[ワシントン 22日 ロイター] - トランプ氏が、既存の貿易協定を破棄するとともに米国の国際貿易関係を再構築すると宣言して大統領に就任してから3年目を迎えた。この間、同氏は実際にほぼ全ての主要貿易相手との関係見直しに向け、関税の発動や示唆、あるいは二国間協議などの手段を行使している。
そして中国との「第1段階」合意にこぎ着け、北米自由貿易協定(NAFTA)の改定に成功した同氏は今、欧州連合(EU)、EU離脱後の英国、インドに目を向けつつある。
米国の通商政策に関して、次に起こりそうな事態を以下にまとめた。
<対EU>
米国とEUは今なお、航空機補助金や貿易障壁、欧州諸国によるデジタル課税導入計画などを巡り意見が対立している。
トランプ氏は今週、米通商拡大法232条に基づいてEUからの輸入自動車に最大25%の関税を適用することを改めて示唆した。昨年11月、法令で定められたこの関税発動期限を迎えて何も動かなかったにもかかわらずだ。
ドイツの駐米大使は22日、米国が追加関税を導入すればEUも報復措置を講じると述べた。
一方フランスの外交筋は20日、米政府が24億ドル相当のフランス製品に最大100%の関税を掛けると脅すのをやめる代わりに、米国の大手IT企業に対する3%のデジタル課税を停止すると語った。
ムニューシン米財務長官は、世界経済フォーラム(WEF)年次会議(ダボス会議)で、イタリアと英国もデジタル課税を実施すれば米国の関税が発動されると警告した。
米国は既に欧州産のワインなどに25%、航空機に10%の関税を適用。補助金問題が解決しない場合は、これらの税率を引き上げ、課税対象も広げる姿勢を見せている。
<対英国>
昨年12月の英総選挙でジョンソン首相率いる与党・保守党が勝利して以来、トランプ氏は米国にとって第7位の貿易相手である英国との間で「大々的な」新貿易協定を締結すると約束している。しかし今週、米英間の溝が明らかになった。
トランプ氏とムニューシン氏が英国にデジタル課税を強行すれば関税を掛けると示唆したが、ジャビド英財務相は4月に同税を施行すると発言した。
ジャビド氏はダボス会議で、英国は米国よりもEUとの新たな貿易協定が「最優先課題」だと言い切った。
<対北米地域>
トランプ氏は数週間以内に、NAFTAを見直した米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)実施法案に署名する見通し。
メキシコは既に批准し、カナダのトルドー首相はできるだけ速やかに批准するよう議会に働き掛けている。ただカナダ野党の保守党は、合意内容を詳しく検討するためにより多くの時間をかけたい考えだ。
<対インド>
米国は昨年6月、インドを一般特恵関税制度(GSP)対象国から外した。インドが新たに導入した電子商取引関連の貿易障壁を巡る紛争が原因で、約56億ドル相当の米国向けインド輸出製品が影響を受ける。
両国は昨年9月に限定的な貿易協定をまとめることを希望していたが、米農産品への関税やインドの医薬品認可スケジュールの問題で協議は決裂した。
2月に予定されるトランプ氏のインド訪問を前に、両国の議論が再び白熱化してきた。
トランプ氏と安倍晋三首相は昨年9月、米農産品や日本の工作機械などの関税を引き下げ、米国が輸入自動車関税を先送りすることなどを盛り込んだ貿易協定の合意文書に署名した。両国は今後、自動車分野の課題に取り組むことになり、4月からその協議が始まると見込まれている。
<対中国の第2段階>
米中は、中国の国家補助金など厄介な問題を「第2段階」として協議する。これに先立ち昨年12月には、中国が今後2年間で米国の製品やサービス2000億ドル相当を追加購入する交換条件として、米国は中国向けの一部関税を緩和した。
もっとも専門家は、今年11月の米大統領選前に新たな合意が成立するかどうか疑わしいとみている。