まずは、先週の動きを振り返ってみましょう。
先週は、円安を見込んで上昇するとしておりましたが、黒田日銀総裁が国会で円安を警戒した発言をしたことにより、円高になりました。
東京市場では、2円の円高となり、東京金市場にとって80~90円の下げ圧力となりましたが、実際にはドル建ての金価格が上昇したことでそこまで下げず、横ばいからやや下げた程度に収まっています。
一方で、貴金属市場の投機筋のポジションをみてみると、売りへの偏りが顕著になってきました。
NY金チャートとCFTCの建玉明細をご覧ください。
CFTCでは、投機筋の買いポジションは少し減る中で、売りは急増しています。
売りの水準は400トンを越えて、3月の安値、5月の安値時の水準まで増加しており、売りポジションに偏りが見られます。
地合は、ショートカバーが出やすい環境になっています。
今週は、FOMC、ECBの重要なイベントが控えています。
このイベントがきっかけになり、ショートカバーで相場は上昇するかもしれません。
仮に、一段安となった場合は、そこは買いどころだと思っています。
次にNY銀をご覧ください。
こちらは、金に比べて6月の下落が大きくなっています。
CFTCでは、投機筋の買いが増えていますが、それ以上に売りが2倍以上も急激に増加しています。
その結果、買いと売りの差引である買い越し(緑の折れ線)は大きく減少し、今年最も低い水準まで近づいてきています。
この増加分は将来のショートカバーにつながり、銀主導の相場上昇で、金相場が上昇する可能性があります。
プラチナもやはり売りが増加しています。
この売りの急増で、NY白金相場は今年の安値に近づいてきています。
パラジウムは、銀同様に、6月からの下げが大きく、売りポジションも大きく増加しています。
貴金属相場は、4銘柄ともに売りが今年の最大数量近くまで増加するなど偏りが顕著になっており、ショートカバー(売り方の買い戻し決済)を誘発しやすい状況です。
また、今回の円高は、黒田日銀総裁の発言で起こりましたが、日米の金融政策を考えるとドル高円安は続くと思っています。
この円安の流れは、直近の米国雇用統計の好結果を受けて利上げ観測が高まったことが要因です。
通常、良好な経済環境での健全な利上げでは、その国の通貨は買われます。
つまり、今回は円ではなく、ドル高が主因のドル高・円安であり、この傾向は続くと考えています。
結論として、貴金属市場は、短期的にはショートカバーによる上昇が期待できる地合で、一段安となったところは買い場になるでしょう。
中期的にみれば、円安がサポートになるため、買い方針で良いと見ています。
当記事は、「セントラルマーケットコラム~経済金融・コモディティ~」からの転載です。またコラムでは、経済金融、貴金属のスペシャリストによるコラムも掲載しております。こちらもぜひご覧ください。