■要約
ラクス (T:3923)は、代表取締役社長の中村崇則(なかむらたかのり)氏が2000年に創業したクラウドサービスを主力とするIT企業である。
問い合わせメール共有・管理システム「メールディーラー」(2001年発売)の開発を皮切りにクラウド事業を開始し、メール配信システム「配配メール」(2007年)、Webデータベース「働くDB」(2008年)、経費精算システム「楽楽精算」(2009年)をリリースし、クラウドサービスの優良なポートフォリオを確立した。
創業以来、増収を続けており、増益率の高さにも定評がある。
2015年12月に東証マザーズ市場上場を果たした。
1. 事業内容
事業セグメントは、クラウド事業とIT人材事業の2つのセグメントから構成されている。
クラウド事業は、売上高の73.1%(2018年3月期第2四半期)、セグメント利益の90.3%(同)と全社業績をけん引する。
クラウド事業の中でも長年事業の柱となっているのが「メールディーラー」、主力サービスと位置付けられるのが「楽楽精算」であり、クラウド事業売上の約6割はこの2商品が占める。
同社のクラウドサービスの特徴の1つは、カスタマイズや機器販売を極力行わないことである。
売上高が固定費を超えてくると、変動費が小さいために利益率が急速に高まってくる。
結果として、クラウド事業の利益率(セグメント利益/セグメント売上)は19.6%(2018年3月期第2四半期)に達している。
高収益の既存サービスから注力するサービス(楽楽精算など)に資金を投下するポートフォリオマネジメントがうまく回っているのが同社の強みである。
2. 業績動向
2018年3月期第2四半期は、売上高が前期比24.7%増の2,914百万円、営業利益が同12.7%増の462百万円、経常利益が同14.6%増の465百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益が同14.9%増の320百万円となり、大幅な増収増益を達成した。
売上高は期初の計画を超えて成長した。
クラウド事業の成長をけん引しているのは、クラウド経費精算システム「楽楽精算」である。
TVCMなどのマーケティング投資や営業人員増強、代理店経由の販売の積極化などが奏功し、導入社数は2,412社(前期末比455社)と大幅に伸ばした。
各利益が前年同期比及び期初計画比で増益となったのは、増収効果に加え、開発及び営業に関する人件費の未消化が要因である。
2018年3月期通期の連結業績予想は、売上高で前期比22.7%増の6,050百万円、営業利益で同20.2%増の1,172百万円と、期初の予想を据え置いた。
クラウド事業が好調に推移しており、売上面では上期に上振れたため上方修正が予想される。
利益面では、上期に未消化となった人件費に関して採用を進め、広告費は期初計画から117百万円積み増す予定であり、期初計画の利益水準に着地させたい考えだ。
3. 成長戦略
2018年3月期の期初計画では、「楽楽精算」については積極投資を継続しつつもサービス単体での黒字化を想定していたが、上期終了の時点では新規受注が好調なこともあり、計画よりもさらに投資を行い、成長を加速させる方向に舵を切る。
具体的には、開発及び営業の人件費を3,130百万円(2018年3月期、前期比19.5%増)、広告費は期初計画から117百万円増加させ、794百万円(前期比36.2%)とする。
8月に行ったTVCMも効果が上がっており、年度内に追加で行う予定である。
これにより、通年での「楽楽精算」の黒字化は2019年3月期に先送りとなる。
同社は「メールディーラー」、「配配メール」、「働くDB」などの収益性の高いサービスを持つため、「楽楽精算」への思い切った成長投資を行うことができる点が競合優位性につながっている。
4. トピック
同社は海外機関投資家の比率が増えてきたために、重要経営指標を経常利益率からEBITDAマージンに変更した。
グローバルの基準に合わせることで、企業の収益力を国際的に比較することが容易になる。
過去4期のEBITDAは利益成長に伴い順調に増加しており、EBITDAマージンも16.7%(2014年3月期)から23.5%(2017年3月期)に上昇した。
今後同社では、EBITDAマージンを15%~25%の間でコントロールする方針だ。
5. 株主還元
同社は株主還元策として配当を実施している。
配当の基本方針としては、毎期増配(前期実績より必ず増配)、配当性向10%以上の2点である。
2015年3月期に1.75円だった配当金は2017年3月期には3.90円と年々増配を重ねてきた。
2018年3月期は増配のペースが加速し、期末の配当金は5.55円、配当性向15.0%を予想する。
■Key Points
・安定した急成長を支えるストック型ビジネスモデル。
主力の「楽楽精算」は導入が加速し、累計2,400社を超える
・2018年3月期通期は成長投資を積み増し、期初計画の利益水準に着地予想
・海外投資家の増加に伴い、EBITDAマージンを重要指標と設定
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田 秀夫)
ラクス (T:3923)は、代表取締役社長の中村崇則(なかむらたかのり)氏が2000年に創業したクラウドサービスを主力とするIT企業である。
問い合わせメール共有・管理システム「メールディーラー」(2001年発売)の開発を皮切りにクラウド事業を開始し、メール配信システム「配配メール」(2007年)、Webデータベース「働くDB」(2008年)、経費精算システム「楽楽精算」(2009年)をリリースし、クラウドサービスの優良なポートフォリオを確立した。
創業以来、増収を続けており、増益率の高さにも定評がある。
2015年12月に東証マザーズ市場上場を果たした。
1. 事業内容
事業セグメントは、クラウド事業とIT人材事業の2つのセグメントから構成されている。
クラウド事業は、売上高の73.1%(2018年3月期第2四半期)、セグメント利益の90.3%(同)と全社業績をけん引する。
クラウド事業の中でも長年事業の柱となっているのが「メールディーラー」、主力サービスと位置付けられるのが「楽楽精算」であり、クラウド事業売上の約6割はこの2商品が占める。
同社のクラウドサービスの特徴の1つは、カスタマイズや機器販売を極力行わないことである。
売上高が固定費を超えてくると、変動費が小さいために利益率が急速に高まってくる。
結果として、クラウド事業の利益率(セグメント利益/セグメント売上)は19.6%(2018年3月期第2四半期)に達している。
高収益の既存サービスから注力するサービス(楽楽精算など)に資金を投下するポートフォリオマネジメントがうまく回っているのが同社の強みである。
2. 業績動向
2018年3月期第2四半期は、売上高が前期比24.7%増の2,914百万円、営業利益が同12.7%増の462百万円、経常利益が同14.6%増の465百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益が同14.9%増の320百万円となり、大幅な増収増益を達成した。
売上高は期初の計画を超えて成長した。
クラウド事業の成長をけん引しているのは、クラウド経費精算システム「楽楽精算」である。
TVCMなどのマーケティング投資や営業人員増強、代理店経由の販売の積極化などが奏功し、導入社数は2,412社(前期末比455社)と大幅に伸ばした。
各利益が前年同期比及び期初計画比で増益となったのは、増収効果に加え、開発及び営業に関する人件費の未消化が要因である。
2018年3月期通期の連結業績予想は、売上高で前期比22.7%増の6,050百万円、営業利益で同20.2%増の1,172百万円と、期初の予想を据え置いた。
クラウド事業が好調に推移しており、売上面では上期に上振れたため上方修正が予想される。
利益面では、上期に未消化となった人件費に関して採用を進め、広告費は期初計画から117百万円積み増す予定であり、期初計画の利益水準に着地させたい考えだ。
3. 成長戦略
2018年3月期の期初計画では、「楽楽精算」については積極投資を継続しつつもサービス単体での黒字化を想定していたが、上期終了の時点では新規受注が好調なこともあり、計画よりもさらに投資を行い、成長を加速させる方向に舵を切る。
具体的には、開発及び営業の人件費を3,130百万円(2018年3月期、前期比19.5%増)、広告費は期初計画から117百万円増加させ、794百万円(前期比36.2%)とする。
8月に行ったTVCMも効果が上がっており、年度内に追加で行う予定である。
これにより、通年での「楽楽精算」の黒字化は2019年3月期に先送りとなる。
同社は「メールディーラー」、「配配メール」、「働くDB」などの収益性の高いサービスを持つため、「楽楽精算」への思い切った成長投資を行うことができる点が競合優位性につながっている。
4. トピック
同社は海外機関投資家の比率が増えてきたために、重要経営指標を経常利益率からEBITDAマージンに変更した。
グローバルの基準に合わせることで、企業の収益力を国際的に比較することが容易になる。
過去4期のEBITDAは利益成長に伴い順調に増加しており、EBITDAマージンも16.7%(2014年3月期)から23.5%(2017年3月期)に上昇した。
今後同社では、EBITDAマージンを15%~25%の間でコントロールする方針だ。
5. 株主還元
同社は株主還元策として配当を実施している。
配当の基本方針としては、毎期増配(前期実績より必ず増配)、配当性向10%以上の2点である。
2015年3月期に1.75円だった配当金は2017年3月期には3.90円と年々増配を重ねてきた。
2018年3月期は増配のペースが加速し、期末の配当金は5.55円、配当性向15.0%を予想する。
■Key Points
・安定した急成長を支えるストック型ビジネスモデル。
主力の「楽楽精算」は導入が加速し、累計2,400社を超える
・2018年3月期通期は成長投資を積み増し、期初計画の利益水準に着地予想
・海外投資家の増加に伴い、EBITDAマージンを重要指標と設定
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田 秀夫)