新型コロナウイルスでアメリカの景気は大きなダメージを負って、2020年は銀行株が大きな低迷しています。
しかし、景気の最悪期は2020年4-6月期で恐らく既に過ぎたと見られているので、今後は景気の回復と共に銀行株も回復していくことを期待されます。私も少し前から銀行株のJPモルガンチェースを買っています。
先日、JPモルガン (NYSE:JPM)の2020年4-6月期の決算発表があったので、この記事で振り返っておきたいと思います。
結果は収益は予想ほど悪化せず、利益も予想外のプラスに転じて、それほど悪くないまずまずの決算になりました。
この記事のポイント
- 事前予想では収益・利益ともに前年比マイナス成長に落ち込むと見られていたが、収益は予想ほど悪化せず、利益は予想外のプラス成長になった。
- 銀行は貸した資金が不況で回収できなくなることに備えて、事前に貸倒引当金と呼ばれる損失を報告するが、JPモルガンチェースの場合は景気判断を引き上げて貸倒引当金が予想よりもずっと少なく済んだので、利益が予想外のプラス成長になった。
「過度に楽観的な景気判断に引き上げれば、貸倒引当金も少なくできて、利益をよく見せることができるのでは?」と思われるかも知れません。
なので、JPモルガンが想定している景気シナリオもこの記事の後半で覗いてみましたが、十分悲観的と言える内容に見えました。
新型コロナウイルスの再流行さえなければ、既にJPモルガンは貸倒引当金を十分用意できているように見えるので、今後は利益の回復傾向が見られるかなと期待を寄せています。
予想外の増益になったJPモルガン
JPモルガンチェース銀行の2020年4-6月期の決算は一株利益・収益ともに予想超えの決算になりました。
- 一株利益:$2.92ドルで、予想を0.73ドル上回る
- 収益:$29.15Bで、予想を0.96B上回る(前年比-3%)。
JPモルガンチェースは2019年以降は割と高い頻度で、事前予想を上回る決算が出せていますが、今期もちゃんと予想超えの決算が出せたようです。
事前のアナリスト予想では、利益も収益も前年比でマイナス成長に沈むと見られていたのですが、 収益は予想ほど悪化せず、一株利益にではプラス成長となりました。
利益の回復の要因は貸倒引当金の減少
1Q(1-3月期)と2Q(4-6月期)は貸した資金が不況で回収できなくなる恐れがあるために、事前に「貸倒引当金」という巨額な損失金を計上したため、利益が大幅に悪化していました。
しかし、今期(7-9月期)はその貸倒引当金は小さく済んだので、今期から利益が増えた模様です。
貸倒引当金を減らしたJPモルガンチェース
単位:10億ドル | 20年2Q | 20年3Q | 変化 |
---|---|---|---|
貸倒引当金 | $34.3B | $33.8B | -$0.6B |
貸倒引当金を小さくしたということは、「もう十分貸し倒れのリスクには対応できている」とJPモルガンチェースが判断したことになります。
株主からすると「JPモルガンの景気予想は甘くないのか」、「過度に楽観的な景気判断を理由に貸倒引当金を小さくして、利益をよく見せようとしていないか」が気になるところですが、JPモルガンの想定景気シナリオを見る限り、楽観的には見えません。
例えば、上方修正されたJPモルガンチェースの失業率見通しを見てみましょう。
これによると修正後の20年12月末の失業率は9.5%です。既にアメリカ政府から発表があった9月の失業率7.9%と比べても、かなり悪い数字を想定していることがわかります。
同様にアメリカのGDP成長率シナリオを見てみても、「FRBのメンバーがGDPがコロナ前に水準に戻るのは21年末頃になる」といっている中、JPモルガンはそれ以上に悲観的な予想をしています。
今後、新型コロナウイルスが再流行して20年3月のような全米のロックダウン(都市封鎖)が起こらない限りは、JPモルガンの景気判断はちゃんと悲観的なものになっているように見えます。
その悲観シナリオから算出される貸倒引当金が準備できているなら、今後もさらなる貸倒引当金で大きく利益が減ることもあまりなさそうです。
つまり、景気回復を長く待てる投資家なら、JPモルガンはそろそろ買いはじめて良い銘柄かも知れません。
ただし、新型コロナウイルスの再流行による経済の減速で景気シナリオが悪化した場合には、再び利益と株価が悪化することになる点には注意が必要そうです。