[シドニー 5日 ロイター] - オーストラリア準備銀行(RBA、中央銀行)のロウ総裁は5日の講演で、失業率が上昇し、インフレ率の押し上げもできない場合には、利下げが正当化されるとの見方を示し、事実上、追加利下げのバーを上げた。
豪失業率は12月に5.1%に低下、直近のデータではインフレ率の上昇が示されていることから、足元では利下げの必要性は低そうだ。
ロウ総裁は、記者団の質問に「金利が下がる可能性はあるが、そうならないことを望む」と語った。
豪中銀は4日、政策金利のオフィシャルキャッシュレートを過去最低の0.75%に据え置いた。市場では大規模な森林火災や中国で発生した新型コロナウイルスによる影響に懸念があるものの、中銀は強気の成長率見通しを変えなかった。
総裁は金利について「安定期間を持つ可能性がある」とし、中立な政策運営スタンスを示唆した。
発言を受けて、追加利下げ観測が後退。金融先物<0#YIB:>では、これまで6月と想定していた次の25bp利下げ時期が8月に後ずれし、年内あともう1回利下げがある可能性は20%に低下した。
ANZのエコノミスト、デビッド・プランク氏は「政策金利を過去最低まで下げたRBAは、失業率をより急ピッチで下げるために追加措置をとるのでなく、忍耐強い姿勢に戻ってしまったようだ」と述べ、次の利下げ時期がかなり後ずれしたとの見方を示した。ただ、プランク氏自身は、森林火災や新型肺炎は経済の「かなりの下押し」要因だとして、4月利下げの予想を変えていない。
<メリットとリスクを勘案>
ロウ総裁は講演で、4日の金利決定について「追加利下げの利点と、超低金利に伴う一定のコストとリスクを照らした判断」を踏まえたものだと説明した。
追加利下げを行えば、債務を抱えた家計への支援になり、個人消費を促すことができるほか、豪ドル安によって輸出需要が高まり、雇用の下支えが可能になると指摘。
一方で、超低金利によって資産価格が膨張する可能性や、消費者信頼感の低下、住宅購入向けの借り入れ増加を招く恐れがあるとした。
ロウ総裁は、理事会として両面を「絶えず」注視していると言明。「失業率の傾向が誤った方向に向かい、インフレ目標に向かって一段の前進が見られなければ、議論のバランスは変化する」とし、「そうした場合、追加金融緩和が一段と正当化される」と述べた。
そのうえで「社会全体の利益のために適切なバランスを取るよう、労働市場などの動向を引き続き注意深く見守る」とした。
豪中銀は7日に四半期経済見通しを明らかにする。ロウ総裁は、見通しをまとめる上で森林火災や干ばつの影響を考慮したと述べた。
中銀は、森林火災が2019年第4・四半期から2020年第1・四半期に国内総生産(GDP)成長率を約0.2%ポイント押し下げると試算。
ただロウ総裁は、復興需要によって2020年全体のGDPはほとんど影響を受けないとの見通しを示した。
一方で、今年の農業生産は約10%減少し、GDP成長率を約0.25%ポイント押し下げると予想。「気象現象による経済への影響が重大であることを明確に示している」と警鐘を鳴らした。
さらに、中国で発生した新型コロナウイルスの感染拡大が見通しに新たな不透明感をもたらしているとしたうえで、全体的な影響を判断するのは時期尚早だと指摘。
今年と来年のGDP成長率見通しはそれぞれ2.75%と3%に据え置いた。
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