[ソウル 30日 ロイター] - 韓国の尹錫悦大統領はスペインで開かれた北大西洋条約機構(NATO)首脳会議で、新たな対立と競争の時代の中で普遍的価値が脅かされていると警告した。ロシアのウクライナ侵攻と中国のロシアへの関与に言及したもの。政府高官が明らかにした。
韓国大統領のNATO首脳会議出席は初めて。
政府高官によると、尹氏は29日に行った演説で「競争と対立の新たな構造が形作られており、われわれが守ってきた普遍的な価値を否定する動きもある」と述べた。
ロシアと中国を名指しすることは避け、一国では解決できない複雑な安全保障上の脅威に国際社会は直面していると指摘した。
同高官は「尹氏はウクライナ戦争に言及した。他のほとんどの参加国と同様に、戦争に対するロシアの責任と国際社会における中国の責任について懸念を示した」と説明した。
首脳会議には韓国のほか日本、オーストラリア、ニュージーランド(NZ)がオブザーバーとして出席した。
同高官は「(これら4カ国の首脳は)それぞれのインド太平洋戦略を模索している」とし、「その中心には中国に対する懸念とさまざまなジレンマがある」と述べた。
NATOは29日の首脳会議で今後10年間の防衛・安全保障の指針となる新たな「戦略概念」を採択し、ウクライナ侵攻を続けるロシアを「直接の脅威」と位置づけた。さらに今回初めて中国について言及し、中国が「深刻な挑戦」を突き付けていると指摘した。
中国外務省の趙立堅報道官は30日の定例記者会見で、NATOの新戦略概念に断固として反対すると表明。NATOに対し「根拠のない非難や挑発的な発言」を直ちにやめるよう求めた。
「NATOの戦略概念文書は事実を無視し中国の外交政策の信頼性を傷つけ、中国の通常の軍事展開や国防政策を批判して対立をあおるものだ」と述べた。
日韓豪NZがNATO首脳会議に出席したことに関する質問には、異なる国同士が関係を発展させる中で第三者を標的にしたり、その利益を損なったりしてはならないと回答。「中国はNATOの動向を注視し、中国の利益を害する問題があれば静観しない」と述べた。