2015/06/08
先週末の米雇用統計は、事前予想よりかなりいい結果で、為替はドル高になり、NY金は下落しました。
直近3ヶ月の非農業部門雇用者数は平均で20万人を越えて、米国経済の堅調さが伺える内容でした。
市場関係の一番の関心である米国の利上げですが、私は年内の利上げがほぼ確定したと見ています。
ただし、そんな中でもNY金は、一時1160ドル台をみるも反発して下げ幅は限定的でした。
なぜ下げ幅が限定的だったのでしょうか。
要因は二つあります。
ひとつは、投機筋のポジションに偏りがなかったためです。
CFTCの建玉明細ですが、偏りが見られなかった先週から変わっていません。
上下に動く動意に欠けたことで、値動きは限定的となりました。
もうひとつは、金市場がここ2年で既に利上げを織り込んできたことがあります。
こちらは、植草一秀先生のコラム「経済金融インサイト」2015/5/25号『金市場の動意』にもありますが、金市場は金利の変動に対して先行性があります。
昨年11/7の安値1130.4ドル、今年3/17の安値1141.6ドルなど、利上げの思惑が台頭するたびに金市場は下落してきました。
今回は、利上げの思惑が台頭し、ほぼ確定的ですが、1150ドルを割り込むまで下落はしていません。
実際に利上げに踏み切った場合、金の弱い材料が出尽くしとなり、ドル建て金相場は逆に上昇するのではないでしょうか。
次に、東京金ですが、ドル建てが下落しても為替の円安が勝り、価格は上昇しました。
ドル円ですが、2012年9月の77円台から、直近は125円台まで円安が進行しています。
値ごろ感や、RSI70越えなど警戒感を持たれるかもしれませんが、これまではRSI70を越えてからが本格的な上昇に至っています。
そして、保合から放れる場合は、概ね20円動いています。
今回も再び保合から放れはじめたところで、目標は140円台とみています。
ドル円の投機筋のポジションは、円安ポジションが始まったばかりで、このトレンドはしばらく続くでしょう。
仮に140円までいった場合、現在より14円の円安になり、東京金は700円近く上昇する要因になります。
向こう半年~1年で、金は再び5000円があると見ています。
目先は、買いでの戦略がいいでしょう。
さて、最後に白金です。
今年3/17につけた安値1086.7ドルに接近してきました。
一方で、CFTCのグラフでは、買いと売りの差引が大きく減っています。
買いの増加よりも売りの増加が多かったためですが、売りポジションは今年3月の売りよりも増加してきました。
これは将来的な買いにつながるエネルギーが溜まっている状態といえます。
それから、南アの鉱山会社と労働組合との労使交渉が始まりました。
鉱山会社は採算割れの状態で、主要鉱山会社の株価は低迷しています。
この中で、労働組合との交渉は困難を極めるでしょう。ストライキになる可能性もあります。
南アではランド安が進んでいますが、それでもドル建ての採算ラインは1200ドルです。
白金は、近く1200ドルまで上昇する可能性を秘めています。
現在から100ドル上昇すると、東京白金は300円高になる計算です。
向こう3ヶ月は、白金の方が妙味があるかもしれません。
当記事は、「セントラルマーケットコラム~経済金融・コモディティ~」からの転載です。またコラムでは、経済金融、貴金属のスペシャリストによるコラムも掲載しております。こちらもぜひご覧ください。