Greg Stutchbury
[大分 25日 ロイター] - スコット・バレットにとっては、まさに夢ではないかと疑うような状況である。と言っても、日本開催のラグビーワールドカップで現地のファンから兄ボーデンに注がれる関心に驚いたわけではない。
ロックでプレーするスコット、スタンドオフのボーデン、そしてバックスとして複数のポジションをこなすジョーディは、2017年の対サモア戦で、ニュージーランド代表「オールブラックス」として史上初めて兄弟3人が同じテストマッチ(国代表どうしの公式試合)に出場する快挙を成し遂げた。
また、ワールドカップに向けた代表スコッドに兄弟3人が含まれるのも、これが初めてだ。
ニュージーランド北島の西岸、タラナキ地方で一家が経営する農場で育ったバレット兄弟にとって、3人そろっての檜舞台は自宅の裏庭で遊ぶときに何度も思い描いたシナリオだった、とスコットは言う。
オールブラックスは25日、大分で10月2日のカナダとの試合に向けた練習を開始した。「日本に一緒に来られるとは、実はまったく思っていなかった」と話す。「こういうのは、家の裏庭で遊ぶときの冗談だ。『さあキックが決まった、ワールドカップ優勝だ!』みたいに」
「ニュージーランドの子どもたちは、そういうシナリオを作って遊ぶものだ。それがこうして実現するとは、夢かと思う」
才能あふれる選手の宝庫であるニュージーランドでは、オールブラックスまでたどり着くのは至難の業だが、実は、彼らが大舞台で活躍する可能性はかなり前から高くなっていた。
バレット兄弟の父ケビンはタラナキ地方の中心選手で、スーパーラグビー初期にウェリントン・ハリケーンズでプレーしていた。現役を引退するときに「これからはオールブラックスを何人か育てることにする」と言ったのは有名な話だ。
3兄弟とも、ラグビーに真剣に取り組む姿勢は父親から、スポーツの才能は体操・バスケットボール・ネットボールで活躍した母ロビンから受け継いだと話している。
<人気を集めるボーデン>
兄弟のなかで最も知名度が高いのは、ワールドラグビーの年間最優秀選手に2回選ばれたボーデンで、日本の家電メーカーのCMにも出演している。
ワールドカップが始まって以来、ボーデンは常に熱心な地元ラグビーファンに取り囲まれている。最初のうちは少し驚いた、とジョーディ。
「昨日空港に着いたら、皆がボーデンの名前を叫んでいる。僕とスコットはいったい何が起きているのかと顔を見合わせた」と彼は言う。
「でも、かなりワクワクする。ボーデンが大きな期待を集めていることはチーム全員わかっているし、盛り上がるのは素晴らしい」。
バレット3兄弟には、他に兄が2人(そのうちの1人、ケインはプロラグビー選手としてオークランド・ブルーズでプレーしていたが、脳しんとうのため引退を余儀なくされた)、姉妹が3人いるが、遠征で3人一緒に過ごせることはやはり楽しい。
「兄弟姉妹でも、大人になるにつれて、それぞれのスタイルに別れていくものだろう」とボーデンは言う。「しかし、それでも遠征で一緒になれるというのは僕たちにとって素晴らしいことだ」。
もっとも、日本ではまだ3兄弟が同じ部屋に泊まったことはない。スコットは、自分の性格を考えれば、実はその方がいいのではないかと思っている。
「ボーデンは本当にきれい好きだが、僕はちょっとだらしないところがある」とスコットは部屋の整理整頓について語る。
「僕はあれこれ放りっぱなしで散らかしてしまうが、他の2人はたぶんきちんと片付けている」
(翻訳:エァクレーレン)