[ブリュッセル 20日 ロイター] - 世界貿易機関(WTO)のオコンジョイウェアラ事務局長は20日、新型コロナウイルスワクチンの分配を巡り、富裕国と貧困国の間の大きな供給格差を縮めるには特許権の一時放棄では不十分だとの見方を示した。欧州議会で発言した。
インドや南アフリカはWTO加盟国に対し、ワクチン生産量を増やすため特許権を放棄するよう提案している。貧困国は世界の人口の半分を占めるが、分配されるワクチンの量はわずか17%に過ぎない。
米国は先週、特許権放棄の支持に回ったが、欧州連合(EU)などは特許権を放棄しても生産量の増加にはつながらないとして反対の立場を取っている。
同事務局長は「ワクチンの入手が不公平であるという受け入れがたい問題を解決するためには、全体的な取り組みが必要だ。どちらか一方だけではない」と指摘。特許権の一時放棄だけでは不十分なことは明らかだ、と述べた。また、この問題を何年も引きずることはできないとし、迅速な対応を呼びかけた。
同事務局長は、開発途上国からライセンス取得の手続きが煩雑であり改善すべきとの声が上がっている点を指摘。さらに、パキスタンやバングラデシュ、インドネシア、タイ、セネガル、南アフリカに遊休設備があるとして、メーカーに生産量の拡大を呼び掛けた。技術やノウハウの移転も必要だとした。
その上で「われわれは途上国にワクチンへのアクセスと柔軟性を与えつつ、研究とイノベーションを保護する文書に合意できると確信している」と述べた。