最近では、仮想通貨取引所を狙った犯罪のニュースを聞いても驚かないだろう。
最も最近の事件としては今週に、過去2年間で少なくとも4つの事件の関与が疑われている北朝鮮のハッカーグループであるラザルス（Lazarus）による事件があった。Lazarusは、今までのところ合計で5億7100万ドル相当のアルトコインを盗んだという。
仮想通貨投資への関心が増える中で、一方でセキュリティーは改善されているのだろうか？
現在確かなことは、仮想通貨関連の犯罪によって仮想通貨自体の「デジタルキャッシュ」としての妥当性が傷つけられている。
米国のサイバーセキュリティー会社のCipherTrace社によると、2017年に比べて2018年は350%も仮想通貨の窃盗が増えているという。同社の分析によると、９ヶ月でそれぞれの取引所から合計で約9億2700万ドルが盗まれており、年末には10億ドルにも上る見込みだという。
一方で、アメリカの麻薬取締局（DEA）は8月に、ビットコイン関連の犯罪はトランザクション（送金）の内10%までに下がったという。トランザクション自体の量は著しく増加しており、これはビットコイン（BTC）にとって良いことであるし仮想通貨の経済圏は拡大しているといえる。
中央集権型の取引所はハッカーの巣窟
「ハッキングや大々的に報道される関連犯罪によって、仮想通貨の一般普及が遅らされている」と分散型のQUANTA取引所の共同創業社のQuo Le氏は語る。この点については以前にも米国証券取引委員（SEC）が同様のことを述べていた。またこれは、仮想通貨関連のETFの承認を遅らせている理由の一つである。
最近のラザルスハッカーグループの事件についてLe氏は語る。
「ラザルスグループは、14以上の仮想通貨取引所をハッキングしたと主張している。それらの全ては中央集権型の顧客資産管理方法である。中央集権型の取引所は『ハッカーの巣窟』だ」
Le氏は、中央集権型の良い面として当局がブロックチェーン技術によって犯罪に関与する人物を特定することが可能ということだと付け加えた。
「ブラックリストのデータベースは、システム内での送金を制限するために当局の間で浸透している。いいニュースとしては、分散型取引技術は、スピードと便利さにおいて改善され、ユーザーはブロック技術上で安全にトレードできるようになるということだ。分散型取引所がメインストリームになれば、さらに今までよりさらに犯罪が減ることになるだろう」
規制は仮想通貨関連の犯罪減少につながる
「私は半年から1年前と比べて、仮想通貨が犯罪者にとっての魅力が下がっているとは思わない」とPersona BIO社の共同創業社のStefan Neagu氏は語る。
「しかし、規制によって犯罪は難しくなっていると思う。もし、私達のような仮想通貨の可能性を信じる人々や、ブロックチェーン業界のパイオニアが、ブロックチェーン技術が『現代のお金の形』に変わるものになる未来がみたいのなら、すべての取引所でKYC（Know Your Customer：顧客情報確認）が行われることが必要だ。」
「わたしは近い将来で仮想通貨犯罪はさらに難しくなると確信している。しかし、難しくするのは私たち次第だ。私たちが既存のサービスにブロックチェーン導入を早く導入したいと思えば、既存のサービスを、できるだけ簡単に、安全に、生活を変えるような革新的なサービスを提供できるようになる」
「規制はすでに効果が出ている」とInfleumのCEO兼共同創業者はPhoenix Choi氏はいう。彼はICOもまた現在進行中の懸念点であると述べる。
「ICOが終わった後、ほんの一握りのプロジェクトだけが1年以上生き残ることは周知の事実だろう。ICOの殆どが詐欺であるということだ。また、ICOを行う会社をターゲットにしたテレグラム（Telegram）の詐欺も多く存在する。犯罪全体が減少することがとてもいいことだが、私たちはICO関連の犯罪も減少することを願っている。仮想通貨が生活の一部になるまで、仮想通貨の妥当性の戦いは続くだろう」
「ブロックチェーン技術や、暗号化の技術はさらに一般化していくだろう」とFantom社のCMOのJake Choi氏は述べ、FBIによって2回も閉鎖された「Silk Road 」のようなケースから、ダークウェブのマネーロンダリングまで犯罪は減っていくと言う。
「現在の取り締まりの一方で、たくさんの人々に、投資的側面や、スマートコントラクト、国際送金などの仮想通貨のメリットが理解されるようになってきた。仮想通貨関連の犯罪が仮想通貨の妥当性を傷つけているが、仮想通貨にはプライバシーが守られるという最も良い特長の一つがある。プライバシーを維持しながら送金ができるということは、今後ともメリットとして重宝されるだろう」
「いずれにせよ、法定通貨に取って代わって仮想通貨を使った犯罪は存在しているが、仮想通貨の魅力は多くの人に広まって来ている。仮想通貨取引所をはじめとして、プライバシーを守る事とともに、産業全体のために良いKYCのメソッドを作ることは私たちの義務である」
CoolBitXのCEOでありクリエーターであるMichael Ou氏は以下のように語った。
「各マーケットはWild West(19世紀の開拓時代の米国西部)のように始まるものだ。しかし、当局が介入してくるにつれて成熟し、健全になっていく。規制によって整ったことによる株式市場の発展は、このいい例である」
「規制は、一般普及に一歩近づくサインである。しかし、株式の規制は、犯罪者を仮想通貨に呼び込んだ。仮想通貨の抜け道は、犯罪にとって好都合だった。これらの犯罪等は、仮想通貨の信用を失い、時価総額にも響いた。また、ハッキング等により投資家の資産が盗まれ、犯人は罰せられず、仮想通貨の成長のポテンシャルも後退した。」
「正しい規制を行うことは、仮想通貨が次のフェーズに行くために必要なことである」