大型株の決算発表の大半はすでに終了しており、今週発表される企業決算では、インフレによる価格上昇と長引くサプライ・チェーンの混乱の中で、小売業者の動向と2022年の予測に主に焦点が当たることになるだろう。
また労働者不足が深刻化し、小売売上高や物価にどのような影響を与えるかについても注意が必要だ。米国の1月のインフレ率は過去40年間で最も高い水準にあり、物価は前年比7.5%上昇した。
このような厳しい経済状況を背景に、今週は祝日を含んだ短縮週となり、市場はロシア・ウクライナ情勢を巡る地政学的リスクによるボラティリティをより多くみることになる可能性がある。バイデン米大統領は週末に、ロシアのプーチン大統領はウクライナへの攻撃を決定し、キエフへの攻撃を含む侵攻が「いつでも」起こりうると発言した。
先週木曜日にダウ工業株30種平均は600ポイント以上下落し、今年最悪の1日となった。また米国株式の主要3指数の週次リターンをみると、ダウは1.9%、NASDAQは1.7%、S&P500は1.6%それぞれ下落した。
以下、今週の四半期決算発表後に取引が加速しそうな銘柄を3つ挙げた。
1. Home Depot
ホームセンター大手のHome Depot (NYSE:HD)は、2月22日(火)の市場取引開始前に第4四半期決算を発表する。アナリストは、売上高348億3000万ドル、1株当たり利益(EPS)3.17ドルを見込んでいる。
2021年12月下旬に52週目の高値を付けて以来、ジョージア州アトランタを拠点とするホーム・デポの株価は、パンデミックに伴うロックダウンに伴う巣ごもり需要が薄れ、売上増加に苦戦するとの懸念から17%下落した。
住宅関連株に対する最大の脅威は、米連邦準備制度理事会(FRB)がインフレ対策としてどの程度積極的に利上げを行うかである。この政策がタカ派的であれば、パンデミック時の住宅改修需要の主要な原動力の一つである一戸建て住宅に対する消費者需要が損なわれることになる。
これらの不確実性は、投資家が今後の事業の勢いが減速することを懸念し、引き続き株価の重荷になる可能性がある。金曜日の株価は346.87ドルで終了した。
2. Macy’s
ニューヨークを拠点とする百貨店チェーンのMacy’s (NYSE:M)は、火曜日の市場取引開始前に第4四半期の業績を発表する。アナリストのコンセンサスでは、売上高84億3000万ドルで、EPSは1.99ドルとされている。
同社が11月に発表した第3四半期の企業決算は市場予想を上回る強い結果となり、通期の業績見通しを上方修正した。
サプライ・チェーンの混乱にもかかわらず好調であることに加え、メイシーズはより多くの消費者がオンラインで買い物をするようになった現在、デジタル販売事業への投資からも恩恵を受けている。実際、Macy'sは今年下半期にデジタル・マーケットプレイスを立ち上げる予定で、商品の品揃えを拡大し、外部の販売プラットフォームを通じた営業にも今後注力していくことを目指している。
Bloombergの報道によると、アクティビスト投資家のJana Partnersは、同社の発行済み株式の1.5%を購入し、その後百貨店チェーンにeコマース部門のスピンオフを迫り、同社の評価を高める可能性があったが、現在その大部分の株式を売却したと報じられている。いずれにせよ、同社は2021年第4四半期および通期で大きな利益を上げると予想されている。
メイシーズの株価は金曜日の終値で25.70ドル、過去3カ月で約30%下落した。11月に52週間ぶりの高値となる37.95ドルまで株価を押し上げた力強い上昇の後に、このような軟調な展開となった。
3. Moderna
マサチューセッツ州ケンブリッジに拠点を置くバイオテクノロジー企業、Moderna (NASDAQ:MRNA)は、2月24日(木)の市場取引開始前に第4四半期の決算を発表する。アナリスト予想は、売上高65億7000万ドル、EPS9.62ドルだ。
同社は、Pfizer (NYSE:PFE)と並んで、コロナウイルスのワクチンを製造する2大製薬企業の1社である。同社の株価はパンデミック時に上昇したが、今年になって43%暴落している。金曜の終値は145.74ドルだった。
この急激な下落は、オミクロン株の感染波が急速に弱まり、直近の高騰の後にパンデミックが流行段階に移行した場合、ワクチン生産者にとって短期的な見通しがどうなるか不透明になっているためである。
同社は11月に売上と収益がアナリストの予想を大きく下回り、投資家を失望させた。その時、同社は2021年のコロナワクチンの売上高予測も引き下げたが、これは主に海外からの注文に対するリードタイムが長くなったことが原因だった。