FX市場のまとめ(3/11)
今週は12-13日(場合によって14日)のブレグジットの下院での投票以上に重要なものは何もないだろう。現在正確な投票時間は不明だが、通常でいえば夕方の議論が終わった後に行われると考えられる。それは、日本時間の午前3時、4時あたりだろうがもっと遅くなるかもしれない。ただし午前3時より早まることはないはずだ。この投票で3つのことが決まる。
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英国はEUとの協定案を受け入れるか?
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英国は合意なき離脱を除外するのか?
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リスボン条約第50条は延長されるか?
投票の結果は2つしかない。それはブレグジットの協定案を支持するか、却下するかだ。下院が協定案を認めれば、英国は3月29日にEUから離脱し、 英ポンドは急上昇するだろう。 ただし、ポンドは1〜2%の急激な上昇をみせるだろうが、上昇を維持することは難しいと考えている。なぜなら投資家は、離脱後に焦点を当てており、恒久的な貿易協定に向けた交渉は困難を伴うことが考えられるからだ。
しかし、最も確率の高いことは、国会議員が協定案を否決することだ。 メイ内閣はEUの最新のバックストップ提案を拒否したとの報道がすでに出ている。メイ首相は、アイルランドのバックストップ条項を変更するようEUを納得させることができなかったため、現在の協定案を通すのに十分な議員数を獲得することはできそうもない。(注:執筆時点では上記状況だが、メイ首相は12日早朝、バックストップ条項を含むブレグジットに関する合意案を「法的拘束力のある」ものに変更することで欧州連合(EU)と合意したと発表した。これにより可決の可能性が現時点では高まっている)。
もし協定案が否決された場合、英国が合意なしでEUを離脱するべきかどうかについての投票が13日に行われる。メイ首相は悪い合意なら合意なしの方がいいと主張しており、もし下院が同じように考えるならば、深刻な問題となる。これは英ポンドにとって最悪のシナリオだ。カーニー・イングランド銀行総裁は、合意なしのブレグジットになれば英ポンドは25%の大暴落になる可能性があると警告している。もし合意なきブレグジットが現実になればGBP / USDを2〜4%、ほんの数分で下落させるに違いない。
合意なき離脱は無責任となる。このシナリオでは、14日にはリスボン条約第50条を延長すべきかどうかに焦点が移り、協定案の否決により火曜日に下落したはずのポンドは、一時的に回復する可能性がある。
もう一つの可能性としては合意案が僅差で否決される場合がある。この場合、メイ首相は3月22日のEUサミットの後、もう一度投票を試みることができるだろう。これはEUに短期間の「技術的」延長を要請し、その期間で投票を行うというものだ。しかし、それが技術的かどうかにかかわらず、ポンドトレーダーは最終決定が引き伸ばされることをポジティブと解釈することはないだろう。
一方、米ドルは予想以上の好結果だった小売売上高に反応しなかった。1月の小売売上高は0.2%となり、0%の予想をわずかに上回った。しかし自動車とガソリンを除く小売売上高は予想の0.6%を大きく上回る1.2%となった。消費者の需要は第1四半期に好調なスタートを切っており、賃金が上昇するにつれてさらに高まる可能性がある。しかし、経済は年末にかけての弱さから回復しつつあるという程度で、投資家は見通しが明るいと確信できていない。 CPIは12日に発表予定で、原油価格の上昇によりインフレ率は上昇するだろう。しかし残念ながらその増加では十分でなく、インフレ率は依然として非常に低く、CPIは前年比2%を大幅に下回るだろう。
ユーロは1.10をつけに行く動きを続けている。11日の経済指標は、弱い成長に対するECBの懸念を強めている。 1月のドイツの鉱工業生産は-0.8%となり、貿易黒字は予想を下回った。自動車セクターの落ち込みが影響を及ぼし、経常収支も減少した。 ECBは先週、TLTRO3の開始を明らかにし、ブレグジットが混乱を招くか世界規模の成長がさらに減速した場合、より多くのことを行う準備があると明らかにした。米国とドイツの利回りの差が拡大しているため、EUR / USDは下落している。