グローバルでコーヒー・チェーンを展開するStarbucks (NASDAQ:SBUX)は、今夏にコロナ禍による下落から回復していたものの、再び下押し圧力を受けている。
7月半ばに大きく上昇した後、同社株は13%低下し、S&P 500種指数やその他の外食大手をアンダーパフォームしている。年初来では5%上昇したものの、McDonald’s (NYSE:MCD) は同期間で16%以上値上がりした。
同社はコロナ禍においても、著しい回復をみせていたが、コロナ禍が長期化したことで、店舗の閉鎖を強いられ、消費者は外出を自粛したことにより弱含む展開となった。 2020年3月のコロナ禍の発生後、同社株は2倍に値上がりし、昨日も108.66ドルで引けている。足元はコロナ禍による逆風を受けているが、今後も荒波に直面する可能性がある。インフレ圧力は賃金上昇圧力という形で同社に悪影響を与えており、労働者不足が叫ばれる中においても、同社は優秀な従業員を引きつけるために対応を迫られることになる。
同社のCEOであるKevin Johnson氏はCNBCによるインタビューの中で、来年はバリスタの賃金を最低2回引き上げると話した。2022年夏までに同社の最低賃金は時給15ドルになるとみられ、平均時給は17ドルと現在の14ドルから上がると予想される。
Johnson氏がCNBCで語ったところによると、「消費者の関心はより移りやすくなっていることから、昇給は正しい戦略であると信じている」と発言している。
しかし、この取組を投資家は好感しなかった。賃金の上昇は直接的に売上を圧迫することになるからだ。同社が発表した直近のガイダンスによると、現在の会計年度における営業利益率は引き続き約17%であり、これはアナリスト予想を下回る水準である。その要因としては、賃金、包装および輸送コストの上昇などが挙げられる。
二分されるアナリストの意見
オミクロン株の出現によって、コロナ禍は新たな局面へと突入した。足元みられているコストの上昇圧力がいつ解消されるのかや、消費者が再び職場に戻ることができるのかは判然としない。
このような先行き不透明によって、同社株を担当する著名アナリストたちの意見は真っ二つに割れている。Investing.com poll が実施した調査によると35人のアナリストのうち、19人は買い推奨を行い、15人がニュートラルとしている。目標価格のコンセンサスは現行の株価水準から8%高い水準となった。
出処:Investing.com
市場環境は不透明感が高いものの、同社株はファースト・フード業界の中では魅力的であると考える。この困難な中で、商品価格を低く抑え、市場シェアの獲得を目指すという同社の戦略は、長期的には報われる企業努力といえるだろう。
またJohnson氏はコロナ禍後の経済を見据えて、店舗の拡大およびリニューアルに積極的に投資している。座席を持たない小規模なテイクアウト型店舗の展開も進めている。
米国では約800の不採算店舗を閉鎖し、都市型でテイクアウト中心の無座席店舗と郊外型のドライブスルー中心の店舗を展開していく計画だ。長期的には今後10年で20,000を超える新規店舗を開店する予定であり、現在約33,000の店舗数を2030年会計年度には55,000店舗にする目標を設定している。
また、同社の経営陣は配当の形で株主還元を充実化しようとしていることも魅力的だ。過去5年間で同社の配当額は18%増加している。現在は1株あたり0.49ドルを配当金として支払い、配当利回りは約2%だ。
結論
短期的にはコストの上昇圧力により利益率は圧迫され、オミクロン株の出現はグローバルで店舗の営業に影響を与える可能性がある。しかし、経営陣が市場シェアの拡大および株主還元に努めていることを勘案すると、現在は押し目買いの好機かもしれない。