[東京 22日 ロイター] - 総務省が発表した3月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除く、コアCPI)は100.9と、前年同月比0.8%上昇した。市況高や円安で食料品やエネルギー価格の上昇幅が一段と拡大。2020年1月以来の高い伸びとなった。ロイターがまとめた民間予測に一致した。エコノミストからは、携帯電話通信料による押し下げの剝落で4月はプラス2%に乗せる可能性が十分あるとの指摘が出る一方、政府の経済対策で伸びは鈍化するとの見方も出ている。
3月の生鮮食品を除く食料は2.0%上昇と、前月の1.6%上昇を上回り、201512月以来の伸びとなった。生豆価格の上昇や円安でインスタントコーヒーが9.8%上昇した。食用油は34.7%上昇、主産地・カナダでの高温・乾燥が響いた。
エネルギー価格は20.8%上昇と、前月の20.5%上昇から伸び率が一段と拡大。1981年1月以来の伸び率を記録した。電気代が21.6%上昇で1981年3月以来の高い伸びとなる一方、ガソリンは19.4%上昇と前月の22.2%上昇から伸び率が縮小した。前年同月に伸びていた反動のほか、政府の補助金の影響が出ているとみられる。
総務省の担当者は「円安で牛肉などの輸入品やエネルギー関連に影響が出ている」と話した。
携帯電話の通信料は52.7%下落。総合CPIの寄与度でマイナス1.42ポイントとなった。前年同月比のマイナス幅は前月の53.6%より縮小し、コアCPIを押し上げた。昨年3月、一部で携帯料金の先行値下げがあったことが影響した。
<コアCPIは4月に2%も、伸びは鈍化か>
携帯電話通信料の押し下げ要因の剥落で、4月からコアCPIは大幅に上昇する可能性が高い。総務省の担当者は携帯電話通信料の押し下げ要因は4月、8月、10月の3回に分けて剥落していくと説明。4月の総合指数は1%ポイント程度押し上げられるとの見通しを示した。
第一生命経済研究所の新家義貴・シニアエグゼクティブエコノミストは4月の見通しについて、携帯電話通信料の押し下げ要因剥落や食料品の値上げが進むことで、「コアCPIが2%となる可能性は十分にあり得る」との考えを示した。
一方、政府が来週発表する予定の緊急経済対策が物価の押し下げにつながるとの指摘が出ている。
SMBC日興証券の宮前耕也・日本担当シニアエコノミストは激変緩和措置の延長・拡充で物価の押し下げ効果が0.6%ポイント程度に拡大すると推計。5月のコアCPIの予想をプラス2.5%程度からプラス1.9%程度に引き下げた。激変緩和措置の延長により、年内のピークも2%台前半で抑えられそうだとみている。地方の自動車利用世帯を中心に、景気の押し下げ圧力はやや後退することになりそうだ。
<21年度、エネルギー高でプラス圏に>
3月の総合指数は前年同月比1.2%上昇と、前月の0.9%上昇から伸び率が拡大して2018年10月以来の伸びとなった。不作でたまねぎが74.9%上昇するなど生鮮食品の値上がりが押し上げた。生鮮食品およびエネルギーを除く総合指数(コアコアCPI)は0.7%下落した。
2021年度平均のコアCPIは99.9で前年度比プラス0.1%と、2年ぶりの上昇となった。携帯電話通信料の大幅値下げが下押し要因となる一方、エネルギー高の進展が年度平均でのプラス圏浮上につながった。
(和田崇彦 取材協力:新田裕貴)