最近、アメリカの景気に関する記事を2日続けてアップしました。
2つの記事のタイトルだけ見ると、「アメリカの景気は良いのか悪いかどっちなんだ」と混同するかも知れないので、もう少しだけ最近のアメリカの景気について、この記事で補足をしておきたいと思います。
この記事の要点をまとめると、「6月の米国企業の景気は力強く回復した。しかし、6月後半から景気回復の力強さに陰りが見える。多くの人が思い描くペースでの景気回復が難しくなるかもしれない」です。
この記事のポイント
- 6月までV字回復のようにアメリカ経済は回復をした。
- しかし、毎週集計される経済指標をよく見て見ると、6月後半から回復力強さが失われたように見えるデータが散見される。
- 市場は2021年後半には2019年の新型コロナウイルス前の経済に戻ると予想しているが、予想以上に回復には時間がかかる恐れがある。
6月の景気回復は力強かった
まず、既に終わった6月のアメリカ企業の景気を確認すると、大方の予想を上回る力強く回復していることがわかります。
以下の記事でも詳細を書きましたが、ISMが調べた米企業の景気は製造業も非製造業も6月はかなり好調でした。
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米国企業が感じている景気は6月に急回復
6月後半から景気回復の力強さが失われている兆候
しかし、米企業の景気が好調だったと正式に発表があった同じ日、アメリカの中央銀行FRBの主要メンバー(アトランタ地区連銀総裁)は、最近のアメリカの景気回復は停滞している可能性があると警戒しています。
総裁は同紙(ファイナンシャル・タイムズ)のインタビューで、高頻度で発表される経済指標は、企業の営業状況や移動の両面で、経済活動が「横ばい状態」になっていることを示していると指摘。
最近では新型コロナウイルスの再拡大を受けてアップルが全米の3割近い店舗を再び閉鎖したりと経済の再開が足踏みしたり、後退しているニュースが入ってきています。
FRBは「高頻度で発表される経済指標」を見て何かを感じ取って、警戒しているようなので、ISMのような1ヶ月1回発表されるデータではなく週ごとのデータをいくつか見てみると、確かに6月後半から回復の勢いを失っている傾向が見られます。
アメリカの小売店来店頻度
アメリカでの小売店の来客数の前年比のデータの以下のグラフを見てみると、6月26日の最終週だけ回復が鈍くなっています。
失業保険受給者数
また6月後半以降から、企業は雇用に対して消極的になっているのか、一時期は大きく改善していた失業保険の受給者数は6月後半に下げ止まり、ゆるやかに上昇に転じ始めています。
一部ではありますが、6月後半から回復が鈍化しているように見られる経済データは確かにあるようです。
景気回復が想定以上に時間がかかる可能性
市場は2021年には新型コロナウイルスの流行前の2019年の経済に戻ると予想していますが、回復が鈍化すれば想定以上に経済が元通りになるまでに時間がかかるかも知れません。
ブラックストーンは市場予想よりも悲観的に、以下のグラフのようにルート(平方根)のようなゆっくりとした形の景気回復をすると予想していますが、このブラックストーンのような2022年までかかるような景気回復になる恐れもあります。
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市場予想を楽観的と見るブラックストーン
ブラックストーンが悲観的な予想をする理由を以下の記事で複数あげていますが、ブラックストーンが上げた理由の中で一番インパクトが大きいのは「雇用回復に時間がかかるから」だと勝手に思っています。
6月の米企業の景気は急回復しましたが、まだ新型コロナウイルス前の業績には戻っていないだけでなく、6月後半から回復の勢いが失われている恐れがあるという話をしてきました。
もしも市場が予想している通りに景気が回復しない場合には、企業の利益が伸び悩んで株が一層割高になるかも知れません。