新型コロナウイルスの治療薬やFRBによる新たな景気刺激策への期待感から、株式市場と一部通貨は値を上げた。ダウ平均株価は約600ポイント高となった一方、ハイベータ通貨が上昇し米ドルは下落した。通貨では、NZドルや豪ドル、カナダドルがアウトパフォームした。ユーロはECBによる金融政策会合を前に様子見ムードとなってる。
FRBは新型ウイルスの経済への影響を深刻に受け止めている。FOMC声明では、新型ウイルスは中期的には経済見通しにとって深刻なリスクとなると述べられている。これを受け、フェデラルファンド(FF)金利は当分据え置かれる見込みである。ジェローム・パウエル議長は記者会見の場で、今後失業率が2桁台に突入する可能性があり、第2四半期の経済活動は前例のない速度で低下すると警鐘を鳴らした。また、FRBは引き続き、米経済を支えるためにあらゆる手段を使うことを約束した。
米GDPは軟調な結果となった。第1四半期における米経済は年率4.8%減となり、過去10年間で最悪の結果となった。GDP発表後に株価が値を上げたことから、市場はさらに軟調な結果を見込んでいたことが窺える。30日には失業保険申請件数や個人支出、個人所得の発表が控えており、いずれも軟調な結果が予想されている。失業保険申請件数は前週の442万件から350万件に改善されることがみこまれる。失業保険申請件数に改善が見られない場合、米ドル/日本円はさらに下落するだろう。
現在、ユーロとECBへ注目が集まっている。弱い米ドルを背景に、ユーロは米ドルに対して値を上げて取引されている。ユーロ/米ドルは50日や100日、200日移動平均線を下回って取引されている。米国と同様、ユーロ圏も経済の縮小が予想されている。しかし、米国のロックダウンが第1四半期の最後の2週間から実施された一方、ユーロ圏は米国の3週間前からロックダウンが実施されている。そのため、欧州の景気後退は米国以上のものになるだろう。
ユーロ圏GDPはECBの金融政策会合以上に、市場へ影響を与える可能性がある。ECBは3月18日、パンデミック緊急購入計画(PEPP)の開始を決定した。同計画はジャンク債などへも対象が拡大される可能性がある。ECBのクリスティーヌ・ラガルド総裁は、今年は経済が15%も縮小する可能性があり、企業や投資家の信頼感指数は記録的な低水準にまで低下しているため、さらなる景気刺激策が必要であると考えている。
NZドルと豪ドルは値を上げた。両国ともロックダウンを緩和している。また、ニュージーランドの3月貿易収支は堅調な結果となった。オーストラリアでは、第1四半期の消費者物価指数(CPI)は上昇し、年率2.2%となっている。
原油高を背景に、米ドル/カナダドルは値を下げて取引されている。2月カナダGDPは30日21時30分に発表予定である。2月は小売売上高や貿易収支が堅調な結果となったため、2月GDPも良い結果が見込まれる。