2018年に入り、仮想通貨の価格は軒並み下落したが、ICO(イニシャル・コイン・オファリング)の勢いはいまだ衰えていない。CoinSceduleの分析によると18年で既に546件のICOがあり、計12億ドル以上の資金が調達された。
多くの人にとって、デジタル通貨のマーケットは依然として魅力的だ。初期のICOに投資し、次のビットコインになるかもしれないプロジェクトに投資できるチャンスは、多くの投資家を引き付けるものだ。例えば、 IOTA、 Ethereum、 NEOの初期ICOに投資した投資家は、それぞれ271,333%、150,343%、124,161%という大きな利益を手にした。
しかし、仮想通貨分野は世界的に法整備の途上であり、投資家の保護の在り方は発行主体がどこの国に属しているかで異なる状況だ。
仮想通貨市場が成熟するにつれて、投資家は詐欺だけでなく、多くの予期しない影響を受けるだろう。例えば、仮想通貨の発行主体の内部での争いから、ディベロッパーが途中でプロジェクトを放棄してしまうようなものまで、様々だ。
詐欺的なプロジェクトがはびこる中で、投資家はICOの詐欺に対して明確にする方法があるだろうか?
「最もよいICOは伝統的なベンチャー投資と非常によく似たものになっている」と、 Crypto Finance Conferenceのアンドレア・フランコ・ストーアCEOは語る。実際に仮想通貨業界は、ストーア氏が指摘するように、ベンチャー投資の方法が使われている。
SECやほかの規制機関が法的整備がなかなか進まない中、CoinlistやICODropsのようなプラットフォームは、詳しい情報や透明性、ICOの評価を提供し、最も合理的な方法で資金調達を可能にしている。
また、有名なベンチャーキャピタルは、管理され、分野に特化したファンドを通じ、個人投資家に対してスムーズにICOに参加できるようにしている。
先週、有名なシリコンバレーのベンチャー企業のAndreessen Horowitzは「a16z crypto」をという仮想通貨関連企業に投資する3億ドル規模のファンド立ち上げた。投資の対象は初期段階にあるプロジェクトから、ビットコインやイーサリアムのような既に開発の進んでいるものまで幅広く投資をしていく。ストーア氏は次のように述べた。
「このような場合、個人投資家は、コンプライアンスについて心配したり、デューデリジェンスに数カ月を費やす必要ない。そして、このような仮想通貨関連のファンドは伝統的なベンチャー投資に近いと言える。このような仮想通貨関連のファンドは一般的により高い流動性を持っており、有名企業のいくつかはそういったトークンを長期的に保有する予定である」
KYC(顧客確認) and AML(アンチマネーロンダリング)
ICOの世界では、本人確認(KYC)とアンチマネーロンダリング(AML)の2つが大きなテーマとなっている。仮想通貨コミュニティでは、どのようにこの問題に対処しているのだろうか?
Coefficient Venturesの創設者であるチャンス・ドゥ氏によると、KYCまたはAMLの問題を解決する適切な方法は、海外に法人を設立・投機することだと述べる。米国と中国では、ICOへの投資が厳しく制限されているためだ。
Smart Containers GroupのCEO リチャード・エトル氏は、KYCとAMLは現在のICOにとってスタンダードになりつつうあると述べる。エトル氏は、自社を例に挙げ、次のように語っている。
「スイスの企業としてSmart Containers Groupは、他社と比べてミニマム・スタンダードを非常に高く設定している。Smart Containers GroupのICOではコンプライアンスでスタンダードを作り、すべての投資家に適用したいと考えている。これによりICOは、KYCやAMLの確認に伴い、より複雑となり、コストがかかるものになるだろう。これにより、最小投資額は500ドルからとなっている。KYC/AMLの簡易版を作ることができれば、1000ドルかの投資にとって便利なものとなると考えている」
しかし、ICOの精査を万全にしたとしても、必ずしも十分ではなない。他のすべての投資と同様に、投資家は自分の投資に責任を持たなければいけない。
GECKOガバナンス社の共同設立者兼CEOであるシェーン・ブレット氏は、ICOに参加する前に、投資家はプロジェクトのあらゆる側面を慎重に検討しなければならないと指摘する。
投資する上での確認すべき項目は、プロジェクトチーム、 ICOで得られた資金の使い道、 AML / KYC要件、プロジェクト全体のロードマップなどだ。
「このような新しい業界には、伝統的なファイナンスのように、多くのブローカー(取扱う証券会社や取引所)や投資アドバイザーがいないため、投資については非常に慎重な検討が必要です。しかし、これは、投資家自身が取り組む量にはかなりの手間がかかる」
ICOの信用問題を探るには
Orviumの共同創設者で、アプリケーションおよびクラウド技術の専門家であるロベルト・ロバスコ氏は、信頼性を確立することは決して容易ではないが、妥当性を証明する方法はいくつかあると話す。「(ICOで信頼できるかを判断する際)誰でも簡単にプロジェクト創設者のプロフィールや、ネットワーク、出版物、専門性を簡単にチェックできるだろう」とロバスコ氏は指摘する。
「規制当局は最近、取引所に対してKYCやAMLを強く求めるようになっている。そのため、関連するサービスを提供する企業は大きく成長するとみている」と語る。
最近 Facebookが仮想通貨関連の広告を許可する方針へと転換した。これはKYCを通して事前承認された仮想通貨企業に向けたものだ。これは、仮想通貨にとって上げ材料になった。
一方、ICOの広告についてはいまだにフェイスブックは禁止を継続している。ロバスコ氏は「(ICO)プロジェクト創設者らは、自らの信頼性と有効性を知らしめ、ICO広告禁止を取り下げる役割を果たすべきだ」としている。また、ロバスコ氏は、仮にフェイスブックがガイドラインを変更すれば、他の大手ソーシャルメディアにも波及するだろうとみている。
しかし、ブロックチェーンを活用したロイヤリティ・エコシステムqiibeeの共同設立者であるジャルーカ・ジャンコラ氏は、新しい仮想通貨もまた、誇大広告で投資家を引き付けようとしていると話す。情報弱者で、自分の持っているコインをパンプさせてっとり早く設けたいと思っているような投資家たちだ。ジャンコラ氏はファンダメンタルに注意を払うべきだと強調する。
前述したことのほかに、取引量や流動性、参加したICOを簡単にエグジット(利確)できるかどうかなどを把握することだ。
また、どこの取引所でトレードできるようになるか、そしてその取引所リスクを知ることも大事です。
ICOプロジェクトの創設者たちはだれか?
いかなる内部での争いがあるものだが、スタートアップでは特にそれが顕著だ。Coefficient Venturesの創設者チャンス・ドゥー氏は「仮想通貨に投資するときは、そのチームの背後にいる創設者たちを確認することが重要だ。投資家は、創設者らがそのプロジェクトに何年間携わっているかを確認するべきだ」と述べた。また、創設者らやプロジェクトが新しく組織された場合、良からぬ事態が起こる可能性が非常に高いと言えるだろう。
「資金調達が完了する前に、設立チームが分裂してしまったICOを見たことがある。ICOの基盤が不安定な場合、プロジェクト自体に大きな問題があり、それは明らかに投資に影響する」
WatermelonBlockの創設者兼ディレクター、エリオット・ロスフィールド氏は、仮想通貨市場を取り巻く現在のセンチメントは懐疑的であり、多くの投資家が参加することを躊躇していると語る。しかし、ロスフィールド氏は、この状況をポジティブな視点から捉え直すこともできると指摘する。
ロスフィールド氏は、投資家は詐欺的なプロジェクトに細心の注意を払う必要があると話す。他のことでもいえることだが、よりリサーチに時間をかけて投資すれば、より深く理解できるようになるだろう。
デューデリジェンスの質と深さは、成功の重要な要素だ。GAMB社のシニアアドバイザーであるフェリックス・ホルトジナー氏は、規制機関が仮想通貨業界の適正なエコシステムを定義しようとしている上で、KYCやAMLのようなプロセスは仮想通貨プロジェクトで非常に大事であると語る。
「いずれの場合でも、ICO参加者は、伝統的な資産クラスと同様、デューデリジェンスを行うべきである。規制の枠組みがルールを形成し、次第に仮想通貨業界がプロフェッショナルな市場になっていくだろう」
と、ホルトジナー氏は強調した。