◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している「IPEF(インド太平洋経済枠組み)に対する中国の嘲笑的対米酷評と対日批判(1)【中国問題グローバル研究所】」の続きとなる。
●韓国の場合
5月23日の中国外交部における定例記者会見で、韓国の記者が「IPEFは開放性、包括性、透明性の原則に基づいており、特定の国を除外するものではありません。
ですから韓国はIPEFに参加していますが、しかし一方で、最大の貿易国であり隣国である中国との経済・技術協力を強化しています。
中国はこのことをどう思っていますか?」と質問している。
外交部報道官は「対立と分裂を招くような行動は適切ではありません」と、やや嘲笑的な表情で回答している。
●日本の場合
5月29日の共同通信の(※3)という論理を展開している。
他の多くの分析も参照しながら趣旨を書くと以下のようになる。
・IPEFは日中および地域の経済・貿易協力だけでなく、日米経済貿易協力や日本自身の景気回復にも深刻な悪影響を及ぼす。
・岸田政権は、日本が国連安保理常任理事国に加盟するのをアメリカが推薦してくれるなど、より多くの「安全保障」と引き換えに、中国の発展に対抗するための枠組みに協力している。
・岸田政権は「経済安全保障」強化を目的として経済安全保障大臣の新たなポストを創設したり、経済安全保障推進法を国会で可決させたりしているが、しかし、アメリカが提唱し支配するIPEFは、欧米のメディアからさえ、「市場開放も関税引き下げもしない」など、多くの側面から疑問が投げかけられている。
・岸田政権の、ワシントンとの「小さなサークル」への追随は、アジア太平洋地域の経済発展で形成されている日本の成果をさえ台無しにするだけでなく、日本自身の経済回復に深刻な悪影響を及ぼす。
・中国と日本は、世界第2位と第3位の経済大国として、APECやRCEPなどの地域経済協力メカニズムの重要なメンバーであり、アジアにおける2大経済大国(中国と日本)の政策と態度は、地域経済協力の有効性と見通しに大きな影響を与える。
・だというのに岸田政権は事実上、中国をターゲットとしたIPEFに自ら好んで組み込まれ日中協力を妨げおきながら、「経済的に中国と建設的な関係を構築していきたい」と言うことは、あまりに矛盾に満ち、中国の協力を得られると思っているのは計算違いだ(そうはいかない)。
・岸田政権は、経済「成長」と「分配」の良好な相互作用を実現する「新資本主義」開発コンセプトを提唱している。
しかし、日本は少子高齢化などの経済・社会問題に直面しており、財政・金融政策の余地は極めて限られているため、岸田政権が「新資本主義」の進展を図るには、対外経済協力、特に中国と米国の2つの重要な経済・貿易パートナーとの関係を適切に処理することが急務である。
それなしに「成長」と「分配」を目指す「新資本主義」の達成など絶対にありえない。
日本は自ら好んで自分の首を絞める道を選んでいる。
(引用はここまで)
◆ASEANを含めた中小国に「米中どちらを選ぶか」という「踏み絵」を強制するな
日米がいま必死になってやっているのは、中露を除いた世界各国に「米中どちらを選ぶか」という「踏み絵」を強要していることだと、中国側は批判している。
たとえば日本の外務省がASEAN諸国に対して行った世論論調査(※4)で、以下のような2021年度の結果が出ている。
「日米中」3ヵ国にだけ注目して示す。
Q1:あなたの国にとって、現在重要なパートナーは次の国・機関のうちどの国・機関ですか?
1位:中国 56%
2位:日本 50%
3位:アメリカ 45%
Q2:あなたの国にとって、今後需要なパートナーとなるのは次の国・機関のうちどの国・機関ですか?
1位:中国 48%
2位:日本 43%
3位:アメリカ 41%
一般に日本が調査した場合は、日本にやや好意的な選択をする傾向にあるが、日本の外務省が調査したというのに、中国がトップであることが、中国にとっては嬉しくてならないようだ。
そこで中国では、ASEANを含めた中小国家に「日米どちらかを選べ」というような残酷な選択を迫るものではないと批判が噴出している。
以上、今回は、あくまでも中国が、日米が一丸となって推し進めているIPEFに関する中国の反応のみにテーマを絞り、現状をご紹介した。
私見を述べるなら、拙著『ウクライナ戦争における中国の対ロシア戦略』の第二章に書いたように、全世界で中国を最大貿易国としている国の数は、2018年統計で190ヵ国のうち「128ヵ国」で、アメリカは「62ヵ国」に過ぎない。
その点から見ると、「中国を締め出すための経済協力機構」の構築の難度は高いのではないかと危惧する。
写真: AP/アフロ
(※1)https://grici.or.jp/
(※2https://news.yahoo.co.jp/articles/f39dc39bd9a7b27aa180112d17a4422a619a22a7
(※3)https://opinion.huanqiu.com/article/4895Can4tt0
(※4)https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100348514.pdf
<FA>
●韓国の場合
5月23日の中国外交部における定例記者会見で、韓国の記者が「IPEFは開放性、包括性、透明性の原則に基づいており、特定の国を除外するものではありません。
ですから韓国はIPEFに参加していますが、しかし一方で、最大の貿易国であり隣国である中国との経済・技術協力を強化しています。
中国はこのことをどう思っていますか?」と質問している。
外交部報道官は「対立と分裂を招くような行動は適切ではありません」と、やや嘲笑的な表情で回答している。
●日本の場合
5月29日の共同通信の(※3)という論理を展開している。
他の多くの分析も参照しながら趣旨を書くと以下のようになる。
・IPEFは日中および地域の経済・貿易協力だけでなく、日米経済貿易協力や日本自身の景気回復にも深刻な悪影響を及ぼす。
・岸田政権は、日本が国連安保理常任理事国に加盟するのをアメリカが推薦してくれるなど、より多くの「安全保障」と引き換えに、中国の発展に対抗するための枠組みに協力している。
・岸田政権は「経済安全保障」強化を目的として経済安全保障大臣の新たなポストを創設したり、経済安全保障推進法を国会で可決させたりしているが、しかし、アメリカが提唱し支配するIPEFは、欧米のメディアからさえ、「市場開放も関税引き下げもしない」など、多くの側面から疑問が投げかけられている。
・岸田政権の、ワシントンとの「小さなサークル」への追随は、アジア太平洋地域の経済発展で形成されている日本の成果をさえ台無しにするだけでなく、日本自身の経済回復に深刻な悪影響を及ぼす。
・中国と日本は、世界第2位と第3位の経済大国として、APECやRCEPなどの地域経済協力メカニズムの重要なメンバーであり、アジアにおける2大経済大国(中国と日本)の政策と態度は、地域経済協力の有効性と見通しに大きな影響を与える。
・だというのに岸田政権は事実上、中国をターゲットとしたIPEFに自ら好んで組み込まれ日中協力を妨げおきながら、「経済的に中国と建設的な関係を構築していきたい」と言うことは、あまりに矛盾に満ち、中国の協力を得られると思っているのは計算違いだ(そうはいかない)。
・岸田政権は、経済「成長」と「分配」の良好な相互作用を実現する「新資本主義」開発コンセプトを提唱している。
しかし、日本は少子高齢化などの経済・社会問題に直面しており、財政・金融政策の余地は極めて限られているため、岸田政権が「新資本主義」の進展を図るには、対外経済協力、特に中国と米国の2つの重要な経済・貿易パートナーとの関係を適切に処理することが急務である。
それなしに「成長」と「分配」を目指す「新資本主義」の達成など絶対にありえない。
日本は自ら好んで自分の首を絞める道を選んでいる。
(引用はここまで)
◆ASEANを含めた中小国に「米中どちらを選ぶか」という「踏み絵」を強制するな
日米がいま必死になってやっているのは、中露を除いた世界各国に「米中どちらを選ぶか」という「踏み絵」を強要していることだと、中国側は批判している。
たとえば日本の外務省がASEAN諸国に対して行った世論論調査(※4)で、以下のような2021年度の結果が出ている。
「日米中」3ヵ国にだけ注目して示す。
Q1:あなたの国にとって、現在重要なパートナーは次の国・機関のうちどの国・機関ですか?
1位:中国 56%
2位:日本 50%
3位:アメリカ 45%
Q2:あなたの国にとって、今後需要なパートナーとなるのは次の国・機関のうちどの国・機関ですか?
1位:中国 48%
2位:日本 43%
3位:アメリカ 41%
一般に日本が調査した場合は、日本にやや好意的な選択をする傾向にあるが、日本の外務省が調査したというのに、中国がトップであることが、中国にとっては嬉しくてならないようだ。
そこで中国では、ASEANを含めた中小国家に「日米どちらかを選べ」というような残酷な選択を迫るものではないと批判が噴出している。
以上、今回は、あくまでも中国が、日米が一丸となって推し進めているIPEFに関する中国の反応のみにテーマを絞り、現状をご紹介した。
私見を述べるなら、拙著『ウクライナ戦争における中国の対ロシア戦略』の第二章に書いたように、全世界で中国を最大貿易国としている国の数は、2018年統計で190ヵ国のうち「128ヵ国」で、アメリカは「62ヵ国」に過ぎない。
その点から見ると、「中国を締め出すための経済協力機構」の構築の難度は高いのではないかと危惧する。
写真: AP/アフロ
(※1)https://grici.or.jp/
(※2https://news.yahoo.co.jp/articles/f39dc39bd9a7b27aa180112d17a4422a619a22a7
(※3)https://opinion.huanqiu.com/article/4895Can4tt0
(※4)https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100348514.pdf
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