[2日 ロイター] - 9月14日に石油施設2カ所が攻撃を受けた後、サウジアラビアの王族や財界エリートの一部からムハンマド・ビン・サルマン皇太子(34)に対する不満が噴出している。
1人の上級外交筋や、王族や財界エリートとつながりのある5人の消息筋によると、国防相を兼任する皇太子が攻撃を防げなかったことで、サウド王家の一部有力王族から皇太子の国防手腕や政治能力への懸念が高まっている。皇太子が権力の掌握に向けて厳し過ぎる締め付けを進めてきたことも反発を招いているという。
王家とつながりのある上流階級の1人は、皇太子の統率力について「反感が多い」と吐露。「どうして今回の攻撃を察知できなかったのか」と不満をあらわにした。
この関係者は、上流階級の一部は皇太子を「信頼していない」と言っているとも付け加えた。他の消息筋4人と上級外交筋も同様の見方を示した。
王家やビジネス界とつながる関係者4人によると、皇太子のイランに対する強硬姿勢やイエメン内戦への関与が攻撃を招いたとの批判が国内の一部で出ている。先の5人の消息筋と上級外交筋によると、多額の国防費を使っていながら攻撃を防ぐことができなかった皇太子に対して失望が広がっているという。
サウジのエリート層の一部では、皇太子が権力基盤を固めようとしていることが国に害を及ぼしているとの見方もある。政府に近い関係者の1人は、皇太子は前任者よりも経験のない人材を抜擢していると指摘した。
ただ、皇太子は依然として厚い支持を受けてもいる。皇太子に忠誠を誓うグループの1人は「今回の石油施設攻撃で、皇太子が最有力王位継承者としての立場に個人的に打撃を被ることはない。皇太子は中東地域でのイランの勢力拡大を阻止しようとしているからだ。これは国を愛することに関わる問題であり、少なくとも父親である現国王が生きている限り皇太子が危険な状況に陥ることはない」と述べた。
別の上位の外交筋も、一般的なサウジ国民は今でも、強力で決断力と行動力を備えた指導者として皇太子の下での団結を望んでいると述べた。