[ワシントン 8日 ロイター] - メキシコのロペスオブラドール大統領が8日、ホワイトハウスでトランプ米大統領と初めて会談した。表向きは米自由貿易協定(NAFTA)に代わる新協定「USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)」の発効を祝う首脳会談だが、両首脳は両国関係の明るい側面を強調した一方、経済や違法薬物、移民の分野における意見の相違についてほとんど触れなかった。
新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)を考慮し、両大統領は握手を避けたが、マスクはともに着用していなかった。
7月1日のUSMCA発効を祝う会合は当初2日間の予定だったが、米政府がカナダ製品への関税発動を検討していることなどからカナダのトルドー首相が出席を見合わせたため、1日に短縮された。
トランプ大統領はトルドー首相とは後で話すと語った。
トランプ大統領は4年前の選挙戦でメキシコからの移民を侮蔑する発言を繰り返し、メキシコ国境への壁設置を公約。昨年にはメキシコへの関税発動をちらつかせ、ロペスオブラドール政権に不法移民対策を強化させていた。
こうした経緯にもかかわらず、ロペスオブラドール大統領は会談で、トランプ氏を称賛。「われわれの主権を侵すようなことを一度も試みなかったことに深く感謝している。(メキシコを)植民地のように扱うことはなかった」とし、トランプ氏がメキシコに優しさと敬意をもって接してきたと米国民に伝えたい、と述べた。
トランプ氏は、ロペスオブラドール氏と今回署名した共同声明について、今後の両国の繁栄、安全保障、調和に向けた取り組みを約束するものだと語った。
関係者2人によると、ロペスオブラドール大統領が進めようとしているエネルギーインフラ分野での数十億ドル規模の契約再交渉に関し、民間企業がトランプ大統領に懸念を示すよう求めたもよう。
ロペスオブラドール政権は2013─14年に実施したエネルギー産業の開放を徐々に後退させ、政府が主導する形を選好。主要な契約の多くに疑問を投げかけている。
一方、米高官は6日夜、メキシコ政府がエネルギー産業での契約継続を確約したと述べた。
今回の米メキシコ首脳会談には、メキシコの大富豪カルロス・スリム氏などが参加。8日夜にはトランプ氏および米企業幹部とホワイトハウスで会食する。
ホワイトハウスによると、ロペスオブラドール氏を含むメキシコ代表団全員がトランプ氏との会談前に新型コロナ検査を受けた。
*内容を追加しました。