[ワシントン 8日 ロイター] - バイデン米大統領が住宅不足の解消を目指している。一戸建て住宅の建築のみが認められている地区でも集合住宅の建築を容認するよう地方政府に呼び掛け、手頃な価格の住宅を増やす方針だ。
対策の規模は50億ドル。バイデン大統領が提唱した2兆ドル規模のインフラ計画に盛り込まれている。
住宅建設を一戸建て住宅に制限する都市計画法を改正した地方政府に助成金を支給する仕組みだ。
都市計画法を巡っては、住宅価格の上昇や、都心部から郊外に無秩序に宅地が広がっていく「スプロール現象」、また人種間の分断の恒久化につながるといった批判が出ている。
左派系シンクタンク、センチュリー・ファンデーションの住宅専門家リチャード・カーレンバーグ氏は「極めて大きな前進だ。本当の意味で現在の体制を変える提案をした政治家は、これまで極めて少なかった」と述べた。
バイデン大統領のインフラ計画は議会で可決する必要があるが、共和党からは道路や橋の建設を重視していないといった批判が出ている。
米国では、黒人による白人居住区の不動産購入を禁止した法律を連邦最高裁が1917年に無効と判断。その後、地方政府の間では、多くの地区で最低敷地面積を定めたり、集合住宅の建設を禁止する都市計画法を制定する動きが広がった。
ペンシルベニア大学の調査によると、ニューヨークやサンフランシスコなど建築規制が特に厳しい都市では、2006年以降、政治的な影響力の大きい住宅所有者の圧力で、都市計画法の制定がさらに増えている。
一方、若い世代や公民権擁護団体、雇用主の圧力で、建築規制の緩和に動いている都市もある。ミネアポリスは、市内全域で部屋の狭い集合住宅の建設を許可。オレゴン州でもすべての都市部で同様の規制変更を行った。
バイデン大統領が提案した対策では、建築規制の緩和に同意した地方政府に対し、学校・道路・橋を建設するための補助金を支給する。
民主党のオバマ元大統領も、同様の対策を検討したが、支持は集まらなかった。トランプ前政権のカーソン住宅都市開発長官(当時)も建築規制の緩和を支持したが、具体的な対策は講じなかった。
トランプ前大統領自身は、建築規制を緩和すれば、犯罪が増え、住宅の価値が下がるとして、規制緩和に反対していた。
住宅の専門家は、バイデン大統領の提案を評価しているが、建築規制が特に厳しい裕福な都市に連邦政府からの助成金は必要なく、効果が限られる可能性があるとも指摘している。
バイデン大統領はすでに1兆9000億ドル規模の追加経済対策を成立させており、インフラ計画も2兆ドル規模と巨額だ。
オバマ政権で住宅問題の顧問を務めたアーバン・インスティテュートのマイケル・ステグマン氏は「巨額の資金が渦巻く中で、今回の対策がどのような結果になるのか、見守る必要がある」と述べた。