[香港 8日 ロイター] - 香港の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は8日会見し、緊急時に行政長官が公共の利益のために必要な規制を制定できる「緊急状況規則条例(緊急条例)」を利用して、他の法律を導入する計画はないと述べた。
長官は4日、緊急条例を約50年ぶりに発動して覆面の着用を禁じる法律を制定。覆面禁止法は5日に施行されたが、これを受けて抗議デモが激化している。
長官は会見で、香港には自力で現状に対処する手段があると述べた。
長官はまた、観光客の数が急減したとし、第3・四半期の香港の経済指標へのデモの影響は「非常に深刻であることは確実だ」と指摘。
「国慶節の休暇期間に当たる10月1─6日の香港への訪問者数は、50%以上減少した」と述べた。特に小売り、ケータリング、観光業、ホテルへの影響が大きいとし、「香港のあらゆる業種が厳しい冬の季節を迎えるだろう」と述べた。
長官は、国慶節関連の行事に出席するために先週、中国本土を訪問した。ただ、中央政府の高官と、職務に関して協議するために接触することはなかったという。
長官は会見で、どのような状況になればデモ鎮静化のために本土政府の支援を求めるのか、と質問されると、香港は自力で解決策を見つけ危機に対応することが可能だと強調。
「中央政府への支援要請など、特別な措置を取ることになる状況については、はっきりとしたことは今は言えない」とした一方、「状況が悪化すれば、選択肢を排除することはできない」とし、中国政府に対する支援要請の可能性を残した。
覆面禁止法の効果については、判断は時期尚早としたほか、政治活動に参加しないよう若者らに呼び掛けた。
警察は8日、覆面禁止法違反で12歳の子供を含む77人を逮捕したと発表した。
長官によると、9月以降の逮捕者のうち18歳未満が約40%、15歳未満が10%を占めているという。
8日には大学生など数百人が講義のために覆面をかぶり授業に出席した。
3連休明けの8日、商業活動は再開したものの、地下鉄の運行は一部しか再開されていない。当局はインフラ破壊により通勤・通学に支障が出る可能性を警告した。
香港地下鉄は8日、一部の駅を損傷修理のため閉鎖すると発表。また地下鉄の運行を、平常より4時間以上も早い午後8時に終了すると明らかにした。
香港政府は8日の声明で「マスクを着用した大勢の暴徒による大規模な破壊行為が繰り返しみられた」とし、「高い場所から自転車が落とされ」、警官が負傷したと明らかにした。また多くの地区で道路が封鎖されたとした。
連休中のデモでは、現金自動預け払い機(ATM)、中国系の銀行や店舗が破壊された。通常は多くの客で非常ににぎわう時期にもかかわらず、レストランやショッピングモールは時間を早めて閉店した。
*内容を追加しました。