先週のおさらいですが、以下の点から相場は切り返しの週になる展望していました。
まず、投機筋の売り水準が今年最大に近づいたこと、
次に、フォワードレートのマイナスが拡大しており、投機筋は新規売りが仕掛けにくいこと
それから、相場に逆行現象がみられること。
米国雇用統計の結果がきっかけになり、本日の東京金・白金は反発、100~150円高になっています。
先週の重要イベント米国雇用統計は、非農業部門の雇用者数が20万人を上回り、失業率は5.5%、賃金の伸びはいまいちでしたが、米国経済の足元は良好という結果になりました。
これでFOMCに向けて金利を引き上げる下地が整いました。
本来なら、金利を生まない金は売られてしかるべきですが、これまでに十分に相場に織り込まれており、逆に大きく上昇する結果になっています。
金相場の展望
まずは金相場からみていきましょう。
一目均衡表の転換線に抑えられて11月半ばから下落していたNY金相場は、大陽線で転換線を上抜き、下降トレンドが転換しました。
投機筋のポジションをみると良く分かりますが、これまで相場の下落を見込んで売りが膨らんでいました。
12/1付の最新のデータですが、売りがさらに増加しています。
買いの水準も600トン台でこれ以上の買い手の売り手仕舞いは考えにくい状況でした。
売りポジションは、今年7-8月の最大水準に近づいていたことで、新規売りの増加の余力が少ない状況になっていました。
かつ、フォワードレートのマイナスが拡大していたため、新規の売りが積み増しにくい状況でした。
その中で雇用統計がきっかけになって、相場は売り手の買い手仕舞い(ショートカバー)発生で、一気に急伸したのです。
今年の直近数か月の傾向をみると、節目となるイベントの直前で安値・高値を付けて、相場が大きく転換しているのが分かります。
10月2日は雇用統計直前に安値を、10/28にはFOMC前に高値を、そして12/4雇用統計の前日に安値をつけて、トレンドが転換しています。
転換前には、相場の変動が激しく、東京貴金属では150~200円は変動します。
今回は、私が反転すると思ったところから100円下がりました。
反転のタイミングをはかることは難しく、反転前には変動が大きくなるため、資金配分が重要になってきます。
この辺は対面取引の長所を生かして、ぜひ担当の営業を活用して状況を確認しながら、資金配分に十分考慮してお取引いただきたいと思います。
さて、東京金ですが、反発は1日で終わったとは思いません。
ショートカバーは続いて、来週のFOMCまで堅調な相場になると見ています。
白金相場の展望
相場とRSIが逆行現象をみせていたNY白金相場は、金につれて上昇しました。
こちらも一目均衡表の転換線を上抜き、トレンドが転換しています。
白金は、来年に南ア・鉱山会社の労使交渉を控えており、独自の材料にも注目です。
投機筋のポジションは、売りが膨らんでおり、ショートカバーによる上昇が起きていると思われます。
最後に東京金と白金のサヤ(東京金-白金の差)について、お話します
相場の上下とサヤの関係に注目してください。
昨年10月時点は金より白金のほうが高かったのですが、今年に入り金が白金を上回りました。
その後の下降トレンドの中で、金よりも白金の下落の方が大きく、サヤが拡大し続けてきました。
しかし、その下降トレンドが転換して上昇し始める中で、サヤは縮小に向かっています。
貴金属相場の下降トレンドでは、白金の下落の勢いが金より大きかった分、貴金属相場が転換して上昇すると白金の方が金より上昇する幅が大きくなる可能性があります。
まず目先は、サヤが600~700円まで縮小するでしょう。
重要なポイントは、この赤線で示したトレンドラインを割り込むのかどうかです。
割り込む場合には、縮小傾向が加速し、金よりも白金の方が上昇する幅が大きくなるでしょう。
つまり、この反転上昇のトレンドでは、金よりも白金の方が上昇勢いが強く、投資妙味があると思います。
先にも述べましたが、来年は鉱山会社の労使交渉が始まり、金につれ高となるのに加えて、白金独自の材料で上昇する場面が出てくると思われます。
中長期的に見て、来年の白金に注目です。
当記事は、「セントラルマーケットコラム~経済金融・コモディティ~」からの転載です。またコラムでは、経済金融、貴金属のスペシャリストによるコラムも掲載しております。こちらもぜひご覧ください。