原油では、サウジアラビアの石油相が決定権を持っていると言っていいだろう。火曜日、サウジアラビアで3年半石油相を務めるKhalid al-Falih氏(以後、ファリハ石油相)が、米国によるイラン制裁が始まったら原油の最小供給量を満たせるように原油を増産することを明言した。
ファリハ石油相は、サウジアラビアは1日あたり100万バレルから200万バレルの原油を増産する可能性を示している。これはイランの原油生産のピークであった5月の一日あたり271万バレルの1/4~3/4にあたる。
もし更にサウジアラビアの原油増産が発言されたり、ロシアと米国が予想されているように原油生産量が増加するようであれば、イラン制裁による影響はもっと薄れることになるだろう。
サウジ石油相の発言は3ヶ月間で最大の下落を招いた
サウジアラビアの増産の発言によって、同日に5%近く下落が起こっている。これは3ヶ月間でもっとも大きな日次下落幅であった。これは石油国であるサウジアラビアにとっては良くないことであり、ファリハ石油相も不本意だったかもしれない。
しかし、ファリハ石油相の原油に対する発言力と権力は、9月にトランプ米大統領が4年来の高値になっている原油価格を下げるための原油増産要求を拒否した事実に顕著に現れている。
中間選挙を控えるトランプ米大統領は当時、サウジアラビア率いるOPECに対して、原油価格を上昇させることによって世界から「搾取している」と非難した。
トランプ米大統領は、サウジアラビアが主導権を持つOPECやロシアが主導権をもつ非加盟国が、原油増産したり価格を抑える動きを見せない不満を述べていた一方、当時石油相がトランプ大統領に対し「私は原油価格に影響を与えていない」と応えた。
この石油相発言とは逆に、この発言後3日間で原油価格は3%上昇していた。
「オイルショックは繰り返さない」
しかし、サウジアラビアの石油相が原油価格に対して決定権を持っている訳ではないこともある。ファリハ石油相は職務を担当してすぐの2015年では、原油の過剰供給によって毎日のように価格が暴落しており、彼の発言は重要視されなかった。2014-2017年にかけて原油価格は75%下落した。
ファリハ石油相はサウジアラビアが引き起こした1973年のオイルショックを繰り返すは意図はなく、サウジアラビアが世界一の原油輸出国としての責任を果たすと述べている。
今回の発言は、サウジアラビアが70ドルから80ドルで安定させたいという希望とは相反するものだろう。
WTI原油は60ドル以下、ブレント原油は70ドル以下になる可能性
テクニカル的に正しければ、WTI原油は大事な65ドルの水準を下回る可能性が高い。そして、60ドルに向かって落ちていくだろう。同様に、ブレント原油も75ドルの水準を下回り、70ドルに向かって下落するだろう。WTI原油は3月では60ドル以下で取引され、ブレント原油は4月では70ドル以下であった。どちらの原油も先月の上昇で通年30%の上昇であるが、過去2週間の下落でその上昇を半分までに下げた。
テクニカルの他に、米国の原油貯蓄量を見ると過去4週間連続で大きく過剰傾向であることが分かる。予想されていたより2200万バレル多く、原油価格の売り圧力になっている。
ファリハ石油相の原油増産の言明は、イラン制裁や原油上昇への懸念を和らげるだろうが、これはカショギ氏殺害を巡って世界が注目している中で、サウジアラビアの信頼回復への動きだと考えられる。
サウジアラビア:危機の真っ只中
ファリハ石油相は火曜日の原油増産の発言の前に、「忌まわしい」カショギ氏の殺害事件の後でサウジアラビアは「危機」であると発言した。
サウジアラビアの石油相にとってのこの苦境の発言は、原油トレーダーの注目を集めた。
ニューヨークのエネルギーヘッジファンドのAgain Capital社のマネージャーである、John Klduff氏は以下のように語った。
「サウジアラビアは原油市場で覇権を持っていると示したく、さらにカショギ氏殺害事件から注目をそらすために補完するには十分すぎる原油供給を引き合いにしてきた。これは原油価格が下がることにはいいことだろう」
ニューヨークのEnergy Management of Institute社のDominick Chirichella氏は、「サウジ石油相の原油増産が招く弱気相場」の影響もあって、短期的に原油の見通しに慎重にならざるを得ないと語る。
マーケットは、次のファリハ石油相の発言に注目している。