今週は外国為替市場にとって忙しい週になるだろう。3ヶ国での金融政策発表の他、物価指数や雇用統計、GDP、中国PMIなど、様々な材料が発表される。今週は、株式市場が上昇し、それに伴いドル円も値を上げて取引されている。これは、マーケットが前向きになっている兆しとして考えられる。市場心理が改善している背景には、EUがブレグジットの3か月延期で合意したことやドナルド・トランプ米大統領の米中貿易に関する前向きなコメントが考えられる。ブレグジットと米中貿易摩擦は、今年の世界経済にとって最大のリスクとなっている。どちらのリスクも完全に消えた訳ではないが、その影響は弱まっているようだ。S&P500が過去最高値を記録したことからも、投資家がリスクオンとなっていることが窺える。
31日のFOMCでの利下げ観測も、マーケット心理を加速させる一要因となっている。通常、利下げ観測が高まると、為替レートは下落する。しかし、28日のドル円は109ドルを上回り、7週間ぶりの高値をつけた。フェデラルファンド金利先物によると、マーケットは90%の確率で利下げを織り込んでおり、今回の利下げを最後として考えているようだ。しかし、製造業・サービス業PMIの鈍化やインフレ圧力の低下を考えると、FRBが利下げに動くのもうなずける。我々の考えでは、ドル円はFOMCを前に下落し、200日移動平均線が更なる上昇の抵抗ラインとなると考えられる。
カナダ銀行と日本銀行もまた、政策金利を発表する。しかし、米国の経済指標と米ドルへの需給によって今週の外国為替市場は値動きするだろう。FOMCの他、米第3四半期GDPや米非農業部門雇用者数が発表予定である。第3四半期GDPは、米非農業部門雇用者数以上に、マーケットから注目されている。弱い消費者支出や貿易収支を考慮すると、GDP成長率は鈍化していることが予想される。エコノミスト予想では、前期の2%増に対して1.5%増となっている。
一方、28日にアウトパフォームしたのはポンドであった。英下院はボリス・ジョンソン英首相が提出した12月12日に解散総選挙を行う動議を否決した。しかしその一方で、EUが英国に対してブレグジットの3か月延期を申し出たことが好感された。ジョンソン首相は解散総選挙を訴えているが、焦点はブレグジットの英国経済への影響に移っている。短期的には、ポンドは上昇することが予想されるものの、長期的にはブレグジットの影響で下落することが考えられる。
28日アンダーパフォームした通貨は、日本円とスイスフランである。しかし、NZドルもまた、下落している。米中貿易の進展はNZドルにとってプラスなはずである。しかし、ニュージーランド準備銀行は利下げが予想されている。