株式投資家にとって、今年は決して楽な一年ではないようだ。2022年に入ってから、インフレ、中央銀行の政策引き締め、ロシアとウクライナ間の戦争激化などが、世界経済に強い逆風をもたらしており、米国株の13年にわたる安定した強気基調を圧迫している。
先週、米国経済成長の見通しを下方修正する一方で、ゴールドマン・サックスは、原油価格の高騰とウクライナ戦争の影響を受け、来年度の景気後退の確率は35%にも達するかもしれないと予想した。バンク・オブ・アメリカは、景気後退のリスクは現時点では低いが、来年は高くなるとみている。
この不確実性の高い環境では、退職後のポートフォリオにおいて適切な銘柄を選ぶことは容易ではない。特に経済成長の急激な減速が迫っている場合はなおさらである。そのような中、多くの退職者が収入を増やすために頼りにしてきた実績ある戦略のひとつは、質の高い配当成長株を購入することである。
四半期ごとに増配を行っている企業は、好況時だけでなく、景気後退時にも、投資家に安定的かつ確実なインカム収入をもたらすことができることを示している。
また配当成長株は、インフレに打ち勝つ優れた手段でもある。債券のように元本と利息が固定されているわけではなく、配当の増加という形で株主に定期的な増配をもたらし、消費意欲を高めることができるのだ。
以下に、安定した収入を得る事ができると考える3つの銘柄をリストアップした。
1. Texas Instruments
-
5年平均配当成長率:21%
-
配当利回り:2.76%
-
配当性向: 50%
Texas Instruments (NASDAQ:TXN)は、多くの多様な産業にとって重要なマイクロチップを含む電子製品の生産を手掛ける。その統合された長年の市場プレゼンスと堅実な配当実績は、退職後のポートフォリオに含めるのに魅力的な銘柄である。株価は166.72ドルで月曜日の取引を終えた。
同社は家庭用電化製品から宇宙機器まであらゆるものに搭載されるアナログおよび組込み処理チップの最大のメーカーである。業界で最も広い範囲をカバーし、収益基盤を高度に多様化させている。このことは、同社が同業他社よりも景気後退をうまく切り抜けられることを意味している。
しかし、長期投資家にとって最大の魅力は、毎年増配を続けていることである。年間配当利回りは約3%で、現在1株当たり1.15ドルを四半期ベースで支払い、過去5年間の増配実績は年率21%にものぼる。
配当性向は50%を超えており、近い将来さらに増配することが可能な状態にある。また自動車や機械に付加される電子機器の数を考えると、同社の長期的な成長見通しは明るい。さらに、同社は1月に堅調な決算を発表した。
2. CN Rail
-
5年平均配当成長率:11%
-
配当利回り:1.85%
-
配当性向:35%
カナダ最大の鉄道会社であるCanadian National Railway (NYSE:CNI)も、配当収入を増やすための強力な投資先といえるだろう。この鉄道事業者は北米経済の中で独自の競争優位性を享受しているため、魅力的な投資先となりうる。株価は月曜日、123.50ドルで取引を終えた。
モントリオールに本社を置く同社は、カナダと米国中部にまたがり、大西洋、太平洋、メキシコ湾を結ぶ約20,000路線マイルの鉄道網で、石油エネルギー製品から消費財まで、年間2,500億カナダ・ドル(約195億ドル)を超える貨物を輸送している。このように事業範囲が広範に渡るため、長期に渡って安全性の高い投資先といえよう。
金属、木材、石油などのコモディティに対する強い需要に下支えされ、2021年も事業は堅調に推移し、収益はコロナ禍のあった1年前のほぼ2倍となった。
四半期ごとに1株0.73ドルを配当として支払っており、過去5年間、年平均で約11%増配している。また、同社は1月に予想を上回る収益を発表した。
3. Starbucks
-
5年平均配当成長率:18%
-
配当利回り:2.47%
-
配当性向:50%
市場の低迷期に長期投資家の避難所となる可能性がある。低価格の食事メニュー、グローバル展開している事業、収益の安定性は、不透明な時期に高騰するグロース株に影響を与えかねない高位な変動性から投資家を守る役割を果たすだろう。
世界的なコーヒー・チェーンのStarbucks (NASDAQ:SBUX)は、魅力的なインカム株の一つだ。月曜日の終値は79.29ドルであった。
シアトルに本社を置きスペシャルティ・コーヒーと食品を扱う同社株は現在、コスト上昇と、同社の第二の市場であり、コロナウイルスの感染防止のために地元政府が依然としてロックダウンを実施されている中国での厳しい経営環境が続いていることから、売り圧力がかかっている。
しかしこの弱気な状況は、投資家にとって、長期にわたる堅実な成長見通しと優れた配当実績を持つ同社に投資する機会を提供する、良い買い場であるともいえる。価格を低く抑えて市場シェアを拡大するという同社の戦略は、長期的にみれば利益をもたらすものであり、正しいものである。北米でのSBUXの売上は好調を維持しており、中国でも回復するのは時間の問題だろう。
前四半期は収益予想を上回らなかったが、利益は堅調に推移している。
スターバックスを所有するもう一つの理由は、経営陣が配当という形でより多くの現金を株主に還元することに重点を置いていることだ。この株は現在、1株当たり0.49ドルの四半期配当を支払っており、これは配当利回りが約2.47%であることを意味する。配当は過去5年間、年率で約18%成長している。