[ワシントン/ラマラ/ガザ 28日 ロイター] - トランプ米大統領は28日、イスラエルとパレスチナを巡る中東和平案を発表した。パレスチナに独立国家の建設を認めたものの、一定の条件付きで容認したうえ、ヨルダン川西岸のユダヤ人入植地でのイスラエルの主権を認めるなどイスラエル寄りの内容となったため、パレスチナ側からは即座に強い反発の声があがった。
ホワイトハウスで行われた発表には、イスラエルのネタニヤフ首相も同席した。トランプ氏は、数十年にわたる紛争を終結させるための和平案だと主張したが、発表の場にパレスチナ側が不在だったことは、トランプ氏の案がイスラエル寄りであることを浮き彫りにした。イスラエルとパレスチナが2014年に決裂した和平協議を即座に再開する可能性は低いとみられる。
パレスチナ自治政府との交渉が行われる間、イスラエル側は4年間、新たな入植活動を停止することに合意した。
トランプ氏は「イスラエルは今日、和平に向け大きな一歩を踏み出した」と評価した。ネタニヤフ首相は「トランプ氏は(ヨルダン川西岸の)ユダヤ・サマリア地区におけるイスラエルの主権を容認した最初の国際的指導者だ」と称え、和平案を受け入れる考えを示した。
<パレスチナ議長、中東和平案は「世紀の侮辱」>
トランプ氏は今回の提案で、パレスチナとイスラエルの「二国家共存」を条件付きながら認定。さらにパレスチナ国家の首都を「東エルサレム」に置くことを想定した。ただ、それは地域的に東エルサレムのごく一部にとどまる。パレスチナ側は、イスラム教、キリスト教、ユダヤ教それぞれの聖地を含めた東エルサレム全てを首都とみなす提案以外は拒絶している。
一方、トランプ氏はエルサレムの扱いを分断されないイスラエルの首都であることに変わりはないとしている。
パレスチナ自治政府のアッバス議長は28日、トランプ氏の中東和平案について「世紀の侮辱」だと激しく非難した。
ガザとヨルダン川西岸では数千人のパレスチナ人が米国に抗議の声を上げ、イスラム原理主義組織ハマスはトランプ氏の「攻撃的な」提案と断固対決すると表明するとともに、トランプ氏はエルサレムに関して「馬鹿げた内容」を口にしていると主張した。
<中東諸国からは反発と歓迎>
トルコの外務省は声明で和平案は「2国家共存の原則を葬り、パレスチナ人から土地を盗み取ろうとする計画だ」と批判し、支持しないと表明した。
イラン政府高官はツイッターへの投稿で「イスラエルと米国の間の合意で、パレスチナ側とのことは議題に挙がっていない。和平案ではなく、強制と制裁に関する計画だ」と強く非難した。
ヨルダン政府は、包括的で永続的な和平の達成に向けた唯一の道は、イスラエルが1967年に発生した中東戦争で得た土地の上にパレスチナ国家を建設し、首都を東エルサレムにすることだと発表した。サファディ外相は「ヨルダンは(関係する)人々が受け入れることができる公正で包括的な和平達成に向けた全ての取り組みを支持する」との声明を発表した。
一方、アラブ首長国連邦(UAE)は「交渉再開に向けた重要な出発点」と評価。サウジアラビアやエジプトなどもからも和平案を歓迎する声があがっている。