イエレン米連邦準備理事会(FRB)議長は24日、上院の銀行委員会で半期に1度の議会証言に臨んだ。今回の証言のポイントを簡単にまとめると次の4つとなろう。①フォワードガイダンスとして用いている「辛抱強くなれる(be patient)」の文言が削除されてもそれがその後2回の会合での利上げを意味するわけでなく、②また今後数回における会合で利上げを正当化する公算が小さくなっている、と指摘。③さらに賃金の伸びは未だ低い水準であり(wage growth is still sluggish)、④短期的には原油安による低インフレリスクが存在している。
マーケットの過剰反応を警戒し「フォワードガイダンスの変更≠その後2回の会合での利上げ」ではないことを強調し(①)、且つこれまで「今年4月」のFOMC会合までは利上げに踏み切ることはないとの見解を示してきたが、今回の証言ではその期間が「今後数回」の会合へと変化した点は(②)、イエレンFRBが直近の冴えない指標データや米国外の政治/経済情勢を理由にハト派スタンスへ転じていることを示唆している。
また、注視すべきは1月の雇用統計で賃金の伸びが確認されて尚、その伸び率が低い水準にとどまっているとの見解を示したことだろう(③)。賃金の上昇は低インフレ状態(④)から脱却するための重要なファクターであるが、この点について「著しく加速したとまだ判断していない」と言及してきたことも鑑みるに、米6月利上げの可能性は後退したと言える。
肝心の米国マーケットの反応だが、ハト派寄りのイエレン証言を背景に「株高・金利低下・ドル売り」となった。この反応自体は昨日のレポートで指摘した通り想定の範囲内である。焦点は今後の動向だが、日欧をはじめとした各国中銀が緩和スタンスを鮮明にする中、イエレンFRBまでがハト派スタンスへ転じたことで、目先、流動性相場を背景にグローバル株式市場は堅調に推移しよう。外為市場では短期的にドル高修正局面が訪れ、それに伴い資源国通貨や新興国通貨が対ドルで堅調に推移する可能性が高いだろう。円相場は株式動向に左右される状況が継続しよう。下記で述べるようにクロス円の動向がトレンドを左右しよう。
ただ、超低金利政策を長期間にわたり継続させるリスクを指摘し、また原油安は最終的に米経済(個人消費)にとってプラスとの認識を示している点を鑑みるに、イエレンFRBが緩和の「出口」に一番近いポジションにいることに変わりはない。よって、金融政策のコントラストを背景とした中長期スパンでのドル高トレンドの見通しに変更はない。
<テクニカル分析コメント -EUR/JPY、トライアングルの攻防>
レジスタンス
・135.54:トライアングル上限
・135.15:10日MA(緑ライン)
・135.00:レジスンタスポイント
・134.89:一目/転換線(黄ライン)
サポート
・134.50:サポートポイント
・134.00:トライアングル下限&ビッド
・133.85:一目/基準線(赤ライン)
・133.55:2月20日安値
・133.50:ビッド
ドル円同様、ユーロ円もトライアングルでの攻防が続いている。気になるのは一目/遅行線(青ライン)が26日前のローソク足以下の水準で推移していること、そして昨日長い上ヒゲが示現し、トライアングル上限が強固なレジスタンスラインとして意識されていることだろう。これは現在の株高トレンドに円売りトレンドが追随出来ていない点を示唆している。その背景として考えられるのは、日銀による「異次元緩和」の優勢が後退していることだろう。
ただ、イエレンFRBのハト派スタンスが確認されたこと、原油価格の底打ち感が強まってきたことそして一時的にせよギリシャリスクが後退している点を鑑みるに、グローバル株式市場は目先堅調に推移する可能性が高まってきた。よって、株高を背景にEUR/JPYが大きく崩れることも想定し難い(トライアングル下限を一気に下方ブレイクする展開は想定し難い)。目先はトライアングル内での攻防が継続したまま、株高トレンドがさらに鮮明になるに連れて、リトレースメント38.20%レベルをトライすると想定している。