[シドニー 13日 ロイター] - オーストラリアでは第3・四半期に賃金の伸びが鈍化し、11月の消費者信頼感も引き続きさえず、景気支援に向け一段の刺激策が必要になる可能性が示されている。
豪連邦統計局が13日発表した第3・四半期の賃金価格指数(賞与除く時給ベース)は季節調整済みで前期比0.5%上昇と、市場予想と一致したものの、前期の0.6%上昇から伸びから鈍化した。
前年比では2.2%上昇。エコノミストは前期(2.3%上昇)と一致する伸びを予想していたが、こちらも鈍化した。
また、同日にメルボルン研究所とウエストパック銀行 (AX:WBC)が公表した11月の豪消費者信頼感指数は前月比4.5%上昇したものの、悲観的な回答が楽観的な回答を上回り、引き続きさえない状況となった。
賃金の伸び悩みとさえない消費者信頼感は消費を圧迫し、国内景気の見通しにおける「主要な不確実性」となってきた。これに対応し、オーストラリア準備銀行(中央銀行)は今年、計3回の利下げを実施し、政策金利は過去最低の0.75%となった。
求人サイト、インディードのエコノミスト、カラム・ピッカリング氏は「賃金の伸びは引き続き、オーストラリア経済にとって主要な課題の1つだ。家計支出、インフレ、金融政策の鍵を握る」と指摘した。
中銀のロウ総裁はインフレ率に上昇圧力を生じさせるためには、3%台の賃金の伸びが必要との見解を繰り返し示してきた。
ただ、中銀は前週公表した四半期報告で、「賃金の伸びは低水準で、上向く兆しはほとんどみられない」とし、2021年末まで賃金の伸びは2.3%にとどまるとの見方を示しており、最新の統計はこれと整合的だった。[nL3N27O0BN]
一方、豪政府は今会計年度(2020年6月終了)の賃金の伸び率は2.75%、次年度は3.25%と予想しており、現実とのかい離が浮き彫りとなった。
中銀は必要に応じて追加利下げを実施する用意があることを示唆しており、量的緩和(QE)など非伝統的政策導入の可能性にも言及している。
金融市場では来年初めまでに政策金利は0.5%に低下すると予想されている。またこの時期にはQEが導入されるとみるエコノミストも多い。
<不動産ブーム>
シティのエコノミスト、ジョシュ・ウィリアムソン氏は、11月の消費者信頼感指数がさえなかったものの、前月比で上昇した主な要因について、全国的な住宅価格の回復を挙げた。
住宅ローン債権者の信頼感指数は4.9%上昇、住宅所有者の信頼感指数は8.0%上昇。住宅購入に適した時期かどうかを測る指数は2.1%上昇した。
オーストラリア・アンド・ニュージーランド・バンキング・グループ(ANZ) (AX:ANZ)と不動産コンサルタント会社コアロジックの調査によると、住宅市場は来年上期に再び好調期を迎える見通しで、同セクターは引き続き経済を支援するとみられる。
10月の住宅価格は2015年半ば以来の大幅な上昇率を記録し、4カ月連続のプラスとなった。シドニーの住宅価格上昇率は年率換算で24%に達した。
コアロジックの調査部門責任者、ティム・ローレス氏は「このトレンドが続けば、来年初めに住宅価格は過去最高値を更新する可能性がある」と語った。
ただ賃金の伸びは依然抑制されたままで、失業率は小幅な上昇が見込まれ、企業信頼感もさえないことから、不動産ブームだけでは豪中銀が様子見を続けるには十分ではないとエコノミストは指摘している。
AMPキャピタルのチーフエコノミスト、シェーン・オリバー氏は「理想を言えば、大規模な財政刺激策が近く必要だ。しかし、それがなければ、豪中銀への圧力は続く。われわれは追加利下げやQE、よりハト派的なフォワードガイダンスを見込んでいる」と語った。
*内容を追加しました。