先週のNY金は、1100ドルを突破してくる動きとなりました。
その要因として、中国の通貨「元」の切り下げがあげられます。
元の切り下げを発端に、NY金市場で投機筋のショートカバー(売り方の買戻し)が出て、価格が上昇したと思われます。
この元の切り下げですが、金市場に与える影響として、強弱二通りの見方があります。
強気の見方は、元の切り下げを契機に他国でも通貨安に誘導する動きが生じ、それがインフレを招くため、インフレヘッジとしての金が注目される。また、通貨不信が強まると、無国籍通貨と呼ばれる金が注目されるといった見方です。
一方で、弱気は、元安により中国国内では金価格が上昇し、それが中国国内の需要を減らという見方です。
私は、どちらも正しいと思います。ただし、重要なのは市場がどうみているかであり、今のところ結果的に強材料として反応しています。
先週ワールドゴールドカウンシル(WGC)が発表した金需給統計では、今年の中国の需要は昨年と同様で変わらない見通しになっていましたので、弱材料には反応しずらいでしょう。
今後の見通しですが、まずは金市場のフォワードレートをご覧ください。
しばらく0付近で動かなったのですが、先週半ばからマイナスに変化してきました。
こちらの数字は、1か月物ですが、3か月物までマイナスになってきてます。現在の現物市場では品薄状態にあると判断できます。
このため、NY金市場で投機筋のショートカバーが出やすい地合になっていましたが、実際に元の切り下げがきっかけでショートカバーが出て価格は上昇しました。
投機筋のポジション(8/11現在)を確認しておきましょう。
売り(青い棒グラフ)が減って、買い(オレンジ棒グラフ)が増加、結果として買い越し(緑の折れ線)が増加して上向きになってきました。
まだ、投機筋の売りが溜まった状態で、かつ現物市場は品不足であるため、NY金市場は上げやすい地合です。
売買戦略としては、買い方針が良いでしょう。
それでは、どこまで上昇するのでしょうか。もう一度このチャートをご覧ください。
上値はまず、1150ドルが抵抗になります。
こちらは昨年11月、今年3月の安値から反発した価格帯で、こちらがまず節目になります。
この1150ドルを突破するためには、さらなる材料が必要だと思っています。
焦点は、やはり9月5日の米国雇用統計発表です。
雇用情勢を確認した後、FOMCで米国が利上げを見送った場合、NY金価格は上昇するでしょう。
現在は、利上げがあるかどうか、五分五分の見通しです。
仮に利上げに踏み切った場合は、1150ドルが上値になると思われます。
当記事は、「セントラルマーケットコラム~経済金融・コモディティ~」からの転載です。またコラムでは、経済金融、貴金属のスペシャリストによるコラムも掲載しております。こちらもぜひご覧ください。