[ワシントン 19日 ロイター] - 米議会下院は19日、北米自由貿易協定(NAFTA)に代わる新たな貿易協定「米・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」の実施法案を超党派の賛成多数で可決し、上院に送付した。
採決結果は賛成385、反対41。民主党38人と共和党2人、無所属1人が反対票を投じた。
民主党のみの賛成で可決された前日の下院でのトランプ大統領の弾劾訴追決議案の採決とは異なり、超党派での可決となった。[nL4N28T0JB]
上院でのUSMCA法案の審議日程は不透明だが、共和党の上院トップ、マコネル院内総務は、来年1月に見込むトランプ氏の弾劾裁判後になるとの見通しを示している。
3カ国は昨年、新協定に署名したが、その後、米下院で過半数を握る野党・民主党が労働基準の厳格化などを要求、3カ国が修正協議を行い、今月に入り修正文書に署名した。[nL4N28K4AF]
ペロシ下院議長は、USMCA法案の可決でトランプ氏に政治的な成果を与えることには懸念を示さなかった。採決前の議場で「米労働階級の世帯を支援するため、協力できるなら間接的な利益になる。大統領が手柄にしたければ、そうすればいい」と語った。
修正では、民主党に譲歩する形で環境ルールも厳格化されたほか、メキシコの工場労働者の権利が保護されているか迅速に検証するメカニズムが確立された。
民主党が、薬価上昇につながるなどとして懸念を表明していたバイオ医薬品データを10年保護する規定も削除された。
米自動車政策評議会(AAPC)のマット・ブラント会長は「USMCA法案の下院通過は、待望の21世紀の貿易協定の成立に向けた大きな一歩だ」と評価した。「北米の貿易相手国との近代化された貿易協定は、米国の自動車業界およびサプライチェーンの強化につながる」と語った。
米労働総同盟・産別会議(AFL・CIO)のリチャード・トラムカ会長はロイターとのインタビューで、民主党が譲歩を勝ち取った条項について評価しながらも、「完璧な合意とは言えない。まだ改善の余地がある」と述べ、過去のNAFTAによって失われた米国の雇用を取り戻すには8年から12年かかると語った。
反対票を投じたマーシー・カプター議員(オハイオ州選出)は声明を発表し、USMCAでは、NAFTAによってオハイオ州で失われた15万5000人の雇用は戻ってこないと批判。「トランプ大統領の貿易戦争で苦しんでいる小規模農家にも何の助けにもならず、メキシコの労働者を保護することにもならない」と述べた。
賛成票を投じたロン・カインド議員(ウィスコンシン州選出)は、USMCAによってカナダの乳製品市場への新たなアクセスが開かれたことを評価した。
<自動車、デジタル、為替>
新協定では、インターネット、デジタルサービス、電子商取引といったNAFTAが交渉された1990年代初めには存在しなかった業界の発展に向けた米国のモデルを保護する文言が追加された。米農産物に対する安全面での障壁も一部取り除かれたほか、為替操作を禁止する文言が初めて盛り込まれた。
また、北米で製造される自動車・トラックの現地調達率がNAFTAの62.5%から75%に引き上げられ、鉄鋼・アルミニウムの利用が新たに義務付けられた。
さらに現地調達分のうち40─45%は、時間当たり賃金が最低16ドルの工場で生産されることも規定した。
メキシコのエブラルド外相は法案の米下院通過後、「われわれは前進している。良いニュースだ」とツイッターに投稿した。
カナダのトルドー首相は、CBCテレビに対し、カナダの議会もUSMCA法案を「できるだけ迅速に」承認すると述べた。ただ、同国の議会は1月末まで招集されない。
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