[パリ/ブリュッセル/ワシントン 2日 ロイター] - 世界貿易機関(WTO)は2日、欧州航空機大手エアバス (PA:AIR)に補助金を拠出していないとした欧州連合(EU)の主張を退け、先に承認した米国の対EU報復関税についてEUが求めていた差し止め要請を認めなかった。
WTOの新たな報告書は、エアバスのA380型機とA350型機に対するEUの補助金が政府ローンという形で続いていると認定した。
WTOは10月、エアバスに対するEUの補助金は違法として、米国が75億ドル相当の欧州製品に輸入関税をかけることを承認。これを受け、米国は航空機のほか、他の工業品やワインやチーズなどの農産品に報復関税を発動した。[nL3N26O03X]
米航空機大手ボーイング (N:BA)への米補助金を巡るEUの対米報復関税については、来年に決定される見通し。
EUは、エアバスが販売の鈍いA380の生産停止を決めたことで同社がボーイングの脅威と見なせなくなったと主張。WTOはA380がもはやボーイング販売低迷の原因ではないとしたものの、同機が生産されている限り、ボーイングの市場シェアへの影響は続くとした。
エアバスは2021年半ばにA380の生産を終了する計画。
欧州委員会はWTO報告書について、多くの深刻な法的問題があるとし、不服申し立てなどの手段を検討すると述べた。一方、航空機補助金を巡り米国と包括的な合意を目指すとも明らかにした。
<米政府、関税引き上げを検討へ>
WTOの発表を受け、米通商代表部(USTR)は、EUからの輸入品に対する関税の引き上げや適用対象の拡大を検討すると表明した。
USTRは声明で「今日の報告書とこの問題の解決に向けた進展がないことを踏まえ、米国は関税引き上げと他のEU製品に対する関税適用を検討するプロセスを開始した」と言明、今週中にさらに情報を発表するとしている。
エアバス側は、A380がもはやボーイング販売低迷の原因ではないと認定されたことを受けて、米政府が関税を75億ドルから55億ドルに引き下げるべきだと主張している。
USTRはこれについて、今回のWTOの報告書を踏まえると、エアバスの主張には根拠がないと反論した。
*内容を追加しました。