると、公益事業セクターの予想株価収益率(PER)21.9倍と過去最高水準。5年間の平均PER18.3倍を大幅に上回っている。生活必需品セクターは5年平均予想PERに対して約11%のプレミアム、ヘルスケアは5%のプレミアムとなっている。
グリーンウッドのトッド氏は「一定の平均回帰(ミーン・リバージョン)取引があっても意外ではない。しかし、成長に対する懸念が続く限り、ディフェンシブ株は相対的にアウトパフォームする可能性がある」と述べた。