[リヤド 30日 ロイター] - ムニューシン米財務長官は30日、米中が「第1段階」の通商合意に署名したとしても、トランプ大統領が提唱するように中国による米国産農産品の輸入が年間400億─500億ドルに増加するまで時間がかかると述べた。
ムニューシン長官は訪問先のサウジアラビアでロイターのインタビューに応じ、400億─500億ドルの目標について、水準は「高い」との認識を示しながらも、中国が示した輸入に関するコミットメントを巡る「極めて具体的な協議」に基づいて設定されたと説明。「米国が実行できると考える水準、および中国が必要と考える水準の双方に基づきボトムアップ形式で設定された」と述べた。
その上で、「これは1年間の目標だが、押し上げには時間がかかる」と述べた。
年間400億─500億ドルの目標は、米中貿易摩擦が勃発する前の2017年の中国による米農産品輸入額の2倍の水準。
米中通商交渉に詳しい一部の関係者はこれまで、「第1段階」の合意では、中国が貿易摩擦以前の水準に米農産品購入を戻すことを出発点にすると見込んでいると述べている。
<宙に浮いた署名場所>
ムニューシン長官は、トランプ大統領と中国の習近平国家主席が今後数週間で署名できるよう、双方の交渉団が合意文書のとりまとめに取り組んでいると説明。
これまでは、11月半ばにチリで開催が予定されていたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議で両国首脳が署名するという目標があったが、チリのピニェラ大統領は30日、APECの開催を断念すると発表。[nL3N27F4EC]
これについて財務省の高官は長官のインタビュー後、チリのAPEC開催断念を知ったところで、「選択肢を検討している」と述べた。
ムニューシン氏はまた、中国とは電話による生産的な協議が行われており、今後も続く見通しのため、自身とライトハイザー米通商代表部(USTR)代表が合意文書に関する詰めの協議のために中国を訪問するとは想定していないと語った。
ムニューシン氏は来週初めまで中東とインドの歴訪が予定されており、ライトハイザー氏は北米の新たな通商協定である米・メキシコ・カナダ協定(USMCA)を議会に批准させるために議員らと頻繁に会合を開いている。
<中国の市場開放>
ムニューシン氏は、中国商務省の王受文次官が金融サービスを含む多くの部門で外資の投資規制を撤廃する方針を示したことについて、「歓迎する」と表明。
王次官はまた、外国投資家と外国企業に対して「明示的にも暗示的にも」技術移転を強要することはないとコメントしている。強制的な技術移転は米中貿易戦争の焦点の1つ。[nL3N27E5DJ]
ムニューシン氏は「われわれは王氏の発言に勇気付けられており、合意された内容と整合的だ」と述べた。
また、「第1段階」合意に含まれている中国の金融サービス市場開放が、オバマ前政権時代の2016年に米中が交渉した2国間投資協定(BIT)に類似しているとの指摘があることについて、ムニューシン氏はこれを否定。
「これは全く新しい合意だ」と強調。「(BITは)出発点ではなかった。これに留意することは実質なかった」と述べた。
*内容を追加しました。