1週間前に、フリーポートLNGの工場火災を受けて、約100万トンの液化天然ガスの輸出が停止され、5年平均を大幅に下回る米国の天然ガス貯蔵量が緩和されるといわれていた。
現在、フリーポートLNGの危機は当初考えられていたよりも大きいかったことが判明しており、その推定停止期間はこれまでの3週間から3ヶ月に伸び、それに伴い天然ガスの貯蔵量も大きく緩和された。
6月9日にテキサス州ガルフコーストにある同社の液化天然ガス・プラントで爆発が起こるまで、14年ぶりの高値で取引していた強気筋にとって、これは大きな問題である。
同社は、米国の液化天然ガスの処理理量の約20%を占めており、1日当たり最大21億立方フィート(2.1bcf)の天然ガスを液化していた。
夏の冷房用の米国天然ガス需要がどうなるか、フリーポートが液化しない分とどの程度相殺されるかを推測することは、強気筋にとって難題となる可能性がある。
少なくとも、火曜日にヘンリーハブで16%以上の暴落が発生し、天然ガス価格にとって最大の日中損失の1つとなったことから、天然ガスの下落は一旦停止し、今後3カ月間は緩やかな低下になるとみられる。
ヒューストンに拠点を置くガス市場のコンサルタント会社Gelber & Associatesは、Investing.comが入手した水曜日の分析メールにて「90日間の停電スケジュールに従って、合計で少なくとも180bcfの追加的な天然ガスが利用できるだろう」と顧客に警告している。
「180bcfは、現在の貯蔵不足分の約55%に相当する。フリーポートの稼働停止は、300bcfを超える貯蔵不足に伴う、市場の需給逼迫を大幅に緩和し、長期貯蔵量の見積もりをより正常な見通しへと導くと期待される」と述べている。
しかし、フリーポートの稼働停止は、夏の天然ガスにとってまさにゲームチェンジャーとなるのだろうか。
特に、夏の冷房需要が不透明であることから、180bcfの供給停止が市場に与える影響を予測することには慎重であるべきだ。
風力発電の季節要因による発電量の減少が始まり、6月の気温が積極的に上昇することで、発電方法においては天然ガスの使用量が増加する可能性がある。
6月の猛暑は、これまでの冷房需要を上回る勢いであり、フリーポートの稼働停止による週14bcfの需要減の影響は短期的には限定的であろう。
唯一確実なのは 貯蔵量の注入が進むにつれて、同社の稼働停止による影響は長期的な貯蔵量予測をより正確にするであろうということだ。
つまり、3月から5月にかけての天然ガス価格は大きく上昇した後、今後は横ばいまたは値下がりする可能性がある。天然ガス本来の変動性の大きさが戻ってくるとみられる。
その一例が、火曜日に急落した天然ガス価格が、過去2取引日で累積5%以上反発したことである。木曜日のニューヨークでの取引時間開始前である現在、天然ガス前月限は、6月8日につけた14年ぶりの高値である9.66ドルに対し、7.55ドル前後で推移している。
skcharting.comのチーフ・テクニカル・ストラテジスト、Sunil Kumar Dixit氏は「現在、天然ガスは火曜日につけたサポートから反発する兆しをみせているが、ヘンリーハブの50日指数移動平均の7ドル71セントはまだ下回っている」と述べた。
「天然ガスが7.00ドルでサポートされ続けるなら、日足ミドル・ボリンジャー・バンドの8.54ドルを目指すために必要な7.71ドルのレベルを上回ろうとするだろう。一方、7.20ドルや7.00ドルを割ると、100日単純移動平均の6.34ドルや200日単純移動平均の5.55ドルまでさらなる下落する可能性もある。」
Tudor, Pickering, Holt & Coのアナリストも、最も抵抗が少ない見通しなのは値下がりのほうだろうと述べている。naturalgasintel.comに掲載されたコメントでは、夏の天然ガス価格が10ドルの大台を超える確率は「著しく低くなった」という。
しかし、「夏場のリスク・リターンは明らかに変化している」一方で、最近の暑い天気が続けば、価格は「夏場の傾向として最近の値下がり一部を取り戻す」可能性があるとみている。
調整後の天気予報による追加需要、夏の猛暑、貯蔵不足から5年平均並への改善など、今後3カ月間の価格変動に与える材料は多い。
貯蔵庫に関する最新の状況として、Investing.comが追跡している予測担当者は、6月10日に終わる週の平均貯蔵庫増加量を96bcfと予想しており、6月3日までの前週の97bcfからほとんど変化していない。米国エネルギー情報局は、本日米国頭部時間午前10時30分に、週次の天然ガス貯蔵量を発表する予定だ。
一部の市場関係者は、先週からすでに液化作業を停止しているフリーポートの想定供給量を考慮し、貯蔵量が増えるだろうとみている。Gelberのアナリストもその一人で、分析ノートには下記のように書いている。
「今週の注入量予想は89bcfで、この予想値は5年間の平均注入量を10bcf上回り、PG&Eが51bcfのワーキングガスをベースガスに分類し直したことで機能しなくなった昨年の注入量よりも70bcf近く高い。」
免責事項:Barani Krishnanは、あらゆる市場の分析に多様性を持たせるために、自身以外の様々な見解を用いている。中立性を保つため、時に逆張りの見解や市場の変数を提示することがある。また、同氏は執筆しているコモディティおよび証券のポジションは保有していない。