この週の主なイベントは、火曜日と水曜日のFOMC会議となるだろう。市場は、FRBが量的緩和の「削減」を「いつ」そして「どのように」開始するかということに関してより明らかになるのではないかと期待することになるだろう。FRBは、債券買い入れ額をわずかに削減する可能性があるというメッセージを送ろうとしてきたが、市場が、オンかオフかというオールオアナッシングの視点で捉えているようなので、焦燥感を募らせている。米国の債券利回りの上昇や他国との予想利回り格差が高まっているのにも拘わらず、多くの主要通貨に対してUSDがサポートを得られない理由はここにある。ただし、その結果生じる「リスクオフ」環境は、対新興市場通貨ではUSDのサポート材料となっている。米国株が引き続き十分に支えられている(高値から下落したが、最近の安値にはかなり遠い)ことが、米国経済への信頼感が持続していることを示していることから、FRBは、量的緩和の「削減」の可能性を確認すると同時に、そのペースと米国経済への影響に関してより明確にする可能性がある。こうした組み合わせが、市場の安心感につながり、USDのラリーの素地を作る可能性がある。
イングランド銀行のポール・タッカー副総裁が、金曜日に辞職することを発表したことを受け、今週はGBPに注目が集まるだろう。タッカー氏は、量的緩和の拡大に反対票を投じている。英国のジョージ・オズボーン財務相が、タッカー氏の後継者を任命する。オズボーン氏は、カナダ準備銀行の前総裁であるマーク・カーニー氏をイングランド銀行総裁に選んだ人物であるため、同様にハト派的な見解の持ち主をタッカー氏の代わりに任命する可能性は高い。こうした動きは、月例金融政策委員会における投票数を、最近の3対6から、4対5に変えるに過ぎず、それでも過半数には満たないだろうが、こうした見通しがGBP/USDに対する足かせとなる可能性はある。
2日間のG8会議が、本日、北アイルランドで始まる。サミットは、貿易の後押し、脱税対策、税の透明化(特に採掘会社とそうした企業による新興国への支払いに関して)が、焦点となる可能性が高い。昨年のサミットは、為替に関して何も言及しない、どちらかと言えば穏やかな声明を採択する結果となった。今年の声明も、為替に関して何も見るべきもののない同様の内容となるだろう。ギリシャのサマーズ首相は、2つの連立与党と会談し、国営放送会社ERTの閉鎖の決断に関して議論した。連立与党との対立は、波乱に満ちた早期選挙を招く可能性があるが、世論は、一党で政府を支えることができる党はないということを示唆していることから、ある程度の妥協に至る可能性は高い。ECBのメンバーであるイエルク・アスムセン氏とイブ・メルシュ氏がスピーチを行うだろう。メルシュ氏は先週、「経済環境によっては」ECBがマイナスの預金金利を導入することは「あり得る」と述べた。こうしたFRBの政策との違いが、EUR/USDの足かせとなるだろう。米国では、6月のニューヨーク州製造業調査が、-1.43からゼロへの上昇を示すと予想され、NAHB住宅市場指数は44から45へと小幅な上昇を示すと予想され、これが先週の米国の期待外れの統計による影響を緩和させる上で役立つ可能性がある。
マーケット
EUR/USD
• 米国の経常赤字が予想よりも小幅にとどまったことを受け、EUR/USDは、1.3300でサポートを見出したが、市場が、4月の外国人による米国債の純売却額が記録を更新したというニュースに接したため、USDの上昇は短命に終わった。米国の5月の鉱工業生産高および設備稼働率が予想よりも悪かったことと、米国の消費者信頼感が2カ月ぶりに低下したことをから、EUR/USDは、2月から3月の下げの61.8%リトレースメント水準にあるレジスタンスにまで押し上げられた。
• 金曜日のハンギングマン・キャンドルスティックが、ストキャスティック・オシレーター上に弱気なクロスオーバーを形成し、いつもの94のストキャスティック水準前後でレジスタンスを見出した。リスクオン・センチメントの回復を受けた本日の下落の動きは、RSI上にも弱気なクロスオーバーを形成する可能性があり、3週間の右肩上がりのトレンドラインの突破はリバーサルの可能性を示す。フィボナッチ・サポートは、1.3320と1.3230に現れ、サポートはその中間の1.3300に現れる。フィボナッチ・レジスタンスは、1.3340に見られ、次のレジスタンスは1.3370と1.3395に見られる。
USD/JPY
• USD/JPYは、前代未聞の量的緩和を2年間に制限することに一人の政策立案者が賛成したことを示した日銀の議事録の発表を受けた下落から回復した。レジスタンスが95.30に現れた後、米国の軟調なデータを受けて、94.15のサポートまで下落した。日本の株価指数が引き続き回復しているため、同ペアは、本日反発するとみられ、レジスタンスは94.90、95.30、95.90に現れるだろう。注目すべきフィボナッチ・サポートは、94.40に見られ、より弱いサポートは、94.15と十分に試された安値である93.75に見られる。
GBP/USD
• GBP/USDは、金曜日、重大な下げ圧力に直面した後、タッカー副総裁の公的な辞任を受けて、200日移動平均、6月~12月のラリーの61.8%フィボナッチ水準、2つの重なる、十分に試された右肩上がりのトレンドラインが集中する1.5690にある非常に重大なサポートを下方突破した。その後、米国の軟調なデータが、これらの水準を上回る反発を招き、レジスタンスが1.5730に現れた。引き続きレジスタンスは1.5730に存在し、重要な重複するフィボナッチ水準は1.5780に存在する。サポートは再び1.5690に現れ、弱いトレンドライン・サポートは、1.5665に、次のサポートは1.5610に現れるだろう。
金
• 金に関しては、ディフェレント・デイトレーディング・アクション(攻撃)という同様の状況が続いた。軟調な鉱工業データを受けて、いくらかの上昇が確認されたが、興味深いことに、この上昇は、小幅ながらUSD指数の上昇にも拘わらず生じた。レジスタンスが、1400ドルをわずかに下回る水準に現れる可能性は高く、次のレジスタンスは1412ドルと1423ドルに現れるだろう。サポートは、1387ドル、1378ドルに現れ、トレンドライン・サポートは1372ドルに現れるだろう。
原油
• WTIは、米国の鉱工業データが軟調だったにも拘わらず、主な上昇銘柄となり、USDの下落と共に上昇し、重要なレジスタンスを突破して、98.15ドルまでスパイクし、その後、消費者信頼感の悪化を受けて戻し、97.75ドルで横ばいとなった。原油が数ヵ月間にわたって収束パターンにあるため、最近のブレイクアウト後のレジスタンス水準を見極めるためには、2012年の価格動向にまでさかのぼらなければならない。2012年3月~6月の急落の61.8%のリトレースメント水準である97.75ドルは、重要な水準で、次のレジスタンスは98.10ドルと98.50ドルに存在する。トレンドライン・サポートは、96.95ドルと96.25ドルに現れる。
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