米ドルは上昇しているが、豪ドルは苦境に陥っている。 ドルは今週前半の下落の後で、木曜日に反発している。また、米中間の貿易協議は何も進展はなく、160億相当の商品に対し追加関税を課した。
これにより、注目は連邦準備理事会(FRB)によるジャクソンホール会議に移っている。この会議は木曜日の夜から3日間続き、メインの講演は金曜日に行われる。パウエル議長の講演は午後11時頃に行われる。これはパウエル議長にとって、議長として初めての講演である。カナダ銀行のポロズ総裁 は出席、日銀の黒田総裁は欠席、イングランド銀行のカーニー総裁の出欠は伝えられていない。
パウエル議長の講演で注目の3点:
1.トランプ大統領のコメントに対し答えるか
2.貿易摩擦の緊張度合について
3.9月以降、金融引き締めを抑える可能性について
今週初めにトランプ大統領が金融引き締めに対し嘆いたことにより、ドルは下落した。トランプ大統領がFRB議長について批判したことは初めてではない。また、これからもこのような批判が出る可能性はあるだろう。
パウエル議長にとってトランプ大統領のコメントに対し最良の手は放っておくことだろう。もし、トランプ大統領に従うしかないのなら、それは中央銀行としての独立性を失ってしまう。よって、答えは返答しないことだ。
FRBは金利引き上げに対しスローダウンすると見られているが、これは大統領の圧力をうけることになるだろう。また、パウエル議長は、停滞する貿易や世界経済について述べることが多くあるだろう。
ジャクソンホール会議に先駆け発表されたFOMC議事録によると、政治家は貿易、住宅、新興市場に対し懸念があるとされている。もし、パウエル議長がこれらの懸念に対し米国経済の見通しに影響があると言及したら、ドルは下落するだろう。投資家は、FRBの金融引き締めがスローダウンするかどうかを知りたがっている。成長を低迷させるだけでなく、イールドカーブが逆転するリスクがあり、それはビジネスや政治家にとって問題である。
FRBが9月に利上げを行うことは不思議なことではないが、もしパウエル議長がジャクソンホール会議をこれらの方針を変えることを話し始める場となるなら、市場やドルへの影響はとても大きいだろう。もし、パウエル議長が新しい方針を何も出さないのなら、USD/JPYは111.50まで上昇し、 EUR/USDは1.15まで下落するとみられる。
欧州中央銀行のマリオ・ドラギ やカナダ銀行のカーニー総裁はジャクソンホール会議に出席するかはいまだに分かっていないが、カーニー総裁の講演は注目するすべきだ。カナダ銀行は今年中に利上げをするとみられ、カーニー総裁はジャクソンホール会議をこの金融引き締めについて語る可能性がある。カナダの経済指標は好調だが、カナダ銀行は貿易摩擦の懸念により利上げに至っていない。これらの理由により、金曜に カナダドルは動くと見られている。
一方、政治的混乱が オーストラリアドルに影響を与え、1%以上の下落が起こっている。閣僚10人が辞意を表明し、ターンブル首相の辞任観測が強まっている。ボリス・シュロスバーグ氏によると、オーストラリア政府は、中国のファーウェイ-Huawei (SZ:002502)とZTEを5G設備で締め出すと伝えた。このニュースは明らかにオーストラリアと中国の関係を悪化させ、オーストラリアドルに圧力が加わる悪材料だろう。豪ドル/米ドル(AUD/USD)は0.73を下回り、0.72を試している。ニュージーランドドルは豪ドルとともに下落し、66セントを下回ろうとしている。
米ドルの上昇は、ユーロとポンドを下落させた。ユーロは、ドイツ連邦銀行のイェンス・ヴァイトマン総裁のコメントや、良い経済指標のおかげで下落は限定的になった。8月のユーロ圏の経済活動は、PMIの結果を見る限り加速している。これらは特にサービスセクターの増加によって牽引されている。
また、ドイツ総合PMIは2月以来最も好調だ。しかし、製造業 セクターは貿易摩擦の圧力を受け始めている。ヴァイトマン総裁はドラギ総裁の成功の立役者だと知られており、正当化政策の必要性を語っている。ヴァイトマン総裁はドイツ経済は順風満帆であり、量的緩和政策に終わらせる時期であると語っている。
ポンドは下落する主な要因はないが、20日間の移動平均である1.29の水準を超えることができず1.2700となった。