イスラエルの製薬会社であるテバ (NYSE:TEVA)の株価は急落しているものの、同社にとって最悪の事態が訪れるのはまだまだ先のことだろう。また7日の第2四半期(4-6月期)決算報告により同社が復活を遂げるのは厳しいと言わざるを得ない。
5月の第1四半期(1-3月期)決算報告以降、投資家の関心はコーレ・シュルツCEOによる企業再建から米国による反トラスト法訴訟に移っている。米国は同社が価格固定の陰謀の中心的な存在であると主張している。
5月初旬に40以上の州が提訴した今回の訴訟では、テバが競合他社と共謀し、互いに示し合わせて値上げを行ったという嫌疑がかけられている。州によれば、2013年から2015年の19ヶ月間にテバは約112種のジェネリック医薬品を大幅に値上げし、競合他社と少なくとも86種の医薬品で価格カルテルを結んでいたという。
モルガン・スタンレーによれば、テバは米国のオピオイド問題や州政府による反ドラッグ運動への関与から、高まる「訴訟リスク」に直面しているという。
シュルツ氏による企業再建が結果を見せはじめたとしても、同社に対する規制措置や罰金のリスクにより、同社株が低迷を続けるという可能性は十分存在する。過去3か月で同社の時価総額は半分にまで落ち込んでいる。また同社株は5日、0.3%安で7.83ドルとなった。
凋落
テバは2015年当時、他医薬品企業との熾烈な競争の中で利益を失っていった。そんな中同社はジェネリック医薬品へ莫大な投資を行ったものの株価は下落し、それ以来始まった凋落から復活を遂げるべく現在奮闘している。
同社にとって最も大きな痛手となったのは多発性硬化症治療剤のコパキソンの独占権を失ったことである。一時テバの利益の半分を同製品が占めていたこともあり、同製品の独占権を失ったことでテバは大打撃を被り、同社の持つ多大な負債を返済しきれるのかについて疑問を持たれはじめた。
同社の第2四半期(4-6月期)の利益と売上高に関するコンセンサス予想からは、同社の売上高の減少が未だに止まっていないことが伺える。
訴訟により同社の見通しは不透明なものとなっているものの、シュルツ氏がリストラを行う兆候は見てとれる。シュルツ氏が就任して以降、同社は25億ドルものコスト削減を実現しており、年末に同氏が設定した目標に徐々に近づいてきている。また、ここ数年に渡りジェネリック医薬品の利益は減少し続けていたものの、現在市場は安定しはじめている。
また新薬の販売も同社にとって好材料となるだろう。次世代片頭痛薬の「Ajovy」は、現時点ではそれほど大きなヒットとはなっていないが、同薬品が今後2、3年に渡り新たな収入源となる可能性もある。
またハンチントン病治療薬である「Austedo」も、同社の新たな収入源となる可能性がある。同薬品の売り上げは今後3年で最大13億ドルにまで達するとも予想されている。
総括
テバの株式を買うのは依然としてリスクが高いと言えるだろう。同社の経営環境は厳しい状況にあり、その見通しも反トラスト法訴訟により暗いものとなっている。ただ同社株が現在大きな打撃を受けていることを踏まえると、売上の改善やコスト削減の成功のわずかな兆しでもあれば、同社株は反発を見せるかもしれない。