アップル(NASDAQ:AAPL)の株価は米中貿易戦争で高まるリスクをよそに反騰している。
ここ2日間は小幅安となったものの、過去4週では11%の上昇。25日の終値は195.57ドルとなった。株価は年初来27%以上上昇している。
ただし疑問点として現在の強気相場がいつまで続くのか、そして今が買い時なのかという2点が挙げられる。同社は今も多くのリスクに直面している。
最大の懸念事項は、米中貿易摩擦がさらに悪化した場合に同社のサプライチェーンに大きく支障が出ることである。
アップルは6月17日付でライトハイザー米通商代表に書簡を送り、対中関税の引き上げにより米国経済は打撃を受けるだろうと強調した。
同社はiPhone、iPad、MacBookやApple Watchといった製品の売上減が大きく影響するとしている。
また対中制裁関税は「アップルによる米国への経済貢献と世界的な競争力を低減させる」と記した。
また28-29日にはG20大阪サミットでの米中首脳会談が予想されている。
アップルはコスト削減のため中国でサプライチェーンを構築している。
同社は製品開発エンジニアに加え、サプライチェーンにおいて推定200万人を雇用している。
デザインや販売の大部分は米国で行っているが、組み立ては中国で行い完成品を輸入している。
加えて同社売上高の60%を占めるiPhoneの不振への対策も急がれている。
この問題に対し、同社は14億人を超える顧客に向け新たな動画配信やゲームサービス、アップルクレジットカードなどを提供し策を打っている。
これらの施策はどれもすぐに売上に直結し、好循環を支えることになるだろう。
アップルは以下の重大な3つの課題にすでに対処できており、長期的にも勝ち続けられると考えられる。
対中問題
アップルは米中協議が決裂し、互いにさらに追加関税を課す場合でも耐えうる市場ポジションを有している。
同社は14億人を超える顧客基盤を有しており、2250億ドル相当の手持ち現金がある。また販売価格を引き上げたとしてもロイヤルカスタマーは離れないと考えられる。
これは中小企業にはない強みだ。
中国の報復措置
ファーウェイ禁輸に対する中国側の報復対象として、アップルは除外されると見られる。同社は中国経済に大きく貢献しているからだ。
バンク・オブ・アメリカアナリストのWamsi Mohan氏は米中貿易摩擦からアップルが打撃を受ける可能性は低いと指摘している。
同氏は「中国による報復関税リスクに関し、アップルが主要な標的にされる見込みは薄い」としている。
収益モデルの多様化
アップルはiPhone以外の販売にも力を入れて製品ラインナップを分散し、売上を回復させる取組を行っている。
Apple Musicや映画レンタル、アプリ配信等の事業売上高は前年400億ドルとなり、33%の成長を記録した。総売上高の2656億ドルに占める割合は約15%。
動画配信やApple Pay、ゲームといった新サービスが軌道に乗れば、売上内訳が分散されるだろう。モルガン・スタンレーによるとこれらの新規事業は成長を続け、今後5年のうちに同社売上高の60%を占めるようになるという。
総括
米中貿易協議が決裂すれば米ハイテク株への悪影響は免れないだろう。アップルも例外ではない。
しかしアップル株が値下がりした場合はエントリー機会になるだろう。強固なグローバルブランド、キャッシュリッチ、売上内訳分散が同社の強みだ。