[サンフランシスコ 21日 ロイター] - 米アップル (O:AAPL)がストレージサービス「iCloud(アイクラウド)」を通じiPhoneのバックアップを完全に暗号化する計画を断念していたと、関係筋6人がロイターに明らかにした。
犯罪捜査に妨げになるという米連邦捜査局(FBI)の苦情に配慮した決定だという。
関係筋によると、アップルは約2年前、エンドツーエンドのデータ暗号化サービスを計画しているとFBIに伝えた。ハッカー攻撃の阻止が主要目的だったが、アップルが暗号化されたデータにアクセスするキーを持たないことで捜査当局に証拠の提出ができなくなるため、FBI側から反対の声が上がった。
アップルはその後、計画を断念する方針をFBIに伝えたが、公には報じられていなかった。
一方、元アップル社員によると、ユーザーがロックアウトされるケース頻発への懸念など、他の理由もバックアップ暗号化計画の撤回につながった可能性があるとみられている。
このところ、ハイテク大手による顧客の情報保護と捜査当局による新技術への懸念が表面化している。
昨年12月にフロリダ州米海軍基地で発生した発砲事件を受け、バー司法長官はアップルに対し実行犯が所持していたiPhoneのロックを解除し捜査に協力しするよう求めた。トランプ大統領もアップルが捜査に協力しないと批判。「われわれは貿易やその他多くのことで常にアップルを支援しているが、アップルは殺人犯やドラッグディーラー、他の暴力的犯罪要素のある事案に使われた携帯電話の解除を拒んでいる」と不満を示した。
アップルはその後、クラウド上に保存されたバックアップを捜査当局に提出。また、特定の捜査とは関連なく、FBIに支援を提供したという。
アップルの広報は、バックアップ暗号化に関する扱いやFBIとの協議を巡るコメントを控えている。