■要約
EMシステムズ (T:4820)は、薬局向けシステム(レセプトコンピュータ)を軸に、クリニック向け医科システム(会計、電子カルテ)、介護事業者支援システムを扱うITサービス企業である。
主力事業である薬局向けシステムは国内シェアの約30%強を占め、業界のリーディングカンパニーとなっている。
2006年に医科システム、2016年に介護システムと領域を広げ、調剤・医療・介護の連携を実現するオンリーワン企業としてEHR(Electronic Health Record:医療情報の連携)の実現を目指している。
1. 事業概要
主力事業は売上の約8割を占める薬局向け医療事務処理コンピュータシステムの開発・販売である。
他社に先駆け、低い初期費用と月々の利用料支払い、という料金プランに基づくストック型ビジネスモデルに転換したことで価格競争力を強め、薬局向けシステム市場におけるリーディングカンパニーの地位を不動のものにしている。
主力商品には「Recepty NEXT」シリーズ、「ぶんぎょうめいと」シリーズなどがある。
医科システム事業は2006年にOEM製品制作により参入したが、現在は自社製品の診療所・クリニック向けの医療事務処理コンピュータシステムや電子カルテシステムが中心となっている。
主力製品にはクリニック・無床診療所向けの医事会計融合型電子カルテシステム(「MRN (Medical Recepty NEXT)カルテスタイル」)及び医事会計システム(「MRNクラークスタイル」、「ユニメディカル」)などがある。
介護向けシステムは2016年10月にリリースした介護サービス事業者支援システム「つながるケアNEXT」の拡販やこれら以外の事業全般を行っている。
なお、2017年3月に医療介護連携ソリューション「ひろがるケアネット」をリリースし、調剤・医療・介護の3つを連携できるオンリーワン企業としての優位性をより高めている。
2. 2017年3月期業績及び2018年3月期見通し
2017 年3 月期の業績は売上高 13,676百万円(前期比 3.6%増、計画比 1.6%減)、営業利益2,597百万円(前期比39.5%増、計画比26.7%増)、経常利益3,163百万円(前期比29.3%増、計画比24.0%増)、親会社株主に帰属する当期純利益2,116百万円(前期比30.5%増、計画比 26.0%増)であった。
主力事業の調剤システムで、Windows Vistaのサポート切れに伴うハードウェア入替需要、課金売上の積み上がりがあったことに加え、医科システムで「MRN(Medical Recepty NEXT)」の販売増加やユーザ数増加を要因とした課金売上増加の黒字化により、過去最高の業績となった。
なお、2018年3月期計画は、ハードウェア入替需要の落ち着きや、2018年4月の介護報酬・診療報酬の同時改定による投資マインドの冷え込みなどを加味して保守的に見て、売上高13,835百万円(前期比1.2%増)、営業利益2,600百万円(前期比0.1%増)としている。
3. 今後の見通し
2018年4月の介護報酬・診療報酬の同時改定で主力ユーザーである薬局の経営環境が一段と厳しくなり、それにつれてシステム事業者も厳しい状況に置かれることを想定されるが、同社ではこれをビジネスチャンスと捉えている。
医科システム事業の黒字化、2017年1月に実施した薬局向けシステムの利用料の値下げによる長期利用の促進などで、収益基盤の盤石化が進んでいる。
加えて、2017年3月にクリニック・薬局・介護サービス向けシステム「ひろがるケアネット」をリリースするなど、医療(薬局・クリニック)と介護間の情報共有による地域包括ケアの実現に向けて着実に前進しており、今後それぞれの事業での同社のシェア拡大が見込まれる。
■Key Points
・2017年3月期はハードウェア入替や医科システム事業黒字化で過去最高業績達成
・2018年4月の介護報酬・診療報酬同時改定をにらみ、2018年3月期はわずかな増収増益を
見込む
・調剤・医科・介護の情報連携可能なオンリーワン企業の強みを生かしシェア拡大を狙う
(執筆:フィスコ客員アナリスト 内山 崇行)
EMシステムズ (T:4820)は、薬局向けシステム(レセプトコンピュータ)を軸に、クリニック向け医科システム(会計、電子カルテ)、介護事業者支援システムを扱うITサービス企業である。
主力事業である薬局向けシステムは国内シェアの約30%強を占め、業界のリーディングカンパニーとなっている。
2006年に医科システム、2016年に介護システムと領域を広げ、調剤・医療・介護の連携を実現するオンリーワン企業としてEHR(Electronic Health Record:医療情報の連携)の実現を目指している。
1. 事業概要
主力事業は売上の約8割を占める薬局向け医療事務処理コンピュータシステムの開発・販売である。
他社に先駆け、低い初期費用と月々の利用料支払い、という料金プランに基づくストック型ビジネスモデルに転換したことで価格競争力を強め、薬局向けシステム市場におけるリーディングカンパニーの地位を不動のものにしている。
主力商品には「Recepty NEXT」シリーズ、「ぶんぎょうめいと」シリーズなどがある。
医科システム事業は2006年にOEM製品制作により参入したが、現在は自社製品の診療所・クリニック向けの医療事務処理コンピュータシステムや電子カルテシステムが中心となっている。
主力製品にはクリニック・無床診療所向けの医事会計融合型電子カルテシステム(「MRN (Medical Recepty NEXT)カルテスタイル」)及び医事会計システム(「MRNクラークスタイル」、「ユニメディカル」)などがある。
介護向けシステムは2016年10月にリリースした介護サービス事業者支援システム「つながるケアNEXT」の拡販やこれら以外の事業全般を行っている。
なお、2017年3月に医療介護連携ソリューション「ひろがるケアネット」をリリースし、調剤・医療・介護の3つを連携できるオンリーワン企業としての優位性をより高めている。
2. 2017年3月期業績及び2018年3月期見通し
2017 年3 月期の業績は売上高 13,676百万円(前期比 3.6%増、計画比 1.6%減)、営業利益2,597百万円(前期比39.5%増、計画比26.7%増)、経常利益3,163百万円(前期比29.3%増、計画比24.0%増)、親会社株主に帰属する当期純利益2,116百万円(前期比30.5%増、計画比 26.0%増)であった。
主力事業の調剤システムで、Windows Vistaのサポート切れに伴うハードウェア入替需要、課金売上の積み上がりがあったことに加え、医科システムで「MRN(Medical Recepty NEXT)」の販売増加やユーザ数増加を要因とした課金売上増加の黒字化により、過去最高の業績となった。
なお、2018年3月期計画は、ハードウェア入替需要の落ち着きや、2018年4月の介護報酬・診療報酬の同時改定による投資マインドの冷え込みなどを加味して保守的に見て、売上高13,835百万円(前期比1.2%増)、営業利益2,600百万円(前期比0.1%増)としている。
3. 今後の見通し
2018年4月の介護報酬・診療報酬の同時改定で主力ユーザーである薬局の経営環境が一段と厳しくなり、それにつれてシステム事業者も厳しい状況に置かれることを想定されるが、同社ではこれをビジネスチャンスと捉えている。
医科システム事業の黒字化、2017年1月に実施した薬局向けシステムの利用料の値下げによる長期利用の促進などで、収益基盤の盤石化が進んでいる。
加えて、2017年3月にクリニック・薬局・介護サービス向けシステム「ひろがるケアネット」をリリースするなど、医療(薬局・クリニック)と介護間の情報共有による地域包括ケアの実現に向けて着実に前進しており、今後それぞれの事業での同社のシェア拡大が見込まれる。
■Key Points
・2017年3月期はハードウェア入替や医科システム事業黒字化で過去最高業績達成
・2018年4月の介護報酬・診療報酬同時改定をにらみ、2018年3月期はわずかな増収増益を
見込む
・調剤・医科・介護の情報連携可能なオンリーワン企業の強みを生かしシェア拡大を狙う
(執筆:フィスコ客員アナリスト 内山 崇行)