嵐が吹き荒れているなかでのいくつかの市場における静寂-とりわけ為替市場-は、顕著である。昨日、欧州の株式市場は、欧州全域で下げて終わり、米国の株式市場は1%低下するなか、新発の1ヵ月米短期国債は、0.35%の特に高い利回りをつけた。これは2008年以来の最高水準であり、先月の入札における0%に比べると驚異的な上昇である。一方、昨日の新発3年物債券は、市場の水準を下回る利回りで入札が行われた。10年物米国債は、ほぼ3週間にわたって毎日、2.60-2.65%の間で閉じており、USDは引き続き驚くほど安定している。昨日、実際のところ、USDは、全てのG10通貨に対して安定的に推移するか、上昇するかであった。市場は、米国債の短期的な支払い能力に懸念を抱いているようだが、混乱が長引く可能性はそれほど重視していないようである。しかし、昨日発表された、景気に対する楽観度を示す10月のIBD/TIPP指数における急激な下落(9月の46.0から38.4への下落)は、ワシントンにおける問題が米国の消費者心理に影響を与えており、この問題がたとえ近い将来解決されたとしても、景気に悪影響を及ぼす可能性があることを示唆している。米国における問題は、米国自身よりも、米国の主要な貿易相手国の通貨においてより大きな影響があるようだ-CADは、G10各国の中で最大の敗者となり、MXNも下落した。意外なことに「安全資産取引」は、問題の発端である米国に向かうのだろうか?
この問題が土壇場で解決される可能性に関して、投資家は基本的に引き続き楽観的なようで、このことから、10月17日のデッドライン前後で期限を迎える最も短期の債券だけが影響を受けている理由が分かるというものだが、その一方で、ワシントンにおけるごまかしは、企業と消費者の政府に対する信頼感に対する影響を長引かせる可能性があることには気づいているようで、このことから、株式市場に影響が集中している理由が分かるというものである。もしそうならば、米国の成長はしばらくの間打撃を被る可能性があるため、新興市場における問題は、解決されるまでにより長い時間を要する可能性がある。実際、昨日、IMFは、6回連続で世界の成長見通しを引き下げた。また同時に、米国の成長率の鈍化は、米国の金利が予想よりも長期にわたって、引き続き低下する可能性が高いことを意味し、それによって、リスクのある資産とリスク敏感通貨にとっては、良い状況が長く続くことになるだろう。オバマ大統領が、バーナンキ議長に代わり、ジャネット・イエレン氏を、本日遅くに新たなFRB議長として任命するとみられる、とのニュースが昨晩報じられたことによって、この可能性はさらに勢いを得た。量的緩和政策を支持する主要人物のひとりであり、ハト派として知られているイエレン氏は、金融引締め政策への動きに慎重になり過ぎるくらい慎重になることを好む可能性が高い。これは、いったんこの大混乱が過ぎ去れば、ベータ値の高いG10通貨にとって良い前兆である。しかし、短期的には、ワシントンで政策が失敗するリスクは依然として高く、安全資産への逃避が支配的になると予想される。
本日は、英国の8月の鉱工業生産指数で幕を開け、同指数は、7月の前月比変わらずという結果から、前月比+0.4%に加速されると予想される。投資家が、良い経済ニュースが続くのかどうかということに対して疑念を抱いているため、最近GBPの変動は激しくなっている。すなわち、この流れに沿った数値は、回復が続き、GBPはそれによってさらに底堅くなるという安心感を市場に与えるだろう。ドイツの8月の鉱工業生産指数は、7月の前月比1.7%の下落から一転して、前月比1.0%の上昇を示すと予想される。しかし、昨日の8月の製造業受注における期待外れの結果が、市場にそれほど影響を与えなかったことから、今回もそれほど影響はないとみられる。同日遅くに、FRBが9月17日~18日のFOMC会議の議事録を発表する。その会議でなぜ量的緩和の縮小を決定しなかったのかという点が注目されるだろうが、その決定は、既に実際の事象に取って代わられている。オーバーナイトでは、オーストラリアが9月の雇用統計を発表する。失業率は5.8%で変わらずと予想されるが、雇用増減は7月の-1万800人から1万5千人へと好転することが予想される。それによって、AUD/USDは支えられる可能性がある。本日は、ECBから2名、FRBから1名の発言が予定されている。ECBのクーレ理事がジュネーブで発言し、ECBのドラギ総裁は同日遅くに米国で発言する。シカゴ連銀総裁のエバンズ氏は、「新たな金融政策と全米的波及効果」に関してワシントンで発言する。
マーケット
EUR/USD
• EUR/USDは昨日横ばいとなり、1.3564(S1)をわずかに上回る水準に留まった。欧州時間の早朝、同レートはこの水準を試している。この水準を明らかに下方突破すれば、オシレーターと価格動向との間のマイナスの差によって示されている通り、弱気な流れが裏付けられるだろう。しかし、20期間移動平均が依然として200期間移動平均を上回っていることから、私は、下落の波があったとしても、9月6日~10月3日の上昇局面の調整であると考えたい。
• サポート:1.3564 (S1), 1.3461 (S2), 1.3400 (S3)
• レジスタンス:1.3644 (R1), 1.3706 (R2), 1.3800 (R3).
EUR/JPY
• イエレン氏の任命に関するニュースが、リスクセンチメントをいくらか改善したため、EUR/JPYは上昇した。同ペアは、短期的な下落トレンドチャネルの上限に達した。このチャネルを上方突破すれば、懸念材料となる可能性があり、強気筋は、重要なバリアーである133.20(R1)に向けた攻防に拍車を掛ける可能性がある。強気筋が突破を達成することができなければ、価格は下落し、130.96(S2)水準でフェイラー・スウィングを完成させると予想される。今のところ、レートが依然としてチャネル内にあり、20期間移動平均が200期間移動平均を下回るクロスを達成したことから、短期的なトレンドは依然として下落トレンドである。
• サポート:131.62 (S1), 130.96 (S2), 129.89 (S3)
• レジスタンス:133.20 (R1), 134.00 (R2), 134.67 (R3)
GBP/USD
• GBP/USDは、木曜日に、イングランド銀行による10月の金融政策決定会合を控え、上昇した。月曜日、同ペアは、心理的バリアーである1.6000(S1)から回復し、本原稿執筆現在、その重要なサポート水準と1.6160(R1)のレジスタンス水準の間に留まっている。後者を突破すれば、最近の戻しの終焉を示唆するとみられ、流れは再び上昇方向に傾くだろう。MACDオシレーターは、弱気な領域にあるが、トリガーラインを上回っており、弱気筋が勢いを失いつつあることを示唆している。日足チャートでは、同ペアの全体的なトレンドは上昇トレンドにあり、7月9日以来の流れは依然として有効である。
• サポート:1.6000 (S1)、 1.5890 (S2)、 1.5716 (S3)
• レジスタンス:1.6160 (R1)、1.6260 (R2)、1.6376 (R3)
金
• 投資家が、米国の議員間におけるこう着状態を評価したため、金は、火曜日、若干低下した。欧州の午前中の早い時間には、金は、1316(S1)のサポート水準を試しており、これを明らかに下方突破すれば、青色の下落トレンドラインを下回る水準に戻る可能性がある。とはいうものの、私の見解では、価格が依然として従来の下落への道のりを脱しており、両オシレーターと価格動向との間にプラスの差が見られることから、弱気筋が勢いを失いつつあると考えられる。
• サポート:1316 (S1), 1291 (S2), 1273 (S3)
• レジスタンス:1343 (R1), 1368 (R2), 1391 (R3)
原油
• 市場が、米国の財政危機に関し、期待感と失望感の間で行き来したため、WTIは、上昇と下落の間を行き来した。価格は、青色の右肩下がりのチャネルの上限を付けた後、下落した。本原稿執筆現在、価格は、104.19(R1)水準を下回っており、充分に試された102.23(S1)のフロアーを再び試そうとしている。両オシレーターは、中立的水準の近くにあるため、それらに頼ることは得策ではないようだ。価格は引き続き、右肩下がりのチャネル内にあり、移動平均の弱気なクロスを伴っており、さらなる下落の動きへの可能性が高まっている。
• サポート:102.23 (S1), 101.02 (S2), 99.18 (S3)
• レジスタンス:104.19 (R1), 106.06 (R2), 108.13 (R3)
通貨レートベンチマーク - 今日の勝者と敗者
マーケット概要