高止まりするインフレ水準、タカ派なスタンスに転換したFRB、オミクロン株をめぐる先行き不透明感などは、多くの投資家の頭を悩ませることとなった。その結果、金融市場全体が低迷している。S&P 500、NASDAQ 100、ダウ工業株30種平均 は1月にそれぞれ約5.6%、9.1%、3.7%下落している。
特に足元は決算シーズンとも重なっているため、不安定な動きが続くだろう。市場では今後数ヶ月間、どの資産クラスがより良いリターンを創出するのかが議論されている。歴史的に、株式市場のボラティリティと高インフレの時期には、産業株、エネルギー株、消費財株に投資資金は集まる傾向にある。
その他の安全な資金の逃避先としては、金、農業コモディティ、卑金属が一般的だ。また、堅固な収益と配当をしっかりと生み出す堅実な企業も、信頼できるヘッジ先となり得る。
一方、上場投資信託(ETF)は、リスク・エクスポージャーが分散されていることで、個別銘柄に代わる選択肢となり得る。また、様々なセクターや資産に分散投資することも可能である。
この記事では、1月に株価指数や多くのグロース株よりも優れたパフォーマンスを示した2つのETFを紹介する。これらのETFは、2022年内にプラスのリターンが期待できるため、読者の注目に値すると考える。
1. Invesco DB Agriculture Fund
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現在の価格:20.19ドル
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過去52週間のレンジ:16.31ドル~20.39ドル
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経費率:年率0.93%
先日、貴金属と幅広いコモディティを対象とした2つのコモディティ・ファンドを取り上げた。今回紹介するETFである Invesco DB Agriculture Fund (NYSE:DBA)は、10種類の農産物の先物契約に特定のエクスポージャーをとるものだ。
Rabobankによる農産物に関する最近のリサーチでは、以下の点が注目されている。
農産物価格は現在、輸送コストの高騰(コンテナ代金は天文学的な数字に高騰している)、エネルギーや肥料の価格、多くの国での労働力不足など、一般経済におけるインフレに支えられている。これらに農作物の投入コストの上昇、高価な輸送費、良好な需要という厳しい条件が重なっている。2022年には、これらのインフレ圧力が上流からサプライ・チェーンに沿って消費者に届くとみるべきだろう。」
2007年1月初旬に取引を開始し、DBIQ Diversified Agriculture Index Excess Returnに連動している。ETFの時価総額は約10億5千万ドルだ。
組み入れている先物取引としては、大豆(13.40%)、トウモロコシ(12.75%)、コーヒー(12.34%)、小麦(12.17%)、生牛(12.01%)、砂糖(11.15%)、ココア(10.65%)、豚赤身肉(8.77%)、肥育牛(3.89%)、綿(2.89%)などが挙げられる。
DBAは1月20日に数年来の高値を付けた。過去12カ月で約23%上昇しており、2022年に入ってからも2%以上値上がりしている。農業に焦点を当てたロング・エクスポージャーを望む投資家は、このETFを押し目買いするのを検討しても良いだろう。
2. First Trust Multi-Asset Diversified Income Index Fund
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現在の価格:16.79ドル
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過去52週間のレンジ:15.05ドル~17.44ドル
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配当利回り:5.12%
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経費率:年率0.68%
First Trust Multi-Asset Diversified Income Index Fund (NASDAQ:MDIV) は、5種類のインカム性資産に投資をしている。ファンド・マネージャーは、株式、マスター・リミテッド・パートナーシップ(MLP)、優先証券(20%)、REIT(20%)、ハイ・イールド社債ETF(20%)に均等に資金を配分している。このコラムの常連なら、株式に特化したETFに加え、定期的に 他の 資産クラスに 関しても紹介しているのを知っているだろう。
MDIVは、四半期ごとにリバランスされる時価総額加重型の NASDAQ Multi-Asset Diversified Income Indexのパフォーマンスをトラックしている。このETFは2012年8月に取引を開始し、純資産は4億6370万ドルとなっている。
ポートフォリオの3分の1近くが上位10銘柄で占められている。そして現在の保有銘柄数は125銘柄だ。
もう一つのファンドであるFirst Trust Tactical High Yield ETF (NASDAQ:HYLS)は、組入比率が19.3%と最も大きい。HYLSは主に投資適格以下のハイ・イールド債券(ジャンク債)に投資している。
他にもAnnaly Capital Management (NYSE:NLY)、Omega Healthcare Investors (NYSE:OHI)、Shell Midstream Partners (NYSE:SHLX)、Icahn Enterprises (NASDAQ:IEP)などを組み入れている。
パッシブ・インカムを求める人や、このような不安定な時期に資金を蓄えておきたい人は、このファンドをさらに研究してみてはどうだろうか。過去1年間で、MDIVは約10.5%のリターンを記録した。このETFは、年初来で0.4%近く下がっているが、現在の価格は5%を超える高い配当利回りに支えられている。