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コモディティ週次見通し:EUでの対露経済制裁で原油価格は120ドルへ、中国情勢を受けて金はレンジ内で推移

発行済 2022-05-31 19:42
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欧州連合(EU)がロシア産原油の大半の輸入禁止を進め、中国では2カ月以上続いた上海の都市封鎖を終えることを受けて、原油価格はウクライナ侵攻時の最高値である3月に戻ろうとする可能性がある。

原油先物 日次チャート

一方、は、ドル・インデックスが重要な100ポイント・レベルを超えて維持しようとし、米国10年債利回りが4週間ぶりの上昇に向かう中、1オンス=1,830ドルの最近のレンジで推移する可能性がある。

金先物 日次チャート

2ヶ月以上の議論の末、EUは2022年末までにロシア産原油の輸入を削減することに合意し、米国と欧州の夏のドライブ・シーズンのピークを前に原油需要が高まる中、すでに供給が厳しくなっている市場の不安を更に煽った。

EU首脳は、2022年末までにロシアからの原油輸入の90%を削減することに原則合意し、3ヶ月前のウクライナ侵攻以来、EUがロシアに対して行ってきた最も厳しい制裁措置に関するハンガリーとの行き詰まりを解決した。

火曜日のアジア取引時間では、ロンドンで取引されている原油の世界的なベンチマークであるブレント原油の8月限が、シンガポール時間午後12時35分までに1ドル63セント(1.4%)上昇し、1バレル119ドル23セントとなった。月曜日に期限切れとなったブレント7月限は、夜間に121.67ドルで取引された。

米国産原油の指標となるニューヨーク市場のウエスト・テキサス・インターミディエイト(WTI)は、7月限が1.36ドル(1.2%)上昇し、118.54ドルとなった。

ブレント原油は5月単月で9%、WTIは13%それぞれ上昇し、両ベンチマークとも6カ月連続の値上がりを記録している。

ブレント原油は3月7日に14年ぶりの高値となる139ドル超をつけた。これはロシアのウクライナ侵攻により、ロシアのエネルギーやその他の輸出品に対する欧米の制裁が相次いだ約2週間後のことである。WTIは同日、2008年の高値を再び更新し、130ドル超に達した。

アナリストによれば、EUの禁輸措置による供給不足、中国での需要急増、OPEC+の石油輸出国が今週末の会合で大幅な供給増を拒否するなど、原油市場において供給減が確認されることとなれば、その数日後には直近の最高値が再び視野に入る可能性がある。

オンライン取引プラットフォームOANDAでアジア太平洋地域の調査を統括するJeffrey Halley氏は、「この1週間の原油価格の動きは不吉で、精製品の供給が良くなるどころか、悪化していることを示唆している」と述べている。

「EUによるロシア産原油の輸入禁止措置は、この状況をさらに複雑にしており、市場が原油価格の上昇を無視して、いつまで他の場所で底値釣りを続けられるのか疑問だ」と述べている。

しかし一部の専門家は、120ドルを突破した後、市場はすでにEUの供給制約を織り込んでいたため、原油の上昇は弱まるかもしれないと考えている。

SPIアセットマネジメントのマネージング・パートナーであるStephen Innes氏は、ロイターに掲載されたコメントの中で、「EUのほぼすべての加盟国が、この禁止措置に同意していることから、市場はすでにEUの自主規制と、今年欧州に輸出されるロシア産原油が大幅に減少することを織り込んでいた」と発言した。

「中国での需要回復も今後市場で織り込まれていくだろう。しかし大きな懸念は、ガソリン価格の高騰で、ドライブ・シーズンの需要減退につながる可能性があることだ」。

コロナ禍に伴う都市封鎖規制の緩和により、中国からの原油需要が回復する見込みだ。上海は2ヶ月に及ぶ都市封鎖の終了を発表した。これにより中国最大の都市である上海の大多数の人々が水曜日から家を出て車を運転することを許可される予定だ。

供給面では、OPEC+は木曜日の会合で昨年の取り決めを守り、7月の生産量を日量43万2000バレルと控えめにすると、OPEC+関係者6人が発表した。高騰する価格を下げるためにもっと早く供給量を増やすという西側の要求をはねつけるものとなった。

この1年以上、世界23カ国の石油輸出国連合であるOPEC+を率いるサウジアラビアは、1バレルあたりの価格を最適に保つために、グループ内の各国が市場の必要量よりも少ない原油しか供給しないようにしている。昨年末まではまだ供給危機が収束していなかったが、ウクライナ侵攻とそれに伴うロシア制裁により、少なくとも日量300万バレル以上の供給不足が発生し、消費国にとっては深刻な状況になった。

さらに、米国ではコロナウイルスの大流行で複数の製油所が閉鎖・縮小されたため、ガソリン、特にディーゼルの供給が極度に逼迫している。

製油所として存続している企業は、既存の生産能力を拡大したり、休止中の工場を再開して消費者を多少なりとも救済するための資金を投入することなく、自分たちができること、より正確に言えば、生産者として自分たちが望む量だけを提供している状態である。製油所にとってそのようなことをする動機のひとつは、原油価格の高騰からより多くの利益を得たいという思惑だ。もうひとつは、新しい製油所が利益を上げるには長い時間がかかるということである。

ブルームバーグは、コロナ禍の発生により2020年の原油需要が当初壊滅して以来、米国の石油精製能力のうち日量100万バレル以上(全体の約5%)が停止していると推定している。エネルギー・コンサルタント会社のTurner, Mason & Coによると、米国以外では、さらに日量213万バレルの能力が縮小しているとのことである。生産に関して拡張計画がないため、原油の需給はますます悪化するということだ。

今週はまた、金曜日に5月の米雇用統計の発表が予定されており、エコノミストは今月は32万人の雇用が増加し、4月の42万8000人から減速すると予想している。もしこれより弱い内容となれば、労働市場と原油市場の結びつきを考えると、原油価格にマイナスの影響を与える可能性がある。

金のロング勢も雇用統計、特に賃金の伸びと失業率が3.5%まで下がるかどうかを心配そうにみていることだろう。

その他今週は米国では民間企業雇用、労働市場の需要指標として注目されるJOLTS求人数、および新規失業保険申請件数の週間値も発表を控えている。

物価上昇の影響やサプライチェーンの問題が懸念される中、製造業サービス業のISMデータも注目される。また、消費者信頼感指数に関するレポートも発表される予定だ。

また、金の投資家は経済見通しについて複数の連邦準備制度理事会の政策立案者から話を聞く機会を得ることになる。

ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁とセントルイス連銀のブラード総裁はタカ派として知られており、水曜日に講演し、その翌日にはクリーブランド連銀のメスター総裁が講演する予定である。

免責事項:Barani Krishnanは、あらゆる市場の分析に多様性を持たせるために、自身以外のさまざまな見解を用いています。中立性を保つため、時に逆張りの見解や市場の変数を提示することがあります。同氏は執筆しているコモディティおよび証券のポジションを保有していません。

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